第三十九話 バズの言う洞窟
バズのいう洞窟のある場所までやって来た。
「ここがその洞くつか」
「奥が暗くて見えませんわ」
「バズ、火だ」
バズは魔法で木の棒に火を着けた。
「こいつがダンジョンか、慎重に行くぞ!」
「ハイ、師匠」
元気良く答えたバズは辺りをロクに確認せず、気の向くまま前進した。
「バズ、大丈夫ですかね、姿が見えませんけど」
「あれだけ注意したんだから大丈夫だろう、バカじゃあるまいし」
少し進んだ所でバズが頭から血を流し地面に転がっていた。
「全然大丈夫じゃなかったな」
「大丈夫、バズ!」
ティナはバッグからポーションを取り出し傷口にかけた。傷はふさがったものの意識は戻らなかった。
「バズにこんな事する奴はどこだ!」
俺は辺りを見回すも誰もいなかった。周辺には変わった石像が数体並んでいたがそのうちの一体に多量の血が付着していた。
「ティナ、そこから離れろ!」
ティナはバズを抱えてその場を離れた。すると石像が突然動き出した。
ギターが手元になかった俺はポケットに忍ばせた竹笛を吹いた。
雷魔法が発動し、石像のコアを破壊すると動きを止めた。俺は石像が動かない事を確認するとバズのもとへ向かった。
「バズ、大丈夫か」
「ここは一体、何処なんだ」
「気付いたか、バズ、お前は石像にやられた。それをティナが助けた」
「そうなんスか、スンマセン、ティナ姉さん」
「いいのよ、次から気をつけてね」
「ハイ」
「全然良くないぞ、前から言ってるだろ、先走るな!」
俺がそう言うとバズは項垂れた。
取り敢えず、今日は洞くつの外まで戻るか」
俺達はダンジョンを後にした。
その日の夜、俺はバズのギターに刻印魔法を施そうとした時だった。
リスの姿のあすかが念話で話しかけて来た。
『アヤツは闇属性魔法の適性があるからこれ以上の刻印魔法は辞めておけ、いつアヤツが覚醒するかわからない』
「俺の施した刻印でバズが覚醒したらどうなるんだ」
『聖属性と闇属性は親和性があるが、相性が悪い。下手をするとあの世行きじゃ』
俺は言葉を失った。
「じゃあ、どうすればいいんだ」
『アヤツが覚醒するまで放っておけ』
「気の長い話だな」
翌日、洞くつの中を進んだ。
「ティナ、氷結魔法は使えるか」
「ええ」
「そしたらバズが火魔法を放ったら、一気に氷結魔法を連射しろ」
「わかったわ」
「バズ、火魔法の連射だ」
バズは火魔法を連射した。俺は支援魔法をかけた。ティナは氷魔法を一気に放った。
すると複数の石像は膨張と収縮を繰り返し砕け散った。
「やりましたわ、旦那さま」
砕け散った場所にはドロップ品が転がっていた。
俺はその箱を開けるとツマミのついた黒い箱数種類と大きな黒い箱が二つはいっていた。
「何スか、コレ」
「取り敢えず貰っとくか」
それをティナがマジックバッグに詰め込んだ。
「先に進むか」
そう言って俺達はその場を後にした。
暗闇を照らすとスライムが現れた。
「スライムですわ!」
「俺に任せて下さい! 師匠!」
バズは手にしたギターを弾こうとする。
「お前はまた、一人で先走る気か!」
「相手はスライムだから楽勝ですって!」
バズはそう言ってギターを弾き始めた。あたりに魔法陣が展開すると多数のファイアボールが発射されスライムに命中した。
「どうっスか師匠!」
スライムを爆破するとバズは得意げに俺の方を見た。それと同時に爆発音とは違う巨大なノイズがあたり一面に響いた。
「ぐあぁぁぁ~! 頭が割れそうだ」
「ひ、ひどい音ですわ」
「ノイズスライムか!」
「どうすればいいスか?」
「核の破壊だ」
「核の破壊っスね!」
そう言うとバズは腰に携帯している剣を手に持ち魔力を込めスライムの核を破壊していった。するとノイズは止んだ。
「師匠、アイツの事知ってるんスか?」
戻って来たバズが俺に尋ねた。
「ああ、暇だった時、ギルドのライブラリーで読んだ本の中に書いてあったな」
「博識なんですね、旦那さま!」
「そんな事言ってる場合じゃないぞ!周りを見てみろ!」
ノイズに反応したスライムが大量に湧き出した。
「バズ、お前は攻撃しろ!」
「はい、師匠! うおおぉぉ~」
バズは剣を持ったまま突進した。
「何で冒険者歴の浅い俺がバズに命令しているんだ」
俺は漠然とした疑問を抱いたその時だった。
「ねぇ、旦那さま、ワタシ思うんですけどスライムを一気に氷魔法で凍らせて破壊したほうが効率的じゃないかしら」
俺はティナの方を見て一喝した。
「ティナ、お前は何もわかっちゃいない! スライムとの戦いといえば、女性のパーティメンバーがスライムの触手でイタズラされた挙げ句、体内に取り込まれるのがお約束だろ! あんなふうにな!」
イタズラされまくって取り込まれそうになっているバズを俺は指さした。
「そんなルール知らないわよ!」
ティナは怒り出した。
「ん、バズ?」
俺はさっき指差したのがバズだと言う事に今気づいた。ティナはブツブツ言っていた。
「ティナ、バ、バズが」
「何がバズよ! 話変えないでよ!」
ティナはそう言いながら後方を振り向いた。
「バズ!」
ティナは顔を青くした。
「ティナ、お前がさっき、言っていた方法を試す、奴等を凍らせろ!」
ティナは頷くと氷結魔法を展開した。わき出したスライムは凍ってしまい、動きを止めた。
それをティナの短剣で核を破壊していった。核を破壊されたスライムは液体になって溶けた。
「後は、バズを取り込んだスライムだけね」
そう言って慎重にバズを避けながらスライムの核を破壊した。スライムは溶けてバズだけが残った。俺はギターを使って回復魔法をバズにかけた。
「バズが気付きましたわ!」
バズを介抱していたティナが俺の方を見た。
「バズ!」
俺は演奏を止め、バズのもとへ駆け寄った。
「俺、また気を失っちまったんスね」
そう言うとバズは落ち込んだ。
「そんな事ないさ! そこ見てみろ」
俺が指さした先にドロップ品が転がっていた。
バズはドロップ品を回収するとハッとした表情をした。
「師匠、う、後ろ」
俺はバズが指差す先を見た。
「何だ、あれは!」
そこには巨大なレリーフの刻まれたドアがあった。
「し、師匠…… もしかして、ボス部屋スか?」
緊迫した表情でバズは俺を見た。




