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第四十一話扉を開けると


 俺達は扉を開けた。そしてその光景に驚愕した。


「どうなってんだ」


 部屋の中はちょっとした歌劇場のようになっていて多くの聴衆によって熱気が凄まじかった。


「オマエラガ次ノ挑戦者カ?」


「次の挑戦者? どういう事だ」


「シラナイノカ、ココはコノ場所ニ訪レタ訪問者達ト音楽バトルヲ行ウ闘技場ダ! 俺達ト勝負ヲシテモラウ」


「なに?」


 俺は正直戸惑った。ボス戦といえばたいてい強力なモンスターが出てくるものだと思い込んでいたが様相が違った。


 聴衆はゴブリンやオーガ等の人型の魔物でひしめき合い大きな歓声をあげていた。


 ステージの上にはゴブリンが2体小ぶりなギターを手にして立っていた。


「お前等と音楽で勝負しろというのか?」


「ソウダ」


 ステージに立つゴブリンは普段目にしているものとは違っておしゃれな服装をしていた。


「受けてたってやる!」


「イイ度胸ダ マズハ俺達ガ先攻ダ」


 会場のゴブリンやオーク達がドッと沸いた。


「ふざけるなコノ野郎!」


 一緒にいたバズがそう叫ぶとファイアボールを発射したが しぼんで消えた。


「ムダダ、音楽バトルガハジマル時、魔法攻撃ハ無効化サレル」


「音楽勝負で武力攻撃は無粋と言う事か」


「ソウダ」


「それにしてもここには魔物しかいない、不公平じゃないのか?」


「アウェーノ洗礼ダ、ククク気二スルナ、万ガ一ニモ、オ前達ガ勝ツ事ハナイ、観客ガ人間ダロウトモナ」


「どういう事だ! 俺達がお前等より下だとでも言うのか?」


「ヤッテミレバワカル」


「クッ、偉そうに」


 準備が整ったゴブリン達が演奏を始めた。


「しっかり見ておけよバズ!」


「ええ、しっかり見てるっス! 奴等の服装、ヤケにセンスがいいっス! 王国西部で流行ってる最新の開拓者ファッションっス」


「そうなのか」


「そうっス! 帽子なんか一人は中折れ帽にもう一人はテンガロンハットっス!」


「詳しいな、お前」


「ファッションにはこだわってるっス!」


「っておい! ふざけてんじゃねえぞバズ! そんな事より今は音楽だ」


「スンマセン師匠」


 バズは謝罪すると演奏を聴き始めた。


 ヤツ等の演奏は非常に泥臭く聴こえた。コード進行 はメジャーコードでなく 12小節の繰り返しだった。


「片方が提示した短いフレーズに、もう片方が装飾を加えたり、エコーのように返したりしてるっス」


「コール・アンド・レスポンスだな」


 例えるとボケとツッコミが路上で喋くっていて、ソレが途中で入れ替わるような技法、それを音楽で体現していた。 


 歌い方 は唸りや震わせ、ビブラートやシャウトという技法だ。


 それは まるで老練なしゃべくりの達人が会話しているような緊張感と親密さがある演奏だった。 


 こんな奴等と勝負だなんて今の俺達に勝てる見込みはあるのか、俺は考えた。


 海千山千のアイツ等に対等に勝負を持ち込むには一方的にまくし立てて奴等に考えるスキを与えない事だと俺は考えた。


「なんか魂のぶつかり合いと言うか、野暮ったい語り合いが俺の胸を締め付けてくるっス」


「意図的に音をぶつけ合って不協和音をスパイスとして使っているみたいだな」


 俺はこれが以前、回収した羊皮紙に書かれていた、ヤツ等の言うところのブルーノートとテンションコードの実用例だと理解した。


 文字で理解するより実際に見た方が断然早いと思ったが、自分で考察しなければ何が優れているのか理解も出来ないのだから先にある程度自分で調べるのも必要だとも思った。

 

 ステージに目を移すと、そこへ奏者の一人が、銀色の鈍く光る箱状のものを口元にあてた。


「何だあれは!」


「聴いた事もない郷愁を誘う音色っス」


「知ラナイノカ、アレハ、ハーモニカダ」


 聴衆の中の一人が呆れて馬鹿にしたように言った。


「ベンド、トイウ奏法デ音程ヲ下ゲル事デ切ナイ音階ヲ表現スルノサ」


 俺は、王国内には出回っていないモノを当たり前に使いこなす姿に俺は衝撃を受けた。


「師匠勝てますよねぇ?」


 バズは不安そうな顔で俺に聞いた。


「わからない。俺の今まで培って来た人間の音楽のセオリーが通じるか想像もつかないが、心配するな、今の俺達の最高の全力をあいつらにぶつけてやろうぜ!」


「そうっスね!」


 俺達は前向きに挑もうとしていた。新しい未知の音楽に恐怖すら抱いたが、全て聞き漏らさず吸収する気持ちでゴブリンの演奏を聴いた。


 ゴブリンの演奏が終わると観客から大歓声があがった。


「ちょっと質問させてくれ、その音楽は何だ!」


「ブルース、ダ ニンゲンノ知ラナイ所デ普通ニ演奏サレテイル、ニンゲンハ遅レテイルンダナ」


 その言葉に会場を埋め尽くす聴衆達もドッと沸いた。


「そうだな、俺も初見だった。良いもの見せてもらったよ。次は俺達の番だ。人間の音楽がどういうものかよく聴いておけ!」


 俺はそうハッタリをかましたが、不安は拭えなかった。



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