失神
お弁当を広げて二人に見せます。
「美味しくなかったらごめんなさい。味見はしたんですけど………自信がなくて。」
左京君は卵焼きを頬張ると笑います。
「いつも通り旨い。」
「"いつも"?」
帝様の眉間に皺がよります。
「応援させてもらえる時はお弁当を作って来ますよ。帝様は知らなかったのですか?左京君言っておくって言ってましたよね?」
「うん。忘れてた。」
なんと!
それでは左京君を好きになったと疑われても仕方ありませんね。
「帝様、申し訳ございません。」
「麗が謝る必要は無いよ。むしろ左京が謝れ。」
「無理。」
またもやバチバチと睨みあっています。
「帝様、アスパラの肉巻きなんていかがですか?」
私はお弁当に注意を引き付けます。
「ありがとう。もらうよ!」
帝様は私に笑顔をくれます。
「麗ちゃんは兄さんの事が好きなの?」
左京君に突然聞かれ驚きましたが私は笑顔を作ります。
「はい。帝様が大好きです。」
帝様は耳まで真っ赤になってしまいました。
「なんだ。兄さんの回りをうろついてる女が居るって聞いたからチャンスだと思ったのに。」
左京君は残念そうに溜め息を付きます。
「うろついてる女?」
帝様が驚いた顔をしています。
「転校生。」
左京君の言葉に今度は血の気が引いていくように青くなる帝様が心配になってしまいます。
「麗!誤解しないでくれ!」
誤解………
「麗ちゃん、俺に乗り換えても良いんだよ!」
左京君が笑顔でそんなことを言うもんだから、帝様に蹴りを入れられています。
「左京君、ありがとうございます。でも帝様以外の婚約者なんて考えられません。」
私が笑顔で言うと帝様に抱き締められました。
驚いたのと恥ずかしいのとで顔に熱が集まります。
「兄さん。麗ちゃんが真っ赤で可哀想だろ。」
すみません。抵抗出来ません。
好きな人に抱き締めらるなんて思ってませんでした。
頭がぐるぐるします。
私はそのまま意識を手放しました。
気がつくと家の自分のベッドに寝かされて居ました。
起きて部屋を出るとお祖父様の秘書の利津子さんがお祖父様が呼んでいると言いに来ました。
お祖父様の部屋のドアをノックすると直ぐにドアが開き私は中に入りました。
「お祖父様、麗、参りました。」
「大丈夫かい?」
「はい。」
「帝君が心配していた。」
ああ、申し訳無いことをしてしまいました。
帝様に心配させてしまうなんて。
「麗。お前は男に免疫が無さすぎるんじゃないか?」
「返す言葉もありません。」
お祖父様は柔らかく笑うと言いました。
「少し考えておく。下がりなさい。」
「はい。失礼します。」
私は頭を下げてから部屋を出ようとして止めました。
「お祖父様、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。」
お祖父様はクスクス笑います。
「麗。お前は本当に良い子だ。」
私はもう一度お祖父様に頭を下げて部屋を後にしました。
お祖父様は良い人。