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ヒロインじゃ無いのですか?

もう!ヒロイン~!

あの日以来、私は剣道部の朝練に行って居ませんでした。

「「「お願いします!朝練に顔を出してください!」」」

剣道部の部員さん数人にそう言われてしまいました。

「それは、大空さんって事でしょうか?」

「「「はい!」」」

何をやっているのでしょうかヒロイン様は?

「解りました。明日から顔を出させていただきますね。」

私の理想のヒロイン様なはずなのに、おかしいです。

どじっ子だけど明るく元気でひまわりの様に皆さんをほんわかさせるヒロイン様だと思って来ましたが、少し空気を読めないのがたまに傷のようです。



翌日私は剣道部の朝練に顔を出しました。

皆さまのためにお握りを握ってきましたが食べていただけるでしょうか?

「おはようございます。」

剣道場には帝様より早くついてしまったようです。

「「おはようございます麗様!」」

数人の剣道部員さん達が挨拶を返してくださいます。

そんな部員さん達に差し入れの入った紙袋を手渡します。

「差し入れにお握りを握ってきたのですが、良かったらどうぞ。中味はサケに梅にシーチキンに昆布です。梅だけは赤色のシールをつけましたから解ると思います。」

私はそこまで言って拒否されたらと怖くなりました。

「「………い、良いんですか?帝先輩だけじゃないんですか?」」

「たくさんありますから皆様で召し上がってただけたら嬉しいです。」

私が笑顔を作ると後ろから肩を叩かれました。

「おはよう麗。なに?差し入れ?」

「は、はい、お握りを握ってきました。迷惑なら持って帰ります。」

また、可愛くない言葉が飛び出します。

「迷惑じゃないよ。それに、こいつらの顔はお握りに餓えている顔だ。」

部員さん達は私の持ってきたお握りの袋を自分達の後ろに隠しています。

「取り上げたりしませんよ!どうぞ召し上がってください。」

私はクスクス笑ってしまいました。

「「ありがとうございます!」」

部員さん達は嬉しそうです。

「おはよう!帝君!」

そこにヒロイン様が登場です。

「………神津さんも来たんだ!」

「大空さん、おはようございます。」

私は笑顔でヒロイン様に挨拶しましたが、挨拶は返ってきませんでした。

「そんなことより、今日も差し入れを持ってきたの!レモンの蜂蜜漬け!帝君どうぞ!」

ヒロイン様はグイグイ帝様にレモンの蜂蜜漬けを押し付けます。

多分帝様のためだけに作られたそれを私は掴みました。

帝様のピンチです。

帝様は酸っぱい物が苦手です。

いくら蜂蜜に漬けていてもレモンは食べません。

もう、良いです悪役令嬢だと思われても良いです。

「帝様にそのような物を差し上げるのは止めて下さい!」

「なんでですか?好きな人の疲れを癒したいと思って何が悪いの?」

悪くありません。

むしろ微笑ましいです。

ですが、嫌いな物を食べなくてはいけない苦行を見るより何倍も良いです。

「麗。ありがとう。大空、悪いな!僕はレモンが嫌いなんだ。それと、僕を好きだからしているなら止めてくれ、僕は麗の婚約者だから麗に勘違いされたくない。」

な、なんと言う事を!

帝様は私を抱き締め微笑みます。

ヒロイン様はヒロインじゃ無いのですか?

それとも、私の家柄のせいで帝様は私の婚約者でいようとしているのですか?

頭がぐるぐるします。

私はそのまま意識を手放しました。

もう少し続けたい気持ちもありますが、次終わります。

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