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緑の森へ

昨日できた私の初めてのお友達。

今日はフレッドもフレッドのお母様のジュリエッタさんも一緒に緑の森(フォレ・ヴェール)へ行くことになっている。

私のおばあ様の勧めで、とジュリエッタさんは言っていた。


朝食後、いつものように支度を終えて虹色の扉の前で待っていると、フレッドがそわそわしながらやってきた。

「リラは毎日緑の森に行くの?」

「ううん、毎日じゃないわ。お父様がお休みでこちらに遊びに来た日は行かないもの。」

「お休みの日以外行ってるってこと?それってほとんど毎日だよ。いつも何してるの?」

「えーっと、お母様がお薬作るお手伝いしたり、薬草摘みに行ったり、絵本読んでもらったり、一人で遊んだり、精霊さんたちと遊んだりかな? 時々大人とも遊んでもらうし、よくわからないけど、何かの練習もしてるよ。おててをお皿みたいにして、なにか暖かいものを作るの。うまくいくとちょっぴりだけ光るらしいんだけど、まだ一度もできたことないよ。」

ふーん、と返事をしたら考え事を始めたのかフレッドは黙ってしまった。


それからすぐにお母様たちが来て、私がドアを開けてみんなで出かけた。

ドアを開けると、若葉のトンネル。

今はやや濃いめの若草色のトンネルだけど、だんだん緑が濃くなって、秋には紅葉の赤や黄色やオレンジや茶色のトンネルに代わり、冬には枝を編み込んだようになる。

そんなトンネルを抜けたら森のお城のお庭に出る。

お庭には、お仕事中のローランおじ様がエルフの王様 ―私のおばあ様のお兄様らしい― のアルフレッド様と一緒に待っていた。

「ようこそ、レディ・ガルニエ、そしてご子息。我々はお二人を歓迎いたします。」 

「ご無沙汰しております。アルフレッド陛下。この度はこのような場を設けてくださって大変感謝しております。」

大人たちが挨拶をした後、フレッドが自己紹介をした。

その後は大人だけで難しそうな話をはじめたので、私はフレッドを連れて私の自由にうろうろしていい場所テリトリーを案内した。

いつも私が遊んでるお庭とか、水の精霊がたくさんいる泉とか、時々お昼寝する木陰とか。

わたしもフレッドも疲れたので、一通り案内した後泉のほとりで休むことにした。

のどが渇いていたので、水の精霊さんにお願いしてお水を分けてもらう。

断りなく勝手に飲むよりも、そうした方がお水がおいしくて、両手ですくって飲んでも指の間からお水がこぼれない。

フレッドも私の真似してお水を分けてもらってた。

フレッドは気づいていなかったけれど、精霊さんたちはうれしそうに、『どうぞどうぞ』といった感じでうんうん頷いていた。

「なにこれ…すっごくおいしい。」

フレッドが驚いた様子でつぶやいたら、精霊さんたちはさっきよりずっと嬉しそうに、フレッドの周りを飛び回っていた。

フレッドといつも一緒にいる子たちとハイタッチまでしていたので、私は思わず笑ってしまった。

「僕、なにかおかしなことした?」

ちょっぴりだけどフレッドを怒らせちゃったみたいなので、見たままを教えたらやっぱり見えないことが残念だったみたいでしょんぼりしていた。


私が精霊さんの姿を見ることができるようになったのはいつだったんだろう?

いつなのか覚えていないというか、当たり前のように見ようと思えば見えていたから、何をしたら見えるとか教えようにも教えられそうにない。

いつもは、意識していない状態だと、なんだかキラキラしていて…キラキラしてるなぁ…と思ったら瞬きしたりして、焦点を合わせる感じなんだけど…。

……ということは、まず、キラキラが見えるようになればいいってことだよね!

少しでもお友達(フレッド)の役に立てそうだと思ったら気分もすっきりして体が軽くなった。

ここは水の精霊さんがたくさんいる泉だから練習するにはぴったりだし、さっきフレッドのお願いも聞いてくれた子たちだからきっと見えやすいはず!!


私がいろいろ言うと意識しちゃってよくない気がしたから、特に何も言わないことにする。

ぼーーーっと眺める。眺める。眺める。

あれ?なんだかだんだん眠くなってきた。

精霊さんたちが子守歌を歌ってくれてる気がする。


私は眠ってしまった。

目が覚めるとまたおうちだった。





次の日もまたフレッドたちも一緒に森へ行った。

大人たちはまた昨日と同じように大人だけでいろいろ話していたので、私はフレッドと一緒に遊んだ。

なるべく精霊さんたちのたくさんいるところに行って、のんびり過ごした。

今日もここの精霊さんたちはフレッドとフレッドといつも一緒にいる子たちにとっても友好的だし、昨日よりも私たちの近くに来てくれる精霊さんは増えている。

けれども、フレッドにはまだ見えないみたい。


その次の日もやっぱり一緒に森に行った。

今日は、着くと直ぐに大人たちと一緒に薬草を摘みに行った。

薬草は独特のにおいがする。

フレッドは慣れていないせいか苦手だったみたいで、手に付いた匂いを気にしていた。

お昼ご飯はまたサンドイッチだったんだけど、サンドイッチが薬草風味になったらしくとても複雑な顔をしていた。

「このサンドイッチ、なんだか苦い気がする…」

そんなお昼を済ませたら、遊んでおいでと言われたので、二人で泉のほとりへ行った。

今日もたくさん精霊さんがいる。

「リラ、ここってこの間水飲ませてもらった泉だよね?今日はなんか昨日とか一昨日と違う感じがするよ…なんだろう?眩しいっていうか、キラキラしてる?」

「!!!!!!」

私はすごく嬉しくなって、フレッドの手を握ってブンブン振り回しちゃった。

「?????!」

フレッドは訳も分からず驚いて…ここまで来たら、もう言ってもいい気がする!!

「あのね、そのキラキラ、精霊さんなの!!」

「そうなの?!…そういわれると、泉だけじゃなくて、リラと僕のまわりもキラキラだね。」

「いつも普通にしてる時、見ようと思わないと精霊さんってキラキラなの。でもね、目をぱちぱちしたり、見たいと思ってじっと見ると、だんだん精霊さんが見えるようになるの!!なんだろう?目に力を入れるみたいな感じ?遠くを見ていたんだけど急に近くを見る感じ?うまく言えないけれど、目の使い方を変えるの。大人は『焦点を合わせて』っていうの。それと、キラキラもいろんな色のキラキラでしょ?ここは泉のほとりだから青いキラキラ…水の精霊さんがたくさんいるんだけど、フレッドのまわりは淡い緑のキラキラ…風の精霊さんがいつも守ってくれてるよ。私のまわりは、水と風の子のほかに、緑の森の精霊さんと、白い光の精霊さんがいるの。」

「ちょっと待って………」

そう言って、フレッドは瞬きしたり、ギュッと目を瞑ってみたり、真剣に焦点を合わせようと頑張っていたけれど、なかなか見えないようで、しばらく繰り返したあと、諦めて寝転んだ…と思ったら急に起き上がってこの数日で一番いい笑顔になった。

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…」

大きく見開いた瞳はキラキラ輝いている。

まるで精霊さんのキラキラが瞳に映って反射してるみたいだ。

実際そうなのかもしれない。

お友達と同じ景色を、精霊さんたちを見ることができるってなんてすばらしいんだろう。

喜んでるフレッドを見ていたら、わたしもすごくすごく嬉しくて、気づいたらぴょんぴょん飛び跳ねていた。

「リラ、すごいよ、本当にこんなにたくさんここには精霊さんがいたんだね!なんで今まで見えなかったんだろう、こんなにこんなにきれいなのに。ありがとう!リラのおかげで見えるようになったよ!精霊さんたちもありがとう!いつも僕のそばにいてくれて。これからもよろしくね、仲よくしてね!」

あまりの嬉しさに、気づかないうちに私たちは抱き合って喜んでたみたい。

キャーキャー騒ぎながらぴょんぴょん飛び跳ねて、ハグして…気づいたら私たちのまわりには大人たちが集まっていた。

「フレッドにも精霊さんが見えるようになったの!」

私がそういうと、大人たちはにこにこしながらうんうんと頷いてた。

フレッドを見ると、真っ赤な顔して固まってた。

ごめん、ぎゅってハグしたままで苦しかったんだね…。

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