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地に堕ちる  作者: 晴香
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誕生日

出逢いは授業だった。その授業は3年生の前期では他の科目と重なっていたために後期だけ履修した。2グループに分かれてディスカッションを繰り返し、研究成果を発表するというだけの自由な授業だった。彼と私は違うグループに分かれていたので、1度だけ合同で行った作業時間に一言か二言話しただけだ。何を話したかすら覚えてはいないし、今となっては一言だったのか二言だったのか、そもそも話したかどうかすらあやふやなくらいだ。無事に最後の授業が終わり春休みに入る。この授業で出会った人たちとはもう会うことすらないかもしれないし、校内で会っても気付かない、もしくは気づいても話しかけることすらないのだろう。それに対して特に思うこともなければ、ただ授業を終えた安堵感に私は浸っていた。一ヶ月後、私はオーストラリアに行く。去年から夢だった資格を取れる。そのことに想いを馳せていた。

オーストラリアに着いてからバスに乗って移動した。それぞれ話したり寝ている者もいる。2つの大学を合わせて15人ほどだろうか。もちろん知っている者はいない。隣に座った女の子と話しはじめる。話題は女の子らしく恋愛のことについてだ。2年ほど付き合った彼に振られたと話す彼女。今は彼女がいる男の子を好きだという。私自身、不倫の経験があったので、話はすぐに合った。どうして男というものは浮気をするのか。どうして自分が一番にはなれないのか。そんなことをとりとめもなく話していると学校に着いた。これから4週間をここで過ごすことになる。彼らは同じ資格を取得する仲間たちだ。移動が全く違った大学生や一般のワーキングホリデー生もいて総勢20名。目的は各自違うにしろ、仲間がこれだけ居るのは私を心強くさせた。

4週間はあっという間に過ぎ去った。土日の休みには必ず観光地へと足を運んだ。一人でも行きたいところがあれば行った。むしろ私には単独行動が向いている。誰かと一緒だと必ず気を遣って疲れてしまい、思う存分楽しむことも感じることもできない。学校を卒業し、2週間の実習を残すのみとなった。

バスで話した彼女、まなみちゃんとはこの4週間で一気に距離が縮まった。放課後はほとんど一緒に過ごし、毎日お互いの恋愛について話した。この4週間で私には大きな変化があった。ずるずると関係を断ち切れずにいた不倫の彼とさよならをしたのだ。別れはあっけないものだった。単に寂しさが大きくて一緒に居ただけだったので、別れを告げても特に心が揺れることもなかった。むしろ、ようやくけじめをつけられたことで私は清々していた。22歳の誕生日もここで迎えた。ホストファミリーと湖畔でキャンプをして祝ってもらった。電波のない自然だけの場所。一日中、散歩や昼寝、読書をして、ときには歌って過ごした。丸二日もメイクをしなかったのなんていつぶりだろうか。こんな風にここで誕生日を迎えたことに私は22歳が何か特別な意味をもたらすことを予感してわくわくしていた。きっと特別な一年になる。どんな特別かは分からないけど、私の人生においてきっと忘れられい一年になる。というよりは、そうなって欲しかった。


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