覚悟の刃
―日神邸―
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ブンッ!!
ブンッ!!
ブンッ!!
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火神 爆は振り続けていた。
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汗が地面に落ちる。
呼吸は荒い。
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「……まだ迷ってやがるな」
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日神 烈火が腕を組んで見ている。
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「……うるせぇ」
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爆は睨み返す。
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「分かってる」
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再び構える。
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(俺の剣は何だ)
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振る。
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(壊すためか?)
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振る。
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(守るためか?)
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振る。
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(……違う)
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その瞬間。
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幼い頃の記憶がよぎる。
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――「もっと強くなりてぇ」
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――「守りてぇもんがある」
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――「負けたくねぇ」
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「……ッ」
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刀を握る手に力が入る。
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(俺は――)
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振る。
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ドンッ!!
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爆発。
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だが――
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その爆発は、ほんの少しだけ“まとまっていた”。
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烈火が笑う。
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「いいじゃねぇか」
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「“形”が見えてきてる」
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爆は息を吐く。
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「……まだだ」
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だが、その目は変わっていた。
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―鬼鼠谷邸―
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カンッ!!カンッ!!カンッ!!
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木刀がぶつかる音。
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千本――を超えている。
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滝壺の腕は震えている。
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だが――止まらない。
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「……いいですね」
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鬼鼠谷 八兵衛が静かに言う。
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「やっと“思考が消えてきた”」
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滝壺の動きが変わる。
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無駄が消える。
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「次です」
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八兵衛が一歩踏み出す。
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「実戦に移ります」
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滝壺の目が鋭くなる。
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「……はい」
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八兵衛は背を向ける。
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「ついて来なさい」
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その先にあるのは――
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新たな刀。
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黒刀『宵丸』
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―不動明王邸―
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静かな庭。
風が木々を揺らす。
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その中央。
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罪道 斬刹が膝をついていた。
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「はぁ……はぁ……」
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満身創痍。
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「……もう一度、いきますか?」
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穏やかな声。
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不動 明王。
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斬刹は笑う。
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「当たり前だろ」
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立ち上がる。
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刀を構える。
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「今度は……斬る」
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不動明王は微笑む。
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「良い目になってきましたね」
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一歩踏み出す。
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その瞬間――
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ザンッ!!
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斬撃。
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だが――
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「……」
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不動明王の腕に、浅い傷。
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血が滲む。
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沈黙。
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斬刹の目が見開く。
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「……当たった」
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不動明王はその傷を見る。
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そして――
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微笑む。
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「ええ」
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「今のは、“殺意”ではありませんでしたね」
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斬刹が息を呑む。
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「……分かったのか」
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「はい」
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穏やかな声。
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「“斬る理由”が変わりました」
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「それが、万物斬の本質です」
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斬刹は笑う。
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「ははっ……面白ぇ」
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「まだいけるな」
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「ええ、何度でも」
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再び構える。
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―都市・夜―
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「……ッ!!」
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暁 照夜の身体が震える。
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影が暴れる。
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触手のように広がる。
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「……抑えろ……!!」
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必死に押さえ込む。
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だが――
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暴走しかける。
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その時。
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光が流れる。
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天照。
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影とぶつかる。
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「……ッ!!」
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激痛。
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だが――
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止まる。
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影が、収まる。
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「……はぁ……」
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膝をつく。
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だが、笑う。
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「……やっと、見えてきた」
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―鬼鼠谷邸―
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滝壺は刀を握る。
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黒刀『宵丸』
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ゆっくりと抜く。
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――瞬間。
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空気が変わる。
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「……ッ!?」
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意識が揺らぐ。
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視界が黒く染まる。
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遠くで、八兵衛の声。
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「それが“試練”です」
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滝壺の意識は――
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沈む。
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修行は、さらに深くなる。
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覚悟が試される。
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全員が、“次の段階”へ。




