吸血鬼の王は食べることが大好き
ケーキは凄く美味しかった、チーズケーキは程よい酸味で、ショコラシフォンはふわふわだった。紅茶もいい香りでちょうどよく甘ったるくなった口がさっぱりした。いいじゃないか、私にドンピシャな味だ。
「お口に合いましたか?」
おお、びっくりした、いつの間に近くに。店員さんが凄いグイグイくるな。まぁ嫌いではない。素っ気ない対応よりは断然いい。
「凄く美味しかったですよ、また来たいですね」
「そうですか!嬉しいですねー!ここは結界が貼ってあるので特別な人しか来ないんですよねー」
「そ、そうですか…」
「はい!」
ニコニコ笑顔が素敵ですね、とりあえず現実に戻って来てください。あまり人が来ないことを結界のせいにしないで。広告やら色々張り紙とか使えば今よりはお客さん増えるよ...
「そういえばレイスちゃんと一緒に来てましたよね?何かあったんです?」
「ああ、実は変な人に襲われてるときに助けたら何か王になってくださいって言われまして」
そう言った瞬間に店員さんの顔色が青色を通り越して白色になる。なんだ、どうしたんだ。変なことは言ったと思うがそんな顔されるような事だろうか?
「あ、あのもしかしてそれは吸血鬼の王にと言われたりしましたか…?」
「はい、そうです」
「失礼しましたー!」
土下座だ、紛うことなき土下座だった。日本人が使う最大の謝罪である。
「お、王になる方とは知らず、無礼な言葉を...」
「だ、大丈夫ですよ別にさっきと同じで」
「お優しい言葉をありがとうございますぅ!」
大袈裟だなぁ…この子も被害者だろうか…騙した上にこのカフェで働かせるなんて、許すまじ!吸血鬼!
「あ、お名前を聞いてよろしいでしょうか…?」
「僕の名前は進藤悠です、あなたの名前は?」
「私の名前はライラ・ブラドと申します、以降お見知りおきを...」
何か仰々しくなってしまった、言わない方が良かっただろうか。少し後悔だ、この店員さんとは気軽な感じで行きたかったのに…
「もっと軽い感じでいいですよ」
「そ、それは…」
「いいですよ」
「はい...わかりました」
少し強引だったが納得してもらえたようだ。やっぱり可愛い子には気軽に接して欲しい。
「そういえばここの隣は定食屋でしたよね?」
「はい!凄く美味しいんですよ!特に生姜焼き定食がオススメです!」
それはいいことを聞いた、こんな美味しいカフェの店員さんが美味しいというのだ、確実だろう。
そんな会話をしていたらレイスが帰ってきた。
「悠様!準備が出来たので上の事務所にどうぞ!」
「ああ、うん。じゃあライラまたね」
「はい!またねです!」
おお大分気軽な感じになってきた、いいね。やっぱりこういう関係が一番だよね。
「上でうちのトップがお待ちです」
「うんわかった」
よし、こんないい子達を騙す自称吸血鬼達を半殺しにしますかね。