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ド根性ガール  作者: ちかぞお
11/16

トラウマが蘇ってしまったのですが

 大学生活も1ヶ月くらい経つと、大分色んなことに慣れてきた…と思う。

 唯一慣れないっていうか、まだギクシャクしているのが英語。

 英語圏の国に住んでいながらにして、これはヤバイのでは?と、自分でも思います。あはははは。


 普段使いの英語とかは、覚えてきたと思うんだけどな。

 カフェテリアでの料理の注文の仕方とか、出席の取られ方とか、道の尋ね方とか。

 もちろん、他の人たちの英語を聞いて真似してるだけですけどね。

 気分はオウムかオカメインコです。


 そんな私みたいな学生が他にもいるので、学校がボランティアのアメリカ人生徒を私たちの「カンバーセーション・パートナー」、ぶっちゃけ、「お話し相手」として1人に1人ずつ、付けてくれました。

 私のパートナーは金髪美人のアンちゃん(18歳)です。


 とりあえず、最初のミーティングの時に、週末にどこかに連れて行ってあげる!ということになったらしいです。(アンちゃんの英語が早くてボーっとしてたら、近くにいたエリちゃんが教えてくれました。)


 そんなわけで、週末の土曜日にアンちゃんが私を連れ出しに寮まで迎えに来てくれました。


『今日はどこか行きたい所はある?』


 えーっと。特には無いんだけど。

 この場合、「おまかせします」って言うのはどう言えばいいんだろう。

 えーっと、えーっと…。


「ズーちゃん、ズーちゃん。そんな時は辞書、辞書!」


 おお、カナデちゃん、ナイスフォローをありがとう!


 ズーは 辞書で 「任せる」を 引いた!


『おまかせ します』


「…OK!」


 おっと。アンちゃん今、ちょっと呆れましたね?

 でも、ドンマイ!


 アンちゃんが運転するちょっと古びた小さめの車で、私たちはアンちゃんのボーイフレンドがいるという陸上競技場までやってきました。


『彼はね~。走るのが好きなの~。あ、いたいた! ジョシューーー!!』


 アンちゃんがこちらに向かって歩いていた彼氏(と思われる男子とその仲間)に向かって元気に手を振ったのですが…。


『何してんの、ここで』


 おっと。彼氏と思わしき男子は、まさかの塩対応です。


『だって、ジョシュに会いたかったから♪』


『練習あるって言ってただろ? それに、今はちょっと休憩中で、終わったわけじゃない』


『何時に終わる? 今日、その後会える?』


『わかんねぇ』


『ああん、もう、ジョシュったら~。終わったら電話して? ね?』


『行くぞ』


 うわぁ。彼、アンちゃんをスルーして行ってしまいましたよ。


『もう…』


 アンちゃんは不満そうな顔をしつつ、近くに停まっていた車に近づいて、ちょっと埃を被っているその車体に指で大きく「CALL ME!」って書いてるし。


『えっと、それ、アナタの彼氏さんの車?』


『うん、そう!』


 うーわー。

 後で怒られなきゃいいけどね。


『さ、じゃ、私の家に行きますか』


 彼氏さんの車のボディにひとしきり「CALL ME!」を書いて満足したアンちゃんと、また車に乗って出発です。

 道中で話してくれたけど、アンちゃんは学校に行くために、今はこの町に住む従妹さんの家族と一緒にすんでるそうで、実家はここから3時間くらい離れた町なんだとか。

 アメリカ、広い…。


『うちもそうだけど、従妹の家も農家なの。あ、あれよ!』


 そこは広い開けた土地に、ポツーンと建ってる一軒屋で、「大草原の中くらいの家」って感じの見た目ですが、その周りには柵で囲われた場所が点々としています。


 アンちゃんは家の近くに車を停めると、私を一つの囲いに案内してくれました。


『見て、見て~。すんごくカワイイでしょ?』


 中にいたのは、まだ生まれて数週間だという豚の子供たち。30センチから40センチくらいの大きさのピンクの丸い物体が、キュイキュイ言いながらトテトテ歩いてます。

 

『うわぁ、カワイイ!』


 映画で観た時もカワイイなと思ったけど、生のカワイさったらありません。


『豚はこの時期が一番カワイイのよねぇ~。あっちが1歳過ぎた豚よ』


 別の大き目の囲いには、大分大きくなった豚さん達がブキャブキャ言ってます。


『それで~。こっちはアダルトね』

 

 さらに大きな囲いはレースサーキットみたいな形になっていて、向こう側から大豚の大群が物凄い勢いで走ってきました。


 ドドドドドドドドドドドド


「う、ひ、ひ、ひえやぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 突然フラッシュバックする、幼い頃のトラウマ。

 ばあちゃんの手伝いで豚のエサを豚舎に運んだ時に、豚に襲われかけた、あの忌まわしき黒歴史…

 

 もはや、涙目です。


『ズー、大丈夫?』


『だ、大丈夫…じゃないかも』


『ごめんねー。怖かった? 豚、大きいもんねー』


『う、うん…』


 アンちゃん、ゴメンネ。

 今の私には、この幼少期のトラウマを上手く説明できるほどの英語力は無いのだよ。(そして今、手元に辞書も無い。)


 アンちゃんはこの後、家で従妹さんを紹介してくれました。従妹のダニエラちゃんは私たちと同い年で、アンちゃんと似た顔立ちだけど、黒髪のダニエラちゃんはエキゾチックな感じの美人さんです。

 私は気付かなかったけど、ダニエラちゃんも同じ大学に通っているそうで、今度3人で一緒に遊ぼうねってことになった。


 その後、例の「CALL ME!」指書きの件で、アンちゃんはジョシュ君に振られてしまったらしい。

 あの車、ジョシュ君がバイトを頑張って貯めたお金で自分で買った愛車だったらしい。


 止めてあげればよかったのかもしれないけど、「それ位にしておきなよ」って英語で言う言い方もわからなかったのよ。ゴメンナサイ。


豚の大群、マジで怖い(苦笑)

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