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第四十話 ボス戦に向かうにあたって

 広めのスペースに陣取った俺達はボス戦? に備えて休息を取っていた。


 俺はボス戦に備えてギターの手入れを念入りに行なっている最中、バズが話し掛けて来た。


「俺、曲作ったんで聴いて欲しいっス」


「いいぞ」


 俺は手入れをしながらこたえた。


 バズはギターを取り出すと演奏を始めた。洗練されたテクニックを用いたきらびやかな演奏とは程遠いなんとも無骨な演奏だった。


 (みが)かれた旋律ではなく、明日を(つか)み取ろうとする()き出しの意志を感じさせた。


 その(ひび)きは、洗練(せんれん)された音楽が忘れてしまった飢えを、鮮烈に思い出させる音色だった。


 バズの指がフレットを(さす)るノイズや、強く弾きすぎてバズる音が、曲のリアリティを増幅させる効果をもたらした。


 スチール弦が発する、少し錆びついたような、硬く乾いた音色が心地よい圧迫感と、隠しきれない緊張感を漂わせる、そんな演奏だった。


「中々、良いんじゃないか」


「本当っスか!」


「バズの飾らない人間性が良く表現されてたぞ!」


「あざっス!」


「それがバズの音楽のスタイルなんだな」


 俺がそう言うと明るい笑顔で頭を()いた。


「でもな、バズ、今回は俺が譜面書いとくけどお前も書けるようになっとけよ」


「でも、俺、文字が……」


「言い訳はいい、この先、俺にもしもの事があって、お前一人になったらどうするんだ。お前が残した楽曲も何もかも後世には引き継がれないんだぞ」


「スンマセン」


「俺達の進む道は異端だが、この王国で必ずメジャーな存在になると俺は確信している。その時、譜面読めませんじゃ話にならないだろ」


「師匠……」


「俺達は成り上がるんだ! その時に備えて読み書きの勉強しとけ!」


「はい」


 バズは気合いを入れたかのように返事をした。やる気になったようだ。


 俺はバズが字を覚えて読み書き出来ればそれでいいと思って思わずクチから出た言葉でもあった。


 

「ところで師匠、この扉の向こうにはどんな奴がいるんスかねえ」


「どんな奴がいるかわからないから道具の手入れはちゃんとしとけよ!」


「大丈夫スよ! 俺ほとんど弾いてないっスから」


「そういう油断が危険を招くんだ」


「そんなことより師匠は何で冒険者なんかやってんスか?」


「話を変えやがったな、話が終わったらちゃんと手入れをしとけ」


「はい」


「俺が王立魔法アカデミーを追放されたせいだよ」


「何で追放されたんスか?」


「ちょっとした陰謀みたいなもんに巻き込まれちまってな、追放されて学校やめなくちゃならなくて、その後、あてもなく辿(たど)り着いたのが辺境伯領だったんだよ」


 俺はバズの方を向き話を続けた。


「辺境伯領に来てから金もないし、仕方なく冒険者になったんだよ、そしたら所属した『いちごみるく』というパーティが酷くってな、冒険者にうんざりしたんだよ」


「じゃあ、俺達と冒険者やってんのもうんざりしてるんスか?」


「そんな事あるか! 音楽の世界のエリートになる道を(あきら)めて冒険者になって唯一、良かった事はお前等に出会えた事だ」


 俺はバズの方を見た後、食事の準備をしているティナの方へ目をやった。バズは満面の笑みを浮かべティナは軽く微笑んだ。


「旦那様、食事ですよ」


 俺達は軽めの食事をとって少し仮眠をとった。体調も多少回復したのでボス部屋に向かう準備を整えた。


「あの扉の向こうには一体どんな危険な奴が控えてるんだろうな」


「ワクワクするっス」


「そうですわね」


 俺達は巨大な門の扉に触れた。



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