ヒロイン様を初めて見ました。
まだまだ迷走中です。
「麗様!」
「麗様おはようございます!」
「麗様今日も美しい!」
私は皆さんに笑顔で手を振ります。
「皆さんおはようございます。」
「「麗様~!」」
皆さん私に挨拶してくれます。
有りがたいことです。
「麗!おはよう。今日は早いな!」
「帝様おはようございます。今朝は早く目が覚めてしまったので。」
まあ、嘘です。
帝様に会いたくて早起きしました。
帝様は剣道部の朝練のため早く学校に来ます。
私は自分の教室から剣道場の練習が見れるのに気が付いてからたまに早起きして帝様の勇姿を本を読むふりをしてチラ見するのです。
窓際の席は最高です。特等席です。
私だけの時間。
そのはずだったんです。
1ヶ月前
帝様のクラスに転校生が入りました。
名前は大空心美栗色の肩までのボブヘアーで茶色の瞳はくりっと大きく身長は小柄で160㎝の私より小さい。
少しどじっ子らしく、素敵なムードメーカーになりつつあるらしいです。
彼女の笑顔を例えるならば向日葵。
私の想像通りのヒロイン。
しかも転校生。
ベタな定番だけど帝様の隣の席で解らないことがあれば帝様に頼っているのだと、帝様のクラスの女子がわざわざ教えに来てくれました。
うん。ライバルキャラにありがちな展開に何だかワクワクすら感じてしまったのは内緒です。
ですが、私がなるのはライバルキャラであって悪役令嬢ではないので帝様のクラスの女子には笑顔でこう言っておきました。
「帝様が心細い転校生を放っておける訳が無いのです。大丈夫。私は帝様を信じてますから。貴女方も彼女に優しくしてあげて下さいね。皆さんが仲良くなってくだされば帝様も喜んでくれると思います。」
見栄を張りました。
本当はそんな怖い話聞きたくなかったです。
でも、私の名前と共に帝様の株が上がれば嬉しいです。
帝様はこれからヒロイン様に恋に落ちるのですね。
私は帝様のために笑って婚約破棄が出来るでしょうか?
そんなここ最近の出来事を思い出してボーッとしてしまいました。
「麗!」
剣道場の方から聞こえた帝様の声に驚いて声の方を見ると帝様が私に手を振ってくれています。
傍らにはヒロイン様が居て私に手を振る帝様にショックをうけた顔をしています。
私はなるべく優雅に見えるように小さく手を振り替えしました。
帝様に嫌われたくはありません。
「麗!今日の放課後部活が無いから一緒に帰ろう!」
帝様は嬉しそうに笑います。
良いのでしょうか?ヒロイン様が泣きそうに見えます。
「み、帝様。申し訳ございません。今日は伯父様が迎えに来るみたいなので………」
私の伯父様は私を溺愛しています。
ですので帝様との婚約も反対している方です。
帝様の誘いを断るなんて罰当たり以外の何者でもありませんが、ヒロイン様が可哀想に見えてしまいました。
私は後でトイレに引きこもって伯父様にメールを打つことを決めました。
だって伯父様が来る予定が無いのですから。
伯父様の事です、日本に居なくても車だけでも回してくれるはずです。
帝様は深く溜め息を吐き出すと苦笑いを浮かべた。
「君の伯父上はタイミングが良すぎやしないかい?」
「申し訳ございません。伯父様も外国に居ることの方が多いのでなかなか会えないと帰って来る度に………」
「先週も帰っていたよね?先々週も、その前は土日で君と旅行に行ってたんじゃなかったかな?」
苦笑いが何だか怖いです帝様。
「伯父様も寂しいのです。許してあげてください。」
伯父様が30歳だと言うのも帝様が心配してくれる理由なんだそうです。
私の伯父様は藤沢匠イケメン実業家、実は私のお祖父様の隠し子だと言われてますが、養子縁組しただけの赤の他人様です。
能力のある人間に後を継がせたいってお祖父様のお眼鏡にかなった能力者である。
伯父様は私が産まれた時にはうちに居ましたから私を妹のように可愛がってくれています。
少し過剰だと感じる時もありますが………
さすがに露天風呂一緒に入るのは無理です。
貸切りとか関係無いです。
水着着用しても一緒は躊躇われます。
いや、入っちゃいましたけど…………
帝様には内緒にしています。
きっと怒られます。
「君に伯父様禁止令を出したいよ。」
帝様の声は小さく良く聞こえませんでした。
「帝様?」
「たまには僕を優先してくれても良くないかい?」
私は苦笑いを浮かべた。
「無理ではないでしょうか?」
「………だね。」
ええ、伯父様には逆らえません。
コメントなどなど欲しいです。