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ベリーと魔法と適性

フレッドが精霊さんを見えるようになって10日。

私たちは毎日森へ遊びに行った。

見えるきっかけとなった場所である泉のほとりで遊ぶことが多かったけれど、精霊さんが食べごろだと教えてくれたので、ここ5日ほどベリーを摘みに行っている。

午前中籠いっぱいに摘んだベリーを森のお城へ持って帰り、お昼ご飯の後にジャムにしてもらう。

ジャムを作ったら瓶に詰めて、またベリーを摘みに行く。

午後摘んだベリーは夕食や朝食のデザートになった。


今日もきっとそんな風にして過ごすのだろうと思って森へ行く。

精霊さんたちが連れて行ってくれたベリーの木は昨日までと違う場所、いつもよりも少し森を奥に入ったところにあった。

昨日まで摘んでいたベリーとは少し違う、粒もほんの少し大きくて、妙に光っているというか、内側から何かを放っているというか不思議な感じがした。

精霊さんたちも勧めるので、たくさん摘んだ。

あっという間に籠いっぱいになったので、大人たちのところに持っていくと、みんなびっくりしていた。

「リンガルベリー?こんなにいっぱい?よく見つけたね。」

「森の精霊さん達がお教えてくれたのよ!」

大人たちが驚いていたのが嬉しくて、私は胸を張って答えた。

「これはすごいわ…さっそく加工しましょう。」

私たちの今日摘んだベリーは昨日まで摘んでいたベリーとは全然違うものだったらしい。

リンガルベリーというもので、そのベリーを食べると、知らない言葉を使う人たちとでもおはなしできるらしい。

私はよくわからなかったけれど、フレッドは興味があるようで、説明してくれたローランおじ様のお話を真剣に聞いていた。

お話しの途中でリンガルベリーを一粒食べて、フレッドはすごく嬉しそうなびっくりした顔をしていた。

私もお話しを聞きながら食べたけれど、さっぱり意味が分からなかった。

なんにも変わらなかったし、おじ様はただ話を続けているだけだった。

私の考えていることが分かったのか、おじ様は笑いながら教えてくれた。

「リラにはわからなくても仕方ないよ。フレッドはエルフの言葉を知らなかったから効果があったんだ。エルフの言葉で話している途中でベリーを食べてもらう、するとね、初めは何を言っているかわからなかったエルフの言葉が、食べた途端、何を話しているかわかるようになったんだからね。でもリラは、リラ自身は気づいていないみたいだけど、人間の言葉、エムロードゥ王国で使われている言葉だけじゃなくてエルフの言葉も知っていて普段から使っているんだよ。どちらの言葉も知ってたら食べても何も変わらないからね。リラみたいに頭の上にクエスチョンマークがいっぱいになるものだよ。」

クエスチョンマークが頭の上にいっぱいとか意味が分からなかったけど、何となくおじ様の言いたいことはわかった。

そういえば、みんなおうちにいる時と、緑の森(フォレ・ベール)にいるときとお話しする言葉が違うと言われるとそんな気もする。

精霊さんに話しかけるときも、森の言葉の方が分かってもらえるみたいだからそっちを使っていた気もする。


「さぁ、あなたたちこのベリーはまだたくさんあるかしら?あるならもっと摘んでおきたいんだけど案内してくれるかしら?」

ベリーの加工はお母様がして、ジュリエッタさんとローランおじ様も一緒に摘みに行くことになった。

ベリーの木までの道順はさっき教えてくれた精霊さんにまた教えてもらった。

「リラって、時々よくわからない独り言…というか歌みたいなの歌ってると思ったら、精霊さんにエルフの言葉で話しかけてたんだね。」

フレッドに言われて改めて気づいたけど、やっぱり精霊さんにはエルフの言葉で話しかけてたらしい。

歌を歌ってるつもりはなかったんだけど、フレッド以外のみんなにもそういう風に聞こえてたみたい。

おじ様だけは、妙に納得したような顔をしていた。

やっぱり大人が一緒だと摘むのが早い。

2人で摘んだ量なんてあっという間だった、それどころか残っていたベリーをすべて摘み終わるのにはそう時間はかからなかった。

摘んだベリーを持ってお母様達の待つ森のお城に帰ると、今度は私とフレッドもお手伝いをすることになった。

リンガルベリーのシロップを作るんだって。

ベリーのシロップは、お水やシュワシュワするガス入りの湧水で割って飲むとおいしい。

リンガルベリーで作っても絶対おいしいと思う。


私とフレッドの前に樽が用意される。

樽に摘んできたベリーを入れる。

「洗ってごらん。」

そんなこと言われてもここにはお水がないのに・・・ローランおじ様のいじわる!

「両手でお水をすくうときのようにして、イメージしてこらん?お水が手から溢れて樽に注がれる。それからお水がたまったらクルクル優しくかき混ぜる。汚れが浮いたらお水を流して…これを2回繰り返すんだよ。」

集中する。

私の両手から樽にお水が注がれて…


本当に水が手から溢れた。

隣を見ると、フレッドの樽にも水が注がれている。

右手を軽くクルクルと回す。

ベリーもクルクル回り出す。

両手でお水をこぼすように動かすと樽の中のお水がなくなって、ベリーがキラキラ輝いていた。


「もう一回洗ってごらん?」

もう一度やってみる。

手に意識を集中させる。

きれいなお水が手から溢れ、樽に注がれ、優しくかき混ぜ、お水を流す。

「二人とも良くできたね。でもまさか初めてで二人がうまくいくなんて思ってもいなかったよ。」

フレッドの顔を見ると、すごい笑顔で私の顔を見ていた。

私も一番の笑顔を返す。

「じゃあ、今度は風の精霊にお願いして、ベリーを洗ったお水を乾かそうか。洗った時のお水が残っていると美味しいシロップにならないからね。」

私はいつも精霊さんにお願いするようにお願いした。

みんなが歌ってるみたいっていうけれど、歌ってるつもりはなくって、精霊さんが聞き取りやすいようにと思う話し方をしているだけなんだけど。

すぐに風の精霊さんがお友達をたくさん連れてやってきてくれた。

あっという間に私の樽の中のベリーは水気をふき取ったように水滴がなくなっていた。

フレッドの方はというと、風の精霊さんが頑張ってくれて入るんだけど、人数が少ないせいかなかなか大変そうだ。

私の樽を乾かしてくれた子たちに手伝うようにお願いすると、あっという間に水滴がなくなった。

「リラ、ありがとう!リラの呼んだ子たちが手伝ってくれたんだろう?」

フレッドにもちゃんと見えてわかってもらえたのが嬉しくて、ニコっと微笑んでみた。

「まさかこっちもできるとはねぇ…リラは出来たとしても、フレッドはまだ見えるようになって日が浅いから無理だと思ってたんだけど、精霊もちゃんと頑張ってくれたよね。最後はリラが手伝ったとはいえ上出来だよ。」

フレッドも素直に喜んでたみたいだ。

それからおうちに帰ったんだけど、普段はお城でサヨナラする王様も一緒にうちに来たし、おうちにはわたしのおじい様とおばあ様、お父様、それからフレッドのおばあ様も遊びに来ていて、みんなで夕ご飯を食べた。






その日の晩。

「リラもフレッドもぐっすり眠っているわ。」

「あれだけのことをしたのだ。疲れないわけがなかろう。」

ここに集まったのはリラの両親 ―父ジェラールとマルグリット、母方の祖父母―祖父テオドールと祖母フローレンス、叔父のローラン、リラの大叔父に当たるエルフの王アルフレッド、フレデリックの母ジュリエッタ、祖母ヴィクトリーヌの8人である。

リラ・フローレンス・シャルロワと、フレデリック・カミーユ・ガルニエの今後の教育についての話し合いの場が設けられたのだ。

「今回、私とフレデリックがこちらに滞在させてもらっている理由については皆様ご存知ですわね。マルグリットにより、フレデリックは精霊の加護を受けています。精霊との親和性を高めること、精霊魔法の適性について確認するためです。」

フレデリックの母ジュリエッタがそう切り出した。

「それから、リラの魔法の適性をジュリエッタに確認してもらう事、そのこともあってこちらまで来ていただいてます。」

リラの母マルグリットが補足した。

「今までのリラの状況ですが、森で赤ん坊のころからほぼ毎日過ごしているせいか、精霊との親和性が非常に高いだけでなく、精霊魔法について本人は自覚なく使っていることも時々見受けられますし、本日も当たり前のように使いこなしていました。最近は精霊の波長に合わせたエルフ語を精霊に対して普通に話しています。この頃は大分エルフ語とエムロードゥ語の区別および使い分けができるようになってはいますがまだ入り混じることが多いので、語学について今後学ぶべきだと考えています。

それから、治癒・回復系統の魔法はまだ使えてはいませんが、素質はあるように思います。簡単な治癒であれば今後1年のうちに習得するでしょう。」

リラの叔父のローレンが説明した。

「フレデリックですが、今まで魔法を一切教えていませんでした。多少魔力があることは分かっていたのですが、こちらに来て一気に増えています。来る前の10倍以上になっているようです。この短期間で増えているので、今後も増えると思われます。正直、息子には魔法の適性すらないのではないかと思っていたもので…嬉しい反面戸惑っています。

そして、精霊も思っていたよりもすんなり見えるようになったようです。」

ジュリエッタも説明した。

「それで、今日何があったんだい?」

「私たちを呼んだってことは何かあったからなんでしょう?」

フレデリックの祖母ヴィクトリーヌとリラの祖母フローレンスがほぼ同時に問いかけた。

「リラとフレデリックがリンガルベリーを摘んできたのだよ。」

フローレンスの兄でエルフの王アルフレッドが答えた。

「リンガルベリーは特殊なベリーだ。めったに見つかるものでもない。しかも摘み取るときにベリーの魔力を感じ、自らの魔力を込めながら摘まなければただのベリーになってしまう。その場所を精霊が教えたことがまず驚くべきことであるし、摘み取り方を知らないはずの子供が適切な摘み方をしてたくさん持ち帰っている。1粒として効力が失われているものがなかったばかりか、再度ローランとレディ・ガルニエと共に摘みに行かせたが、やはりきちんと魔力を込めて摘み取ることができている。子どもの魔力で魔力不足になることもなくかなりの量をだ、それどころか戻ってから簡単な水系魔法 ―ベリーを洗わせたんだが二人とも初めてだったにもかかわらず、あっさりこなすではないか。その後、風の精霊魔法までこなしておる。フレデリックはリラの助けを借りたとはいえ、幾人かの精霊はフレデリックの命令を受けてしたがっておるのだ。まだ精霊が見えて10日ほどの子だ。」

アルフレッドの説明に、ヴィクトリーヌとフローレンスが固まる。

「それで呼ばれたわけかい。」

「私たちがどうにかする必要があるわね。」

状況を理解した2人はそういうとニヤリと笑った。

リンガルベリーの効果のイメージは某国民的アニメの『翻訳こ○にゃく』です。

※誤字修正いたしました。

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