柚君
頭が痛いです。
柚君の性格は例えるならば、なつかない黒猫。
なついてしまえば自分からよって来ますが、そうでないなら近寄らない事をおすすめします。
「帝君そちらの方は友達?」
ヒロイン様です。
安易に話しかけてしまいました。
今帝様とご機嫌で話をしていた柚君がムッとした顔をしています。
「あの…!」
「柚君!そろそろ帝様からはなれて私とちゃんとお話しましょう。お祖父様の言うことでしたら………ちゃんと聞かなければなりませんよね。」
咄嗟にかばってしまいました。
「姉さんがそう言うなら。その代わり姉さんはちゃんと聞いたら逃げらんないよ!」
もう、意地悪です。
「聞いた上でお祖父様に直談判します。」
「じいちゃんの言いつけは絶対……だろ?」
意地悪です。
「………意地悪です。」
私が呟くと柚君は帝様からはなれて私を強く抱き締めました。
「だから、何でそんな可愛い顔するかな~!」
「こら。柚!」
帝様の怒った様な声がします。
そして柚君は私の鼻にキスをします。
「すきあり。」
私はそのまま意識を失いました。
だって、口にされるかと思ったんですもの。
目が覚めると保健室でした。
すこしだけベッドでゴロゴロしてみてから、制服が皺になりそうだと思い起き上がりました。
ベッドの回りを囲むカーテンを開けると、話しかけられました。
「起きたかしら?」
「はい、先生。」
保健の先生の中西紫音先生です。
美人で長く赤みのある茶色の髪の毛をゆるくウェーブしていて大人の色気が有ります。
明るい茶色の瞳を細めて微笑む姿はうっとりものです。
男の人だなんて信じられません。
「今日貴女を運んできた子、転校生だったわね。」
「………従弟なんです。」
「まあ、イケメンさんで素敵だったわよ。貴女の血筋は皆顔が良いのかしら?」
先生は私の顔を覗きこみます。
「キスされちゃったんだって?」
思い出してしまいました。
そうです。
鼻にとは言え、キスされたんでした。
「どうだった。」
「驚き過ぎて訳が解りませんでした。」
お祖父様に報告しなくては!
もしかしたら、ハグを無しにしてくれるかも知れません。
「婚約者の目の前で唇を奪われるなんて可哀想。」
その言葉に私はフリーズしてしまいました。
「………今、何と?」
「婚約者の目の前で唇を奪われるなんて可哀想~!」
「う、奪われてません!鼻、鼻でした。柚君は暴走ぎみですが、無理やり同意も無しに唇を奪うような駄目男では、ありません。」
「本当に?」
「はい。本当です。」
私が力説していると、隣のベッドのカーテンが開き、帝様と柚君が出てきました。
「ほら~!言った通りでしょ!みかん兄さん心が狭い。」
「うるさい!元はと言えばお前が麗にキスなんかするからだろ?」
どう言うことでしょうか?
「こいつら五月蝿くってしょうがないの、キスした場所がどうとか本気でどうでも良い。」
紫音先生は呆れ顔です。
「麗姉さん。ごめんなさい。」
柚君は気を取り直して私に謝った。
「………もう、しないで下さいね。」
「うん。……無理。」
柚君は満面の笑顔です。
柚君はこう言う子です。
「次は無いからな柚。」
「みかん兄さんには関係ないと思うけど?」
「有るだろ!俺は麗の婚約者なんだから。」
柚君は含みのある笑顔を作りました。
「そうだね。婚約者、だもんね。」
柚君は何か企んでいるのかも知れません。
そんな顔をしていたんです。
頭痛、寒気。
病院にこれから行こうと思ってます。
熱下がって来てるからインフルじゃないと思ってます。