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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

猫になりたい

作者: 唯優 ゆい

ーーー猫になりたい。


そう心の中で呟いて私は夢の世界へと旅だった。



百回目の呟き。それを続けて何日が過ぎ去っただろうか?


百日……かな?



百日目の百回目のお願い事。


ーーー猫になりたい。
















そして、朝になった。


まばゆい光を全身に浴びて、気怠い体を起こす。


ん?なんか何時もより軽くないか私の体?


視界に入って来たのは、何時も見慣れている私の部屋で、見慣れてはいない情景だった。



ア…レ?なんか……何時もと目線の高さが違くないか?


おっかしいなぁ………。


そう思いながら頭をかいた。



ん?無いです無い無い私の髪の毛…………。


それに……手が思うように動かない。


視界に入ったのは肉球。


刹那、部屋の中に絶叫が響む。


「ニャ………ニャニャニャニャーーー!?(なっ………これは何ーーー!?)」


もしかして、神様が私のお願いを叶えてくれたとか?


「ニャーゴニャニャニャ。(これはこれで良いかも)」


ーーーーーーーー♪


ふと、時計を見遣る


時刻は5:50分。何故か理由は分からないが、


早起きをしたことに感謝した。



ベッドの上に直立する私。


……就寝中に来ていた服はベッドに散らかっていた。


シュッたっと華麗にベッドから降りる。


猫は高い所になれてる見たいだ。


まぁ、塀の上とかに居るし当たり前か。


猫は前足と後足で四足歩行するけど、大して違和感は無かった。


ハイハイするのと同じ感覚かも知れない。


ーーー幸いにもドアは開いていた。


部屋を出て、一段一段確認しながら慎重に階段を下りて行く


肉球のおかげか音はあまりしなかった。


階段を下りきると、玄関横の小さな扉から外に出る


よかった………うちが犬飼ってて。


犬が入って来れるようにと日曜大工が趣味の父が作った扉が役に立つ日が来るとは


思っても見なかった…。


何時もより外が広く感じた。ーーとても、とてもーー。


肌寒い風が吹き、私の毛を逆立てた。


構わず歩きだす。


彼女に会いたいが為に歩調が急ぎ足になっていく。



しおりーーーー。



会いたいって気持ちがどんどん膨れ上がって来る。


四足歩行に慣れていない私は、途中で何度も転んでしまったり、爪を剥がしそうになったりもしたけれど、


もうそんなのはどうでも良いことだった。



栞ーーー栞ーーー栞!!


私、貴女にどうしようもないくらい会いたいよ。


そのまま栞の家へと駆け込んだ。


偶然にも、彼女は外に出ていてポストの中を確認していた。


「にゃ〜ん(栞〜)」


「猫?」


ハッとして振り返った彼女、手には新聞紙を持っている。


ニコッとこちらに向けて飛び切りの笑顔になる。


ドキン………堪らず、意識してしまう。


猫にはそ〜んなに笑顔なんだぁ〜私には無愛想なくせに。


猫に対して妬いてしまう私、一歩一歩、彼女に近づいていく。


「よしよし、良い子だねぇ〜」


優しい手つきで私の頭を撫でられた。


心地好くって何時までもそうされていたかった。


「さてーーと、私もう帰るねバイバイ猫ちゃん」


そのまま家に向かう栞


あ………待ってよ…待ってってば


ギュムっと彼女の服の裾を噛む。


思いっきり力を込めて、彼女を行かせないようにする。


「きゃぁ……猫…ちゃん?」


口を離し、「行かないで」と叫ぶ。


「あっ、わかったわ……お腹が空いたのね?フフッ、ちょっと待ってて」


行ってしまった………。


まぁ、次期戻ってくるだろうけど。


君に好きって言えたら良いのに。


それを言えなかった自分が歯痒くてちょっと鬱になった。


「猫ちゃ〜〜ん」


栞が戻って来た。手にはキャットフードと牛乳を持って。


げっ………牛乳はともかくキャットフードまで食べないといけないのかなこれ?


栞がさぁどうぞ、とそれを進めてくるので仕方なくそれを食べた。


モグモグ…モグ………


最初は抵抗があったけれど、そこまで酷い味では無かった。


しかも……この味はお米みたいな感じだ。


驚いた、猫の舌にはこんな風に感じるのか。


一人黙々と食べ続けていると、上から声が降り注いで来た。


「美味しい?」


「ニャ、ニャンニャンニャ(うん、美味しいよ)」


「そう、美味しいかぁ〜〜よかった」


栞が再び笑顔になった。


きっと、無意識のうちに笑っているんだろうなぁ


ねぇ、栞、私ずっと貴女に伝えたかったことがあるんだ。


「ニャイニャニャニャ(大好きだよ)」


「うん、ありがとう。私もずっと大好きだったよ琴葉ことは


チュッ…………


私の口に柔らかい栞の唇がそっと触れた。













ーーーーーー栞ーー。


ヒック、ウエック……ヒック……


ベッドは大粒の涙で濡れていた。


小さな嗚咽が止まらない


夢………か。



ーーもう一度、貴女の口から“好き”の言葉が聞きたい。


“好き”だから。どうしようもないくらい


貴女を愛している。


だから、今日、弱虫な私に終止符を打って、私は告白しようと思います。



ーー大好きだよ、栞。






そそくさと家を出て、何時もの場所で栞を待った。



「おはよ」


相変わらずの無表情でにこりとも笑わずに挨拶をしてくる栞。


「おはよう」


それでも彼女から声をかけてくれるのが嬉しくて、ついつい笑顔で応えてしまう。


ここらで同じ学校なのは、私と栞くらいしか居なかった。


集まる時間帯が早いのもあって、辺りは静かだ。


「ねぇ、栞?」


「何?」


冷たい表情のままでこちらをチラリとも向かない栞。


わかってるよ。夢のようにはいかないってことなんて。


でも、それでも良いんだ。


もう、この気持ちに嘘をつくのは止めようって決めたから。


「私さ、栞が好きだよ。likeじゃなくてloveのほうで」


「…………うん」


珍しく素直に応える栞。


「驚かないの?気持ち悪くないの?嫌いにならないの?」


私が抑揚をつかせてそう言うと、


「どうして?」


と君が応えるから、私はなんて返答をしたら良いか分からなくなってしまった。


「琴葉が琴葉なことに違いないでしょ?」


うっ………確かにそう言われればそうかも知れない。


「だって私、栞が好きなんだよ!?キスだって、それ以上だってしたいとか思ってるんだよ?」


「それだけ?」


「……それだけって………栞、私もう止まらないから」


栞を壁際まで押した。キスをしようと、唇を近づけていく。


うわ……自分からやったのになんだけど、近い………。


いざ、本番となると勢いだけで乗り切るのは私には無理だった。


「キス、するんじゃないの?」


真顔でそう言われても困るだけなんだけど、栞。


「すっ、するし、今するし」


口ではそう言ったもののやはり出来ない。


チュッ…………んっ……


え!?栞………?


……上手いし。


「舌も絡ませてみる?」


口内に舌が侵入してくる。


私の舌を見つけ、じっくりと絡んでくる。


ちょっ……待っ…てよ……んっ…っあ……っ……


キスだけなのにこんなにも感じてしまう。


なんで栞はこんなに上手いんだろう?


っはぁ……はぁ…はぁ…


「何…すんのよ?」


「何ってキスだけど?」


好きな人と望まれない形だとしてもキスをしてしまった。


しかも、相手から。


「したかったんでしょ?キス」


……何とも思って無かったのかな?栞は私のことなんて。だから、キス出来たんだよね?


「栞は、キスしたいって誰かに言われたら誰でも構わずキスするの?」


「キスなんて、誰とでも出来るでしょ?」


栞、私は好きな人とじゃないとキス出来ないよ。


「じゃ、私じゃなくても良いんだ」


一瞬でも、栞も私を好いていてくれたのかもとか考えた自分が馬鹿らしく思えてきた。


「もうっ、知らないし、帰る」


これから学校になんて行きたくない。


体調が悪いとでも言って家で寝てよう。


栞に背中を向けて、歩きだした。


「帰って良いなんて誰も言ってないんだけど?」


手をぐいっと引っ張られて、またキスされた。


今度は物凄く甘かった。壊れ物を扱うように優しく優しくそんなキスをしてきた。


ぷはぁ……………。


「私はもう栞とキスなんてしたくない」


「さっきはしたいって言ってたのに?」


栞は目を細めながら、不機嫌そうに言った。


「誰とでも良いんなら、私じゃなくても良いんでしょ?」


やれやれ、と言った表情になる栞。


「誰とでもキス出来るとは言ったけど、誰とでも良いなんて言ってないよ?」


じゃ、じゃあ、と琴葉が上目遣いになる。


「私とじゃないと嫌なの?」


栞の目を真っすぐ見ながらそう言った。


私の目を見続けながら、恥ずかしそうに視線を外していくと栞は


コクリと頷いた。


「私のこと好き?」


コクリ。


「なら、最初からそう言えば良かったのに!!!!!」

琴葉が声を張り上げる。


「聞かれ無かったから」


むっ…………。


「じゃあ、何で私には無表情だったの?」


「無表情………?」


何のことを言ってるのか分からないと言った顔つきになる。


「無表情じゃんよ、猫と私以外にはあんなに笑ってるくせに!!!!!!」


「それは………ごめん………照れてたから」


予測外の返答に口をポカンと開ける琴葉。


へっ?照れてた?


「えええええええ〜〜」


有り得ないくらいの大声が出た。


栞の手が私の口を塞ぎ、シーっという仕種をする。


「近所迷惑だよ」


「あ……ごめんごめん」


そ……そっか…栞って不器用なだけ…だったんだ。


そう分かった瞬間、全身が脱力していった気がした。


「じゃ、私達、両思いだったってこと?」


無表情のまま


「うん」


と応える栞。


「あっ、また無表情だぁ〜」


「だから違っ、これは照れてるだけ…」


んっ……栞の唇を塞いだ。


だって煩かったから?


分かってるよ。だって、ほんの僅かに顔が赤くなってたから。


唇を離してギューっと抱き着いた。


何時通りの無表情で前を向き続けてたけど、


今度は遠目から見ても真っ赤になってるって分かるくらいに耳まで全部真っ赤っ赤だった。


だから、悪戯したくなって、


「大好きだよ」


って耳元で囁いたら物凄く顔を真っ赤にして、真っ赤になりすぎて


倒れてしまった。


「栞ーー栞、栞〜〜!!!」

しょうがないな、少しの間だけ、膝枕してあげるか。





ー数分後ーーー。





「んっ……琴葉、おはよ」


「おはよじゃ無い。おはよじゃ」


「ハハッ……てかこの状況、もしかして、膝枕?」


再びみるみる内に顔が真っ赤になっていく。


本日二度目のダウン。


ねぇ、酷くない?膝枕してあげたのに、こっちだって恥ずかったのに酷くない?




3度目は無いからね?








〜END〜

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