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第五章―01
第五章 嘘に包まれた真実
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『死者の館』の夜明けが近かった。
東の空がうっすらと白んで、水平線から太陽が昇ってくる。『死者の館』の外壁はその光を受けて、さながら鏡のように輝く。恐ろしい夜の終わりは同時に、彼に殺人の終焉をも告げていた。
朝日に目を細め、血に塗れたこの数日間のことを思い出す。
この館に集った、無価値の死者たち。無価値の饗宴。無価値の殺戮。
暗がりの道の果てに、彼はその目的を見出せたのだろうか。
無価値の者の殺人を重ねて、有価値を得ることは出来たのだろうか。
太陽が、彼の目を痛いほどに刺してくる。
まぶしくて、目を開けていられない。
夜の終焉、朝の始まりは一体、何を意味するというのか。
彼は霧のように満ちてくる不穏な気配に、静かに身を震わせた。
――下巻につづく
(霧山朽葉『死者の館(上)』より抜粋)