初めて感謝祭に参加してみたのですが
どうやらアメリカのこの辺りでは、秋ってサッと来てサッと去るものらしいです。
木が葉っぱの色を変えたなーと思っていたら、あっという間に散りました。何だ? この早さ。もうちょっと紅葉を愛でさせて欲しいと、ワビサビの国から来た女は思います。
11月にはサンクスギビング(感謝祭)というのがあって、清教徒がなんたらかんたらっていう説明を受けましたけど、それはともかくとして(覚えきれませんでした)、学校が3日もお休みになります。週末も入れたら、5連休! やったー!
アンちゃんとダニエラちゃんから聞いた話だと、サンクスギビングとクリスマスは家族で過ごすものなんだそうです。
日本ではクリスマスは恋人とっていう人が多いけど、逆にアメリカでは新年は恋人や友達と一緒にパーティーしながら迎えるんですって。カウントダウン・パーティー。楽しそうだなー。
アメリカ人の寮生たちは半分は実家に帰って、半分は「クリスマスには帰るからサンクスギビングは残る」とかで、お陰で寮の中はそれほど閑散とはしていません。どうせ留学生は帰れないしね。5日の休みじゃ、日本に帰るには短か過ぎるんですよ。無理無理。
皆で旅行にでも行こうかという話にもなったんだけど、先輩たちから「いや、サンクスギビングには店も全て閉まるから、どこに行ってもすることないぞ」と言われ、さらにサンクスギビングの前の週からぼちぼち雪が降り始めたので、旅行に行ってる場合でもなくなってきました。
雪と言ったらスキーかなと思ったら、先輩たちが言うには、スキーをするにも今の雪の状態だと、ちょっと足りないそうです。クリスマス近くになると、ここから1時間半くらい車で行った先にあるスキー場でスキーが楽しめるそうですけど。
スキーか。やったことないんですけど。この際、私も始めるべき?
先輩たちが言うには、ブーツとか板とかはスキー場で貸してもらえるから、ウェアだけ揃えればいいって話で、日本でスキーをするよりも破格のお値段で滑れるらしいんですけど。
でもその前に、スキーウェアってどこで売ってるんだろう…? この町にそんな場所、あった?
あっても変なのしかなさそうで怖いんですけど。何てったって、田舎ですから。
車持ち様たちは皆、冬に向けての車の整備やタイヤ交換で忙しいらしくて、トムさんもオイル交換とか色々やってるらしいですが、私は車に詳しくないんで、その辺りはよくわかりません。
タイヤは理解できますけど、オイル? オイルの交換って、何をどうするの?
そんな中、ダニエラちゃんからサンクスギビング・ディナーの御招待を受けました。
『ズーは初めてのサンクスギビングでしょ? お母さんにズーの話をしたら、本物のサンクスギビングディナーを経験させてあげなきゃ!って張り切っちゃってるから、是非来て! エリとサキも一緒にね! もちろん、ズーの彼氏は絶対に参加ね!』
あう。何だかんだ言って、ダニエラの目的はトムさんかしら。
そう言えば、この間の学校のハロウィンパーティーでトムさんをダニエラちゃんとアンちゃんに紹介したんだけど、あの時のトムさん、被り物被ってたし、パーティー会場の照明が暗かったからなー。
そんなわけで、サンクスギビング当日は、ダニエラちゃんのお宅にお邪魔しました。
「うわー。豚が沢山いるよー」
以前、私に幼少時のトラウマを呼び覚ました豚の大群は、寒くなってきたからか動きが多少鈍くなってましたけど、それでもブヒブヒ元気にしてました。
こ、怖くないんだからねっ!
それにしても、子豚たちが大分大きくなっちゃって、可愛くない…。ガッカリです。そして、心持ち頭数が少なくなってますか…? いや、細かいことは気にすまい。
『いらっしゃい! こっちよ、どーぞ!』
窓から私たちが到着したのを見たと言って、ダニエラちゃんが出迎えてくれました。
中に入ると、リビングでダニエラちゃんのお父さんと弟君に挨拶をして、お料理中のお母さんは『いらっしゃい』とキッチンからちょっとだけ顔をだして、また戻って行きました。
普段はここに住んでいるアンちゃんは、今日は実家に戻っていて留守です。
『もう少ししたらターキー(七面鳥)も出来上がるから、それまでの間は皆でターキーのデコレーションを作りましょ♪』
そう言ってダニエラちゃんは私たちにリンゴを丸ごと1個と、ターキーの妙に微妙な絵がプリントされた紙を1枚ずつ手渡してくれました。
で、何するの、これ?
『まずは、ターキーに色を塗ります』
ってなわけで、リビングのテーブルに用意されていたクレヨンで、ターキーにぬり絵をする私たち。
「ターキーって、何色?」
「茶色?」
「町の飾りとかだと、オレンジとか混ざってない?」
「トムさん、それじゃぁまるで孔雀だよっ」
「飾りにするんだったら、派手な方がよくない?」
『はーい、皆、英語で話そうね?』
『『『『ゴメン、ダニエラ…』』』』
色を塗ったターキーの上半身の絵と尻尾の絵をハサミで切り取り、ダニエラちゃんの指示に従ってリンゴに切り込みを入れて、それにターキーの絵を差し込むと、ターキーのお飾りが出来ましたー。
ボクニモデキタ♪
リンゴは明日にでも美味しくいただくことにします。
その後、ダニエラちゃんを手伝ってテーブルセッティングをしたんですが、何?この、料理の数!
そして、中央の空けていたスペースに、真打、登場です!
『焼けたわよ~~~!』
オペラ歌手のような大音量で歌いながら、ダニエラちゃんのお母さんがキッチンから運んで来たのは、デッカイ七面鳥の丸焼きでした。
「「「す、すごい…」」」
キッチンから料理を運んでた時に「うわ、オーブン、デカ!」って思ったんだけど、これで納得です。あの大きさじゃないと、これ、入りません!
お母さんがテーブルの真ん中にターキー様を置いて、まずは記念撮影会の開催です。もちろん、ターキー様を囲んでの撮影ですよ?
「セイ、ターキー!」
「「「ターキー!!」」」
そうか。今日は「チーズ」ではないのか。あくまでも主役はターキー様か。
そんなことを思いながら写真を何枚か撮った後、全員が席に着きました。
『では、隣の人と手を繋いで。 主よ、またこの日をこのように沢山の笑顔と共に迎えられたことに感謝し…』
おっと。何か宗教的な感じになりました。私は典型的な日本のごった煮宗教で育ったので、新鮮です。 心なしか、右手を握ってるトムさんの手がギューってなってますが…。ちょっと握り返したら、またちょっと握る力が強くなりました。
えーっと、これ、握力勝負してるわけじゃないですよね?
「エイメン」
「「「エイメン」」」
英語ではアーメンじゃなくてエイメンなんですかー。へー。っていうか、エイメンって何だろう…。
とにもかくにも、お食事開始です。
ダニエラちゃんのお父さんがターキーを切り分けて、皆のお皿に数切れずつ乗せてくれました。他のお料理はガンガンお皿を回して自分の取り皿に取っていきます。
ううううう。お芋の入ったお皿がおーもーいーーー。
中華料理で使うターンテーブルが欲しい。今すぐ欲しい!
サツマイモに似た形のお芋は中がオレンジ色で、「ヤム」って言うそうで、バターを付けたら甘くて美味しいです。サツマイモよりも水分が多いかな?甘さ控えめで繊維が多い気がします。
ターキー様は茶色いソースの「グレイビー」を掛けたり、クランベリーで作ったソースを付けたりして食べるようで、私はどちらかというとグレイビーよりもクランベリーソースの方が好きかな。
ターキー様の中に詰めていた「スタッフィング」も試してみたけど、うーん。これは、私的にはあまり好きではない感じ。べちょっとした感じがイマイチ好きになれません。ゴメンナサイ。
お腹が120%一杯になった後、「腹ごなしに」とか言われて「ツイスター」っていうゲームをやらされ、ダンサーだけに身体の柔らかい私は結構有利に立っていたんだけど、ダニエラちゃんの弟君との熾烈な勝者決定戦で負けました。
くそう。あそこで「黄色に右足」とか出なけりゃ勝てたのに!
帰りに、ダニエラちゃんのお母さんがパイやらクッキーやらをお土産に持たせてくれました。今度、ダニエラママによるパイ焼き教室を開いてくれるそうなので、楽しみにしよっと。日本の実家にはオーブンがなかったから、実は洋菓子作りには興味があるんですよ。
「何か、車の中がターキー臭いね」
「車が臭いんじゃなくて、僕らだから、僕ら!」
「意外と臭いが服に付くね。恐るべし、ターキー様」
「匂いだけでお腹一杯だよ…。しばらくターキー見たくない」
「「「同感…」」」
自分たちが料理したわけでもないのに、服にどうやらターキー様の匂いが付いてしまったようで、歩くターキー臭軍団になってしまいました。
寮に帰り着いた後、速攻でシャワールームに行ったら、やっぱり速攻でサキちゃんとエリちゃんがやってきました。
「うううううう… 髪の毛がターキー臭いぃぃぃぃ」
「言うな! 耐えろ! すぐに浄化される!」
「この後、洗濯もしたいよね…」
そんなわけで、シャワーの後は3人で洗濯。
洗濯しながらトムさんにラインしたら、トムさんも私たちと同じようにシャワーを浴びて洗濯している上に、「車に消臭スプレーぶっかけてきた」って言ってました。
ターキー様、恐ろしい子…!