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end。

帝様が動き出します。

目が覚めると保健室でした。

「こーずちゃんはよく倒れるわね。」

「紫音先生。ご迷惑をおかけしました。」

紫音先生は優しい笑顔で私の頭を撫でてくれました。

「帰る?親御さん呼ぼうか?」

「いえ、大丈夫です。」

私は笑顔を作り教室に戻ることにしました。

頭の中ではヒロイン様がヒロイン様でなかったのかが、良く解らないまましこりのように残っています。

もしかしたら家の繋がりや家の影響で私と婚約関係を築いているのでしたら私はなにも言わずにこの婚約関係に甘えても良いのでしょうか?

私の出来る事を必死でやって、帝様を幸せにして差し上げるのが私の出来る精一杯なのかも知れません。

私はそんなことを思いながら教室に戻りました。



お昼休み、何時ものように未来ちゃんと柚君とお弁当を食べました。

喧嘩にならないように今日は未来ちゃんの分も作ってきました。

「麗!私のとこに嫁に来て良いよ!」

「ありがとうございます!遠慮します。」

未来ちゃんとクスクス笑ってしまいました。

その時でした。

ヒロイン様が私のところにやって来ました。

「神津さん!」

とても大きな声に私も驚きましたが、食堂に居る皆様の視線も集めてしまっています。

「神津さんにお願いがあります!帝君を解放してあげてください。帝君を家柄なんてもので縛り付けないで!」

ヒロイン様の言葉に息が詰まりそうになります。

「親の決めた婚約者なんてそんなものに捕らわれて帝君が幸せになれるの?貴女は帝君の気持ちなんてどうでも良いの?貴女は幸せになれるの?」

私は苦しくて泣きたくなりました。

ヒロイン様のように私は自分の恥や外聞もなく帝様のために何が出来たでしょうか?

婚約者と言う立場に甘えて、このまま帝様と一緒になっても良いとさえ思ってしまった。

傲慢な女です。

私はどう言葉にしたら良いのか解らなくて声が出ませんでした。

「何とか言ってよ!」

ヒロイン様の声が食堂に響き渡りました。

「いい加減にしろ!」

そこで今まで聞いたことのないほどの怒気をはらんだ声がその場を凍り付かせたのが解りました。

声の方を見るとそこには帝様が立っていました。

「うぁ、みかん兄さんを本気で怒らせたよ。どんだけ空気読めないんだよ。」

隣で柚君のドン引きした声がします。

「誰が麗にそんな事いってくれって言った?」

「だって、帝君。」

帝様は私に少し困ったような笑顔を作るとヒロイン様を睨み付けます。

「麗が俺をしばってんじゃない。僕が麗を家柄で縛り付けてるんだよ。僕が麗の婚約者になるためにどんだけ頑張ったか君は知らないだろ?」

帝様の言葉に私は驚きました。

言ってる意味が解りません。

「麗に初めて会った時一目惚れだった。だから、必死で麗のじいさんに頼み込んで今の地位を手に入れたんだ!ガキでしかない俺の言う事を未だに疑っている麗の叔父上は未だに許してくれていない。そんな危うい関係なんだ。余計なことをして僕が麗を手に入れられなかったらどうしてくれる。」

は、初耳です。

私はずっとお祖父様が取り付けてきた婚約話だと思っていました。

「僕が頑張れているのは、麗の隣に相応しくあるためだけだ。麗が僕以外の男なんか見向きもしなければ良いって思ってる。」

帝様は私を見ると私に近付いて来て言いました。

「ごめんね麗。僕が痛いやつで。でも、麗を手放す気は無いから覚悟してね。」

帝様の言葉に涙が溢れました。

私の方こそ、そんなこととは知らずにヒロイン様が帝様にふさわしいと思い込んで身を引こうと考えていました。

私の方が痛いやつです。

私の瞳からポロポロと流れる涙を帝様が笑顔で拭ってくれました。

「やっぱり、みかん兄さんは麗姉さんが一番だよね。そうじゃないと。僕の大好きな二人はそうでないと困るよ。」

柚君はなんだか嬉しそうに笑います。

「柚、お前、面白がってただろ?」

「僕より、じいちゃんが面白がってた気がするかな?」

帝様はその言葉に深い溜め息を吐き出しました。

「僕はお前らのじいさんが苦手だ。」

私と柚君はクスクス笑ってしまいました。

「じいちゃん面白い人なんだけどな~!」

「いい人ですよ。」

私達の反応に帝様は柔らかい笑顔を作ってくれました。

「解ってるよ!麗のじいさんだからな。」

私は嬉しくなって帝様に抱き付きました。

帝様は私が幸せにします。

帝様が私を幸せにしてくれるのと同じように。


完璧にヒロイン様を無視してしまいました。

柚君はヒロイン様の真横のテーブルに飛び乗ると言いました。

「君まだいたの?空気読めないからはけるタイミングも解んなかった?みかん兄さんがほのぼのしてる間に居なくなった方が身のためだよ!みかん兄さん僕よりドSで毒舌だよ!心ポッキリ折られたくなかったら早く逃げな。」

柚君の笑顔にヒロイン様は真っ青になり逃げていきました。

「ドSで毒舌ではない!」

帝様が少しふくれて見せます。

可愛らしく思います。

「………僕はみかん兄さんにポッキリ心折られた事あるよ!二度とみかん兄さんだけは敵にしないって誓ったんだから。じゃなかったら、麗姉さんとの婚約なんて許すわけないじゃん!大事にしてもらわないと困るよ。」

私は少しだけ困りながら言いました。

「柚君降りなさい。そこはご飯を食べる所ですよ!」

私の言葉に柚君はケラケラと笑います。

その時帝様が私に言いました。

「麗。僕の事嫌いになったかな?もう、婚約者は嫌かな?」

帝様は不安そうに私を見つめます。

「嫌だなんて。………」

私は可愛くない言葉を吐き出そうとして口を閉じました。

「麗?」

私が帝様の制服の袖を引くと帝様は身をかがめて耳を私にむけます。

私は帝の耳と自分口をてで作った筒でつなぎます。

「私は帝様が大好きです。だから、婚約者で居たいのです。駄目、ですか?」

手を放すと帝様は耳まで真っ赤で、顔を両手でおおうとしゃがんでしまいました。

「み、帝様!大丈夫ですか?私は変なことを言ってしまいましたか?」

帝様は手を顔から外すと私を見上げます!

「もっかい言ってもらってもいいかい?」

「だめ、ですか?」

「それも可愛いんだけど、最初の方。」

どうやら帝様は私に好きだと言わせたいようです。

私は帝様の横にしゃがむと帝様の顔をのぞき込みました。

「帝様は言ってくださらないのですか?」

「えっ!」

「私だけなんて、嫌いになっちゃいますよ。」

今のは可愛くなかったかも知れません。

帝様の顔が驚きに変わりました。

そして、顔が近づいたと思った時には帝様の唇で自分の唇がふさがれていました。

それがゆっくりとはなれた瞬間。

「麗が好きだよ。愛してるんだ!僕のもので居てくれる?」

私は嬉しくて恥ずかしくて幸せで、こんなに幸せで私は死んでしまうんじゃないでしょうか?

それが本当なら私がヒロインで良いのですよね!

私は幸せに包まれて意識を手放しました。


この世界のヒロインはどうやら私だったようです。



end

日間ランキング一位にさせてくださった皆々様ありがとうございます!

皆様のおかげで、こんなに早く終わることができました。


スペック高いのに、ちょっと痛いネガティブ厨二病の主人公の麗ちゃん。

主人公が信じて疑わなかった空気の読めないバカ女のひまわりヒロイン心美ちゃん。

実は腹黒帝君。

彼女達の勘違いやすれ違いや思い込みの話でした。


少しだけ匂わせていた、未来ちゃんと柚君の話も書こうかと思ったり思わなかったり………


今まで読んでくださりありがとうございました!

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