表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

詩集

てのひら

作者: 久灘圭

静かな夜

たった一人の部屋の中

布団の上に寝転がる


顔に近づけたてのひら

そこにあるシワを見つめて思う

この手で どれだけのものを掴んできただろう

どれだけのものに触れ

何を得てきただろう


白く光る蛍光灯に てのひらをかざす

指の隙間から漏れる光を見つめて思う

ここから どれだけのものが零れていっただろう

どれだけのものがここをかすめ

何に触れられなかっただろう


手に入れたものと引き換えに失ったもの

その大切さに ちゃんと気づけているだろうか


何かを失ってまで手にしたもの

その大切さに ちゃんと気づけているだろうか


つないだ手の温もりを

ちゃんと覚えているだろうか


はなした手の感覚を

ちゃんと覚えているだろうか


触れてきたものの優しさを

得られたときの喜びを

忘れてしまっていないだろうか


触れられなかったそのわけを

得られなかった悔しさを

忘れてしまっていないだろうか


きっと

全てのものを手に入れられるわけじゃないけれど

今あるものの大切さに気づき

そのものの温もりや優しさに触れ

手にしたときの感動を味わい

手にできなかった悔しさから何かを学ぶ


きっと

失ったもの全てを取り戻せるわけじゃないけれど

零れていったものが何なのかに気づき

そのものの存在に感謝し

手をはなした自分の愚かさや弱さを知り

大切なものの上に大切なものを重ねられるようになる


てのひらを自分に向け

ギュッと握りこむ

そこからは

もう何も零れ落ちたりしない


そっと開いて見つめたてのひら

それは

大切なもの 守りたいものが何なのか

ちゃんと知っている

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 手は自分自身と共に生きているんだなぁって実感します。 毎日感謝感謝です・・・・・・(*´ω`*) 投稿お疲れ様でした
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ