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ド根性ガール  作者: ちかぞお
9/16

呼び名を変えられてしまったのですが

 今日から新学期です!

 今日から私も大学1年生! イエーイ!


 いざ、入学式!

 と思ったのに、アメリカの大学には入学式は無いそうです。がっかりー。


 高校留学組のエリちゃん曰く、高校にも卒業式はあっても入学式は無かったそうで、アメリカって全部の学校でそうみたいです。

始業式とか終業式とかもないそうで、何か入学した感がまるでないんですけど。


 そんなわけで、初日からいきなりガッツリ授業です。

 こ、心の準備が…。


 そんなドキドキな大学生活が始まって2日目の夕方、私はエリちゃん、サキちゃんと夕食をカフェテリアで食べていた。

 このカフェテリア、メインには当たり外れがあるけど、スープは美味しい。

 欲を言えば、サラダバーのドレッシングに和風か中華ドレッシングを入れて欲しいんだけど、ここはアメリカ(のド田舎)。それは無理というものね…。


 私たちが食べていたら、日本人男子のグループがやってきて、一緒に食べることになった。


「クラスはどう?」


「どうもこうもさぁー」


 ええ、私、伊藤梓は物申しますよ!


「どのクラスでも、先生が私の名前を正しく呼んでくれなーーい!」


 そうなんです。

 2日で登録した全てのクラスはとりあえず全て受けたんです。

 初日の流れはほとんどの場合、まず先生の自己紹介から始まり、次に出欠取り。

 それが問題なんですっ!


「どの先生も、私の名前を『エィ、ズゥーサ』って呼ぶんだもん! 『エィ、ズゥーサ』って、誰!」


 私の名前AZUSAは、アメリカ人にはエィズゥーサと読まれてしまうことがわかりました。

 ちっとも嬉しくない新発見、ここにあり!


「まだ本当の名前に近いじゃん。私なんてこっちの高校に入った時には『イーライ』だったよ?」


 そう言ったのはエリちゃん。

 エリちゃんはERIを「イーライ」と呼ばれるから、いちいち訂正するのが面倒だって普段の名前の表記を「ERI」から「Elie」に変えたって言ってたし。


「私も何人かの先生には『セィキ』って言われて、誰?って思ってたら先生が『サキ』って呼び直してくれたから、あ、私だったのかーってその時気づいたわ」


 そういったのはサキちゃん。


「ハッキリ言って、面倒だよね…」


「本当にね…」


「梓ちゃんの名前って、私の名前みたいに表記を変えるのって、難しいしね」


「AZUSA以外の何にもならないよね」


「でも、エィズゥーサは違うと思う!」


「1人1人の先生たちの脳髄に正しい名前の発音を刻み付けるしかないよね」


「でも、どうやって!」


「うーーーむ」


 悩んでいた私たちの横で、いつも陽気な関西出身のマサさんが言った。


「ならもう、えーやん。ズーサで」


 はぁ? 「ズーサ」だと?

 

「異議アリ! 何ですか、その、ピッタリした衣装を着た悪役のお姉さんみたいな名前は」


「それゆーたらドロンジョやろ?」


「誰も覆面したお姉さんとは言ってませーん」


「なら、『ズー』はどうだ」


 突然横槍を入れてきたのは、皆に「隊長」と呼ばれている2年生のお兄さん。


「誰が動物園ですか」


「ズーサよりはズーの方がカワイイだろうと思ったんだけど。アズサ、ズーサ、ズー」


 何なんですか、そのアズサ3段活用は!

 変だよね?って同意を求めようとエリちゃんとサキちゃんを見たら、2人とも何故か隊長の意見にうんうんって同意の頷きしてるし!


「ズーって、いいかも!」


「アメリカ人には『アズサ』よりも呼び易いんじゃない?」


 ええええええ。

 どうしてそうなるわけ?

 友よ、私を見捨てたな?


 困惑する私を置いてけぼりにして、隊長は胸を張りながら高らかに宣言した。


「では、君は今日から『ズー』だ!」


 周りから沸き起こる拍手。

 いやいやいや。 何でそんなにいい笑顔なのよ、皆さん!


「それでさぁ、ズーちゃん」


 エリちゃん、早速新しい呼び名に馴染んでるんですが…


「ほな、またな、ズー」


 マサさんが隊長と一緒に席を立った。

 っていうか、マサさんも既に自然に使ってますね、ズー。


 

 翌朝には、会う人たちほぼ全員から「ズー」「ズーちゃん」と呼ばれた。

 恐るべし、隊長。

 恐るべし、寮の住人の結束力。

 もう、ここまで来たら、諦めて開き直るしかないじゃないのよぅー。


 そんなわけで、私、伊藤梓は、本日より「伊藤”ズー”梓」になりました。


 もー。ミドルネームが付くなら、もっとカワイイ名前が良かったよー!

 ズーって、何なのよ、ズーって!



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