天然
皆の心の嫁麗ちゃん。
その日のお昼休み。
ご飯を食べ終わり食堂で私は三木谷先輩の選んでくれた恋愛小説を読みながら、うっとりしていました。
「麗。そんなに面白いの?」
「読みますか?」
「え~面倒い。」
未来ちゃんはスマホをいじりながら言います。
「面白いのですよ。うっとりなんです。私もこんな胸キュンな恋がしたいです。」
私の言葉に未来ちゃんがスマホから視線を外して私を見ます。
「恋、したいの?」
「はい。」
「え?新宮は?」
私は驚いてしまいました。
迂闊なことを言ってしまったようです。
「今のは………なかった事に………」
「いやいやいやいや!無理でしょ!えっ?新宮の事好きじゃないの?」
「好きです!それだけは自信があります。」
私は速答しました。
それだけしか自信がありません。
「はは~ん。麗は胸キュンさせられたら結構簡単に落とせんじゃないの?」
「そんなに軽くありません。」
私が少しふくれて見せると未来ちゃんは優しげな笑顔を作ってくれます。
「なごむな~。」
「もう!からかわないで下さい。」
未来ちゃんのその笑顔、可愛いと思います。
「あー!麗がそんな可愛い顔するから麗の取り巻きの男子が悶えてんじゃん。」
未来ちゃんにそう言われ、回りを見ると食堂の丸テーブルに突っ伏してぷるぷる震える方が数人見えます。
なんだか怖いです。
「皆さん大丈夫ですか?」
テーブルに突っ伏している方々がビクッとします。
「ほっといてあげなよ!今、あいつらは麗と付き合えるかも知れないって夢を見てんだからさ!」
「私は帝様一筋です。」
「夢ぐらい見せてあげなよ!あいつら可哀想だろ!」
回りでシクシク声がする気がしますが、怖いので見ません。
なんだか良くわかりませんがごめんなさい。
「それより、転校生が新宮に付きまとってるって?一発ガツンと言ってやった方がいいんじゃないの?好きならさ!」
ガツンと言われてしまったって未来ちゃんが知ったら怒ってしまうでしょうね。
私は苦笑いしか作れませんでした。
その時でした。
肩を叩かれふりかえると、そこには帝様の弟の新宮左京君が居ました。
「左京君?どうしたの?」
「麗ちゃん、日曜日暇?陸上の試合があるんだ………来れる?」
左京君はたまにこう言った試合がある時話しかけてきます。
普段から無口なので応援のお誘いの時が一番喋っている気がします。
「お弁当を持って応援に行きますね!」
「ありがとう。場所はメールする。頑張る。」
左京君はそれだけ言って去っていきました。
未来ちゃんが大きく溜め息をつきます。
「あからさまに狙われてる。」
小さな小さな呟きでききとれません。
「未来ちゃん?」
「心配になるよ麗。」
「何がですか?」
「この天然め!」
未来ちゃんに怒られました。
私は天然じゃありませんよ!
試合の当日私は早起きしてお弁当を作りました。
「左京君頑張って下さいね。」
「うん。」
「僕も応援してる。」
「兄さんは呼んでない。」
応援に行くと帝様も居たので呼んだのだと思ってました。
「麗の友達が左京の試合に麗がお弁当作って来るっておしえてくれたから麗と一緒に応援しようと思ってさ!」
「兄さん要らない。」
「人の婚約者誘ってんじゃねえよ。」
何故か二人が睨み合います。
「左京君。そろそろ行った方が良いですよ!応援してます。」
「ありがとう麗ちゃん。頑張るから見ててね。」
左京君は嬉しそうに笑ってグランドの方へかけて行きました。
「………麗。最近僕のこと避けてない?」
「?」
「左京の事が好きになった?」
凄い誤解をされています。
「左京君の事は好きですが、帝様が一番です。それではダメですか?」
帝様は困った様な顔をしています。
「実は帝様もいらっしゃるんじゃないかと思って帝様のお好きな物も入れてるんですよ。」
私が笑いかけると帝様は嬉しそうに笑ってくれました。
「ありがとう麗。お弁当楽しみだな~!」
私の大好きな笑顔です。
今日はヒロイン様が居ないのですから帝様の横に居ても許してもらえるでしょうか?
私は少しだけ帝様に近づいて左京君を応援したのでした。
帝君敵が多すぎやしないかい?