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ド根性ガール  作者: ちかぞお
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アメリカは広すぎるのですが

「叔父さん。道、間違ってない…?」


「間違ってないよぉ~♪」(鼻歌交じり)


「本当に…?」


「うん。叔父さんを信じなさ~い」(やけに陽気)


 米国北西部、ワシントン州のシアトルに成田から到着し、1日シアトル観光をした翌日。

 私たちは叔父さんの運転するレンタカーで、高速道路をひたすら東に向かって走っています。


 シアトルは東京郊外みたいな落ち着いた街だった。

 そして、シアトルから30分くらいは、文化圏だったと思う。家とかあったし。

 その後、草原に牛や馬がいる風景が見えたりしたけど、「この辺には牧場があるのね~」くらいにしか思っていなかった。


 でも、今は…。


「ちょっ! 叔父さん! やっぱり、道、間違ってない? グランドキャニオンじゃん、ここ!」


 目の前に広がる赤茶色の切り立った岸壁に、私は驚愕の声を挙げた。

 唖然とする私と対照的に、父は珍しいものを見たと嬉しそうに微笑みながらカメラのシャッターを押し捲り、叔父は「ドッキリ大成功♪」って感じでケラケラと笑っていた。


 「似たようなものだけどね、ここはコロンビア・ベーシンって言って、コロンビア川が流れてるんだ~。言っとくけど、グランドキャニオンはこれよりももっとデカいよ?」


「はい? これより? これもかなりデカいんですけど??」


「グランドキャニオンはもーーっとデカくて広いから」


「マジ、です、かぁ…」


 私たちは「ビューポイント」と書かれた駐車できる観光スペース(とは言っても、車を停めるスペースがあるだけだけど)に車を停め、記念写真を撮った。

 お見事なくらい、目の前に広がるのは赤や茶色の岩、岩、岩…

 その景色を見ていると、この地球にとって、自分はアリンコ並みに小さい存在なんだなぁーと思い知らされる。

 ここでこんなに広いなんて、グランドキャニオンに行った日には、私は確実に迷子になれる。

 恐るべし、アメリカ…。


 ひとしきり景色を楽しんだ後、私たちは車に戻り、叔父さんは運転を再開した。


「叔父さん。目的地まで、あとどのくらい?」


「ん~。途中で休憩挟んだりすると、3時間くらいかな?」


「はいぃ??」


 4時間走って、州の端から真ん中まで辿り着くのか…。

 っていうか、4時間で州を横切ることも出来んのか…。


 アメリカって国は、思っていたよりもメチャクチャ広かった。


 そりゃもう、ファストフード店でのドリンクのサイズの差にビックリするのも納得なくらいのスケールの違いだわ。

 大きい水槽に入れると金魚もデカく育つとかいうのと同じ理論?

 それなら、アメリカ人が大きいのも、納得です。


 コロンビア川の近くを抜けた後は、茶色い地面と所々に「タンブルウィード」(西部劇とかでよく決闘場面でカウボーイの足元をコロコロ転がっていくアレですよ、アレ)が生えるだけの乾いた風景が延々と続いていた。

 そんなウェスタンな風景の中、高速道路の道は、ただひたすらに真っ直ぐ続いている。


 真っ直ぐだ。

 ビックリするほど真っ直ぐだ。

 思わず「線路は続くよどこまでも」とか歌っちゃいたくなるくらい、真っ直ぐだ。

 いや、ここは道路で線路じゃないけれどもっ


 叔父さんに「あとどの位」と聞き飽きた私は、ただボーっと外を眺めていた。

 時折見える牛や馬(柵は見えるけど、牧場らしい建物は見えない)を見ながら、父と叔父は何やら酪農雑談をしていた。

 それを聞きながら、ああ、そう言えば2人とも実家は農家だったけと思い出した。

 父の実家は私が物心付いた頃にはもう馬や牛は扱っていなかったけれど、母の実家は私が中学生になる頃までは豚を飼っていた。

 餌を求めて檻から顔を突き出してくる豚の集団は、かなりのトラウマだった。襲われかけたこともあったし。ぶるぶる。


 途中にあったマクドナルドで給油と軽い食事を済ませ、さらに行くこと1時間ちょい。

 車はようやく目的地の街の名が書かれたサインのある出口から、高速道路を降りた。

 降りた、けど…。


「これ、本当に、『街』(シティ)…?」


 見事なまでに、何も無い。

 本当に私の行く大学はここにあるんだろうか。


「あー。『町』の中心はもうちょっと先だから」


「へ、へぇ…」(町の名前、「シティ」って付くのに、ウソツキー!)


 高速道路でも見掛けたチェーンらしい「モーテル」(自動車旅行者が使う「モーターホテル」からの造語 by 叔父さんからの豆知識)が転々と建つ以外は何も無い道を通り、やがて何となく街というよりは町と言った風景になってきた。


 どの建物も、平べったい。

 2階建てって、存在しないんだろうか。

 人もそんなに歩いてないな、ここ。

 

 なんてことを思っていたら、叔父さんの運転する車が左折した途端、また建物が無くなった。


「あれ? さっきの町は違う町だったの?」


 もしかしたら、行き先はもっと大きな町なのかなとちょっと希望を持ちました。


「いや? 今通ったところが町の}ダウンタウン(中心部)だよ~? でも、君の行く学校は、町の中心からは、ちょっと離れてるんだな~」


 おっと。私の希望がアッサリと玉砕されました。

 さっきの小さな町並みが「町の中心部」だったとは…。

 割と田舎な我が家のある町よりも、妙に閑散としてたんですけど。


 でも、それ以上に、車が10分走っても周りに何も無い場合は、どうすればいいのだろうか?


「叔父さん。これ、『ちょっと』の距離じゃないよね?」


「え~? ちょっとだよ~。アメリカではこれくらい、ちょっとだよ~?」


 道中、「ひょっとして」とは思っていたけど、私、叔父さんに騙されてる?

 それとも、これは壮大な「ドッキリ」なのだろうか。

 いや、一般人の私相手に、こんな壮大なドッキリがあってたまるか。

 何てったって、国またいでるし。


 しかし、そうか…。

 学校って、町の中心部とは離れた場所にあるのか…。私、学校内の寮に入るんだけど。

 学校の近くにコンビニとかあるのかな。あればいいな。


 …あるよね?


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