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不本意な事故

ふと、異世界転生物が思いついたので書いてみます。まだ先の構想はまとまっておりませんが、頑張って連載していくつもりですので、応援よろしくお願いいたします。

『ガラガラガラ……ガッシャンッ』爆音とともに敵城壁が崩れ落ちると同時に、俺は全兵士に指示を出し、一気呵成に突入を開始する。

 俺の部隊の兵士は優秀だ、敵兵の雨のように降り注ぐ弓攻撃を頭上に掲げた盾で防ぎながら突入していく。


 突撃兵の盾は、前衛側は全身を覆うように縦2mで幅が1mの巨大な鉄板仕様を持たせている。

 当然その重さゆえに両手持ちだが、正面からの攻撃はほぼ防げるし、目の高さ部分にスリット状の覗き窓があるため、前進するにも支障がない。


 2列目以降は片手持ちの80センチ角の平板の盾を持たせており、こちらは頭上に掲げることにより、弓なり状に上方から降り注ぐ矢を防いでいる。

 息を合わせ全員が密集して進めば巨大な装甲となり、大砲でも使わない限り、この突進を防ぐ事は難しい。


 弓矢隊での防衛をあきらめた敵方は、大砲をお堀の向こう側の城の入り口前に配備しようとする。

 ここが正念場だ……敵大砲の動きに注視して、こちら向きにセットして照準を定めようと構えた瞬間、すかさず巨大ボウガンを発射させる。


 すでに弦を引き、いつでも発射できるように準備していたものだ……鍛造技術に磨きをかけ、優秀な剣の製造とともに巨大な板バネを制作し、通常の手持ちボウガンの十倍以上の大きさである、長さ2m直径10センチの矢を発射できる巨大ボウガン。


 もちろん人が持つことはできず、横向きにして鋼鉄製の台車に固定している……名づけてゴーレム。

 大砲のように火薬を詰めてから弾込めする必要もなく、また導火線を使って着火するタイムラグもないため、セットしておきさえすれば、打ちたいときにすぐに発射できるのが利点だ……さらに射程距離も長い。


 敵方も手馴れているのか、すでに火薬を詰めて弾もセットした状態の大砲をいくつか用意していたのだろう、運んできて照準を合わせたらすぐに導火線に着火したが、こちらのほうが早い。

『シュカッ』乾いた音とともに、巨大な矢が一直線に城に向かって飛んでいく。


『ドガッ……ガッガァーンッ……ドドドッ』巨大な矢は、上向きにセットされた大砲の口にちょうど命中し、車輪を固定されていたはずの大砲は、その勢いで一瞬浮いた後に後方へ回転して飛んでいき、火薬が暴発して、そのまま城の入り口の硬い扉を破壊した。


『わーわーわー』それを見たわが軍の兵士たちは、一気に堀の渡り橋を駆け城内へと突入していく。


 ここまでは作戦通り……ここからが正念場だ、すぐさまコントロールを切り替え、白兵戦にする。

 城内では、いたるところで敵兵とのバトルが展開されていた。


 こちら側の作戦は、巨大な盾を持つ前衛兵が突進し、後続の兵が左右に分かれた敵兵からの攻撃を盾で防ぎながら右手の剣で斬り伏せていくといった、クラシックなやり方だ。


『ドガッ、ズバッ、バシュッバシュッ』しかし、行く手を阻む巨大な影が……敵守備の主力である剣豪だ、突進してくる兵士たちをバッタバッタとなぎ倒していく。


 剣豪は1チームに5人まで配置することができ、通常は守備側2名で攻撃側3名にする場合が多いが、どうやら守備に重き置いているようで、このチームの守備側剣豪は3名配置されているようだ。


 そう……これは対戦型の城攻略ゲームの世界で、俺は敵城を攻略する攻撃隊を担当している。

 ちなみに攻撃側である俺のチームの剣豪は1名だけ……その代わりと言っては何だが、特殊装備であり大砲の3門分に相当するゴーレムを持たせてもらっている。


 わがチームは火器がないため、守備側にも大砲はなく、深い堀と鉄壁の城壁及び4人の剣豪で守る作戦だ。

 武器制作のための技術選択で、大砲を作るための火薬などを製造する化学力は必須であるのだが、あえてその分まで含めて金属加工の技術に向け、鍛造技術を完璧にした。


 そのおかげでゴーレムを作り出すことができた。

 化学技術だけでは剣などの刃物の製造はできないため、金属加工技術にも当然ながら技術発展が必要となるため、一般的には5分5分の配分なのだろうが、この全部を金属加工技術に特化させたのだ。


 こんな極端なことを行っているのは、恐らく俺のチームだけだろう。


 さて……剣豪に与えられる技やスピード、力は各チーム同じで、一般兵士の3倍ほどだ。

 だったら一般兵士3人がかりなら勝てるのではないかとも思えるが、そうではない……恐らく十人がかりでも倒せないだろう……それくらいスピードもパワーも別格なのだ。


 すぐさまフォーメーションをとらせ、巨大盾を持つ前衛兵士を2人組にして左右にいる2名の剣豪に向け突進させる。その後ろに3名づつの兵士をサポートにつけ、剣豪を壁に押し付けるのだ。いくらパワーが格段の剣豪でも、5名の兵士の圧力には勝てず、一瞬動きが止まる。


 その合間に、真ん中に位置どる剣豪に俺のチームの剣豪を向かわせる。


『ブンッ』すぐさま相手の剣豪が大上段に振りかぶり、半歩右足を踏み出し少し前に体重をかけるとそのまま剣を振り下してくる。突進してくる敵に怯えることなく受けて立つ正攻法だ、さすがに戦い慣れしている。


 しかし俺はコントローラーを操作して、一瞬早く体を右側に移動させ、敵の攻撃を受け流すとともに、その反動を使って敵左わき腹を下から上向きに斬りこんでいく。


『シュッパァーンッ』軽快な音とともに敵剣豪が崩れ落ちるのを横目に見ながら、今度は味方が押さえつけている左の剣豪へとダッシュ。

 強引に味方兵を突き飛ばした敵剣豪を、その勢いのまま敵右わき腹から水平斬り。


 さらに振り返って右側にいた兵士に相対すると、味方兵が離れる瞬間、敵は突きの態勢で捨て身の突進をしてきたが、難なく交わして伸び切った体を後ろから一刀両断。

 敵剣豪3名とも打ち負かした後はオートに切り替えると、味方兵士はなだれ込むように上階へと向かい始めた。


 敵大将を捕まえて城を攻略した後、守備側の画面を見ると、既に敵兵が城内へ侵入していたが、4名の剣豪たちが敵兵を斬りまくっていた。

 2名の剣豪相手に4名の守備側剣豪がいるのだ……負ける要素はない。


 では、どうして剣豪が一人しかいないのに3名の剣豪に勝てたのかというと……当然ながら兵士たちに剣豪を押さえつけさせて分断した作戦が大きい。


 しかし、同じ力の剣豪同士、1対1ではどちらが勝ってもおかしくはない……一人目を倒したとしても次の剣豪に倒される可能性がかなり高いわけだ。


 ところが俺の剣豪は常勝だ……なぜかというと、俺は動体視力が極端にいいのだ。動体視力がいいというのは目がいいとよく言われるが、俺は目がいいのではなく、意識の問題と考えている。

 つまり瞬間的な情報をいかに意識下におけるかどうかということだ。いくら目に見えていたとしても、それを意識して反応できなければ意味はない。


 目で見た情報で体を反応させる技術……あえて俺は技術と考えているが、当然ながら見えなければ仕方がない……昔から目がいいというより、細かく動くものを見るのが嫌だった……神経に触るのだ。


 走る車からの車窓風景など、子供のころから見ていて気持ちが悪くなるたちだったが、平気な人は平気な様子で、遠くを見るのがいいと聞いて、なるほど近くで早く動くものを見続けていると目が回ってくることに気づいた俺は、ぼんやりとみているのがいけないということを理解する。


 しっかりと神経を集中させて車外の景色を見つめることにより、道路わきの電柱の表示板とか草むらに隠れる虫なども把握できるようになるとともに、車酔いもなくなっていった。(作者注:個人差があると思うのでマネしないでね)


 元から動体視力がいいという才能があったのかどうかは別として、反射神経が必要な対戦型格闘ゲームやシューティングゲームでも、俺は好成績を残している。


 バッティングセンタへ行き一番高速のケージに入っても球をとらえることは簡単にできたが、運動などやっていないために打ち返すだけの腕力はない。

 ゲームなら認識して指に反応を伝えるだけなので、ゲームの世界のみ俺は最強なのだ。


 同時に瞬きもなるべく控えるようにしている……理由はもちろん、その瞬間は目をつぶっていることになるからだ……恐らく普段でも俺の瞬きの回数は常人の半分以下だろう。敵が斬りかかろうと振りかぶり斬りかかってくる一瞬をついて身をかわして反撃する……これにより大体の場合は一撃必殺だ。


 敵の突進力も利用したカウンター攻撃のうえに、さらに寸前で身をかわした反動まで使えるのだ。


 だが、並の集中力ではこうはいかない……そのため攻撃側の剣豪は1体だけにして、集中させているのだ。

 攻撃は斬りかかる方向とタイミングさえ入力すればいいので、2体でも3体でも一人で操ることは可能なのだが、敵の攻撃のカウンターを突くためにあえて一体だけを扱うことにしているのだ。


 そうしてそれは守備側に兵を増強できることでもある。

 おかげで俺のチームは連戦連勝だ。


<ふあー……やったなあ……今日も勝ち抜けだ……これで全国大会へまた一歩近づいたな。>

 チャット画面にコメントが打ち込まれてくる。


<そうだな……あと2戦だ。>

<それはそうと……どうしてIPがいつもと違うんだ?

 お前だとわからずに一瞬チームを組むのをためらったよ。>


 疑い深い俺の相棒は、なりすましを避けるために、俺のネット名だけでは信用してくれない……いちいち確認のために俺に関することをいろいろと質問してきて、答えられたらようやくアクセスしてもらえる。

 最近はすぐに応対してくれるようになったので、もう慣れたのかと考えていたのだが違ったようだ……IPアドレスをいちいちチェックしていたとは……。


<悪い悪い。夕方の雷のせいだと思うが、部屋のネットワークが使えなくなった。仕方なく近所のネットカフェにパソコンを持ち込んでやっている。今日はどうしても抜けられない1戦だからな。>


 引きこもりの俺だが、互いの姿が見えないチャット環境でなら、コミュニケーション可能だ。


 今日の夕方、近くに雷が落ちたようで、アパートのエアコンも使えなくなりインターネットも不通となり、仕方なくノートパソコンを持ち込んでネットカフェでのゲームとなった。対戦型のネットゲームで、地方予選なのだ。と言ってもこの後地区予選があり県予選があって、その後ようやく全国大会と、まだまだ先は長い。


 最近はネットゲームというものが見直されてきて、海外の影響が大きいのだろうが、頭脳スポーツとしてオリンピックの種目になると評されていて、かくいう俺もオリンピックを目指していると公言している一人だ。


 とはいっても30過ぎのターなしフリーター……つまりフリーなだけで仕事も何もしていないおっさんという俺が、唯一誇れる技量として対戦型格闘ゲームがあり、それに没頭している。


 家族にはとうに見放され、親からも兄弟からも孤立して部屋に閉じこもっていた俺に対し、一人でアパート住まいをして暮すことを条件に、生活費の支援をしてくれている……有難いことだ。


 公立学校の校長をしているおやじに、弁護士の兄と公務員の姉、どちらも既に独立しているが、十分に部屋がある自宅ではあっても、いい年をして引きこもりの俺がいるのは世間体が悪いと追い出されたのだが、まあ生活の面倒を見ていただけるのだから何の不満もない。


 4畳半一間のアパートでも、ネット環境さえあれば俺にとってはパラダイスなのだ。

 食事は近所のコンビニで弁当を買ってくれば十分。弁当と金をカウンターに乗せるだけで事は足る。


 ところがボロアパート故……ということではないのだろうが、雷の一撃でエアコンもネットワークも沈没し、近所でも相当な被害が出たようで、電気屋に依頼をしても復旧までに時間がかかると言われてしまった。

 仕方なくネットカフェまでやってきて、何とか予選大会に間に合わせたというわけだ。


 ネットワームのIPアドレスなど通常はゲーマーから確認できる情報ではないのだが、俺の相方はパソコンに精通しているらしく、個人でネットサーバーまで保有しているほどのマニアで、ドメインも取得していてネットワークビジネスの傍ら、俺の相棒としてゲームに参加しているつわものだ。


 この後勝ち進んで地区予選まで進めば、大会会場へ直接行って対戦することになるのだが、何せまだまだ底辺の予備予選ともいえるような対戦だ……アクセスコードだけ渡されて、ネット対戦となっている。


<じゃあまた、来週な……その時には部屋のネット環境も直っているはずだ。>


 そうチャットにコメントしてネットカフェを出る。生活費は部屋代と食費に電気代などの雑費を含め、ぎりぎりしか渡されていない……自立を促すため、必要ならば働けということなのだろうが、俺はやりくりしてそれだけで生活するよう工夫している。


 そのため、用が済めば余計な出費を抑えるために、すぐにネットカフェを後にした。


 とはいっても、ネット回線負担が減る深夜時間を指定している予選大会のため、帰る時間はもちろん深夜だ。

 街灯に照らされた歩道を、一人ノートパソコンをかかえながら帰っていく。ネットカフェにももちろんパソコンはあるが、やはり使い慣れた機種がいいのだ。


 すぐ先の横断歩道を、腰の曲がった老婆が渡ってくる……人通りのほとんどない深夜の住宅街の道を、時間から考えて散歩でもあるまいし、どうして……とか考えながら何とはなしに見つめていた。


 横断歩道の歩行者用信号が点滅を始めた……やばいな……渡り切れない……老婆のゆっくりした歩幅では、信号が切り替わるまでにわたり切ることは無理だろう……だがまあ……人通りどころか車通りもない時間帯……問題ないだろうと思っていたら……突然閃光のようにライトが老婆の姿を照らす。


 なんだあ?無灯火で走ってきた車が老婆の姿を認めてパッシングか?俺はその瞬間、何も考えずに駆けだしていた……俺の背後から猛スピードで走ってくる車に負けまいと、ノートパソコンも投げ出し必死でかける。


 何年も引きこもりで外に出ることもなかった俺だが、最近はコンビニへ買い物に行くために毎日歩いてはいる……もたつく足取りで何とかバランスを取り駆けていく。


 何とか車より早く交差点へと達して横断歩道を渡ってくる老婆の前に立ちふさがり、その両肩を両手で思い切り突き飛ばすと、『プワー……』何をいまさら……とか思えるほど遅く、ようやくクラクションが鳴らされる……老婆は数メートル先の横断歩道にしりもちをついていた。


 対する俺は……閃光のように点滅するライトに照らされた俺は、衝撃とともに走りくる車と衝突した。


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