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第五話 寂れるギルド、栄えるクラン

 辺境伯領に戻ると、取りあえずギルドに向かった。


 現在、ギルドは貴族の支配下にある。数年前に起きた魔族との争い、いわゆる、七年戦争の(あお)りを受けた結果であった。


 当時ギルドは王国の要請で冒険者を傭兵として差し出したのだが、死傷者が大量に出て、冒険者が足りず機能不全に陥った。


 戦後、ギルドの存続が危ぶまれそうになった時、王国三大貴族がギルドに介入して、事実上乗っ取った。


 さらには今後、新たにギルドを設立するには王国の許可が必要となったという事だ。


 ギルドに着いた俺は受付カウンターに進んだ。大きな建物の割に利用する人は少ない。


「あの、休暇を取らしてほしいのですが?」


「カードの提示お願いします。」


「これで良いでしょうか?」


「う〜ん、これでは受け付けられません」


「どう言う事ですか?」


「お宅様は他クランで実地研修中ですので、そちらへお願いします。」


 受付がカードを返してきたので仕方なく、ギルド内にあるクランの出張所へ向かった。



 現在のギルドは、基本的に公的なお墨付きを与えるのが主な作業で、ギルドカードの作成もその一環である。他の事は各クランに丸投げであった。


 勿論、例外もある。例えば、初心者の冒険者への講習や領外からの冒険者、クランに加入していない者への仕事の斡旋等だ。



 ギルド内には三か所のクランの出張所があり互いに牽制し合う。以前は冒険者の待合室だった所をそれぞれ改装したらしい。その一角に向かう。


「あの〜、休暇を取りたいのですが?」


 カードの提示を促され受付に差し出す。


「当クランに間違いないですね! こちらから本部に話を通しておくので、クラン本部へお願いします!」


 事務的に対応され、その場を放り出された俺は、仕方ないのでクランに向かった。



 ギルドからそんなに離れていない場所に俺が関わっているクランがある。


 他のクランもギルドのすぐ近くにある。どこも大体そんな感じだ。


 クランの中に入るとギルドとは打って変わって冒険者達で賑わっていた。


 ここでは冒険者への依頼や報酬、素材の買取りを行っている。ギルドの機能を代替しているのだから当たり前だ。


 出張所から既に話が通っていたようで、受付がクラン代表執務室まで案内してくれた。


 中に入るとクラン代表と執事らしき人がいた。


「とりあえず、腰かけてください」


 俺は(うなが)されて椅子に腰かける。



「楽器を壊されたから、休暇が欲しいとのことですが、どういう事ですか?」


 クラン代表がこちらを向いて(たず)ねる。


「これを見て下さい」


 破壊されたギターを見せた。


「これは酷いですね、リュートですか? 吟遊詩人がよく持ち歩いていますね」


「いえ、ギターといいます。魔法を行使する道具として使用していますが、リュートは不適格です」


「と言うと?」


「リュートは弦が切れやすく、調律も難しいので、例え使ったとしても、いざという時に役に立ちません」


「魔法使いの(つえ)みたいな感じで楽器を使用しているのですね」


「楽器から奏でられる音のニュアンスで色々支援系の魔法を使う事が出来ます」


「他の楽器でも対応出来るんじゃないですか?」


「技術的には対応出来ると思うんですが、このギターは兄の形見でもありますので」


「そのギターを実家に持ち帰る事で自分の心にケジメをつけたいと?」


「はい、そう言う事です」


「良いでしょう、レックス君の帰省を許可しましょう。その前にこれまでの経緯を話して下さい」


 そう(うなが)され、いちごみるくで起きたセドックの数々の蛮行を事細かに話した。


「そんなに(ひど)かったのですか。こちらからも研修の責任者を離れた所から同行、監視させていたので、ある程度の事は把握していたのですが……」


「はぁ、そうなんですね」


「研修の条件に当てはまるクランのパーティは出払っていて、研修を急ぐあまり外部の下請けのセドックさんのパーティに預ける形になったのが失敗でした。こちらの落ち度です。」


 代表は頭を下げた。俺は帰省の許可さえ貰えれば、はっきりいって後はどうでもよかった。ギターが元通りになる訳でもないのだから。


「頭を上げて下さい。」


 頭を上げた代表は続ける。


「何故、そこまで酷いセドックさんの所に居続けたんですか?」


「実地研修中だったので」


「そうですか、一言言って下されば対処しましたのに」


 代表はため息をついて、続けた。


「これからは、他の事でも酷いと思う事がありましたら、何でも連絡して下さい。対処しますので」


「はい」


「カードの方も発行して置きます」


「えっ、良いんですか?」


「研修の担当者の評価も高いですしね」


「ありがとうございます!」


「支援系の魔法が使える人材は貴重ですので、必ず戻って来て頂きたいのですが?」


「はい、実家に帰ったら必ず戻って来ます」


 そう言って、お互い立ち上がって握手をした後、俺は執務室を後にした。




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