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堕落した英雄

作者: liza
掲載日:2011/03/29

この物語は私が以前投稿した短編小説(といっても構想中の長編小説の一部分切り取った物なのですが……)の『レラシムの再誕』、『イシュールの変貌』、『灰色の世界の中で』の続きにあたる話です。上記の3つの物語をご覧になりたい方は、お手数ですが、私のマイページからよろしくお願いします。

『私は幾多の戦いで勝利してきた。それは、これからも変わらない。

 変わったのは、私が仕える主、それだけだ。――堕落した英雄、オーランド』


 


 ―堕落した英雄―

 



 灰色の濃霧に覆われ、一時は静寂に包まれていたイシュールだったが、しだいに、さざめき立ってきた。

 濃霧に侵され、一時は意識を失っていた者、濃霧によって、死から蘇った者、彼らは再び動き始めた。狂気の心を持つ者として……。


 彼もまたその中の一人である。かつて、幾多の戦いを勝利に導いてきた、ノーザレアの英雄、オーランド=ヴォルト。いま、彼は二つの心の間で揺れていた……。


 彼が再び目覚めた時、薄暗い濃霧の中は彼にとって心地の良い空間となっていた。しかし、彼は自分が誰であったか忘却していた。


「ここはどこだ……?私はだれだ……?」

 

 彼の声が虚空に響く。

 すると、もう半分の心が彼に囁いた。


(英雄、オーランドだった男さ。そして、これからもな。)

「そうだった……な」


 もう一つの心が思い出させてくれた。


「私はオーランド=ヴォルト……ここはどこだ……?」

 

 再び、彼の声が虚空に響いた。


(お前がさっきまで戦っていたイシュールだった場所さ)

「イシュールだった……?」

(そう、イシュールだったよ、さっきまではな……。だが、今は我々の神である、レラシム様の聖域となった)

「レラ……シム……?」

 

 レラシムとは一体誰なのか、オーランドの心に疑問が浮かんだが、すぐに解決した。彼は思い出したのだ、彼が濃霧によって倒れる直前の光景を。

 

 彼女は彼の目の前に立っていた。彼女は漆黒の翼、額に六芒星の紋様がある、とても美しい顔立ちをした天使だった。

 

 そして、彼女はその美しい顔で彼に微笑みかけた。その時、オーランドはレラシムに底知れぬ恐ろしさを感じていたが、今となってはその恐怖という感覚すら無くなっていた。


「あの方がレラシム……」

(そうさ、あの方が我々の神、レラシム様だ)


 その時、オーランドはレラシムに無性に会いたくなった。彼女に会えば、自分が何をすべきか分かるような気がした。


「彼女はどこにいる……?」

(くっくっく、レラシム様に会いたくなったか……、さすがは英雄、オーランドだ。)

「彼女はどこだ?答えろ!」

 

 彼の吠えるような声があたりに響いた。


(まあ、そう焦るな。お前は感じないか?レラシム様の心を)

「心……」

 

 彼は確かに何かを感じていた。今の彼とって、とても大きく、心落ち着く存在。


「これが彼女の心……」

(そうだ。レラシム様の心を感じる方に赴けばいいんだ)

 

 彼は歩きだした。そして、彼の望む先には、濃霧の中にイシュール王城の巨大な影が浮かびあがっていた。


 彼が王城に着く間、彼は何人もの人々を見た。皆、灰色の目をして、何かを求めるようにさまよい歩いていた。


「やつらはなんだ……?」

 

 オーランドはもう一人の自分に問う。


(お前の仲間さ……)

「仲間……だと……?」

(そうさ、お前も灰色の目をして、何かを求めてさまよっているんだ。彼らと違うのは、お前が今はレラシム様を求めているってことだけだ)

「ならば、やつらは何を求めている?」

(くっくっく、お前の心の中にもあるだろう?満たされぬものが……)

「満たされぬもの……」

 

 彼にとってこの灰色の濃霧の中は居心地が良かった。しかし、それと同時になにか渇きのようなものを感じていた。


「確かに私はなにかに飢えている……これはいったい……」

(じきに分かるさ……ほら、見えてきたぜ、イシュール王城の門が)

 

 オーランドの目前には巨大な門が立ちはだかっていた。そして、屈強な衛兵が二人。


「城の中に入れてほしい」

 

 オーランドは衛兵に問う。


「なんだ貴様は……今、レラシム様は客人と話されている。誰も門を通すなとのご命令だ。貴様のような輩をこの城に入れることはできん」

 

 衛兵はそう言って、オーランドを睨みつけた。


(くっくっく、門番に話しても無駄なようだぜ……どうする?)

「ならば、力ずくで通るほかあるまいな」

 

 そう言い放つと、オーランドは剣を抜き、二人の衛兵に剣を振るった。二人の衛兵も即座に反応して剣を振るったが、一閃の煌めきのあと、二人は倒れた。二人の衛兵の頑強な鎧は砕かれ、腹部に傷が深く刻まれた。


(さすがは英雄、オーランドだ。だが、これで門は開かなくなったな)

 

 しかし、次の瞬間、轟音を立てながら巨大な門は開いていった。そして、開いた門の先には漆黒の美しい天使の姿があった。


「レラ……シム……?」

 

 オーランドは思わず声を発した……。


それでは、ご意見やご感想がありましたら、是非よろしくお願いします!

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