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第0話 後日談

 学校という国は身分社会でできている。


 これは別に「ガッコー国」とかいう世界のどこかにある外国や次元を超えた異世界の国の話ではなく、現実世界にあるそこらへんのなんとか中学とかかんとか高校とか、そういう話だ。もちろん校長先生や教頭先生がどうこうとかいう話でもなく、生徒間でのヒエラルキーの話だ。


 まあ、誰しもある程度理解はできるところであろうと思うし、あまり細かい説明はしないでおこうと思う。この制度に苦しめられてきた人もいることだろうし。

 

 ただ幸運なことに、私はこの制度を最大限に利用する身分だった。容姿も申し分なく、割となんでもできてしまう私は勉強やスポーツや人付き合いなんかを利用して、小学校中学校の間常にクラスの中で最も高い身分を手にしていた。

 しかし中学校生活も終盤にさしかかった三年生の終わり頃、私は考えた。


 私は――何者だ?


 いや、哲学的な意味でなく。

 

 学校で――私は何だ?


 そりゃあそこは市立長峰(ながみね)中学校で、私はそこに通う女子中学生であったけれど、そういう意味でなく。


 学校の教室という空間において、私は最も身分が高い。

 つまり、私が一番、偉い。

 ということは、私に肩書きをつけるとすれば。

 クラスの中に限って言えば私は――王様なのか。

 私は王様で――教室は王国。

 まわりの奴らは王国民――あるいは駒。

 

 今思い返せば後悔のしようがないほどに恥ずかしい話だが、そのときの私は自分の存在を王だと確信していた。

 私より偉い奴なんていなくて、私はなんでもしてよくて、私は王になることが許されている器だと本気で思っていた。

 つまるところ私は、すっかり学校内での権力に酔いしれていた。

 あまりに甘い汁を吸って吸って吸いすぎて、酔っ払ってしまったのだ。

 

 そのまま私立賢狼(けんろう)高校に通う高校生になって一か月。

 いつも通り最上位の身分を与えられていた私は、こっそりと心の中で自分のクラスのことを「綺羅星王国」と呼ぶようになっていた。



 

 最後に、もしくは最初に、ひとつだけ。 

 ここからの語り部はこうして王を卒業した(、、、、、、、、、、)私ではなく、王であった当時の私だ。

 今だから言えることではあるけれど――だからこそこの物語は。

 どうしようもなく喜劇だ。


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