第三十八話 スタートラインに立つバズ
数ヶ月後、バズはレックスの教えを吸収して演奏者としてのスタートラインに立った。
「基本的な曲なら弾けるようになったな。これからは俺と同じ同業者だ」
俺はバズに片手を差し出した。
「師匠のおかげっス!」
バズも手を差し出し、堅い握手を交わした。
「依頼を受けに行く」
「本当っスか?」
「バズが何処までやれるか、確かめたいしな」
「ヤッター!」
喜びのあまりバズは家の外に出て行った。
「バズ、本当に大丈夫ですの?」
ティナが疑問を呈した。
「コードを理解するためのスケールもあまりわかってないみたいだったけど、弾かせると何故かちゃんと出来ているんだ」
「スケールって何ですの?」
「音階の事だよ、コードに必要な要素さ。音楽で語り合うにはコードを理解する事は避けては通れない道なんだ」
「そうなんですか、わたしにはサッパリですわ」
「ティナもエルフの集落で楽器演奏してたじゃないか」
「でも私のは旦那さまと比べたら、難しく考える必要のない遊びのようなものですわ」
「そんな事はない、どういうカタチであれ音学にかかわる事が大切なんだ」
「そんなもんなんですかねぇ」
「でもバズは大ざっぱだな、文字も記号もロクに覚えないし、俺の音だけを完璧に真似やがる、これじゃ、会話が出来ても文字は読めないみたいなもんだし、何とかしないととは思ってるんたけど」
「だから旦那さまが師匠としていてるんじゃないですか! バズが独り立ちするまで頼みますわ」
「言われるまでもなくそうするつもりだよ、それにしてもバズの奴、字を読む以外の再現力とか理解力に記憶力はすごいのに、なんか勿体ないよなぁ」
それから俺達はコボルト討伐の依頼を受け目的地のハイオク村に向かった。
ハイオク村に到着すると村長がコボルトが住み着いているというレギユラ地区の廃村に案内してもらった。
「ここです! この辺りでコボルトが出現します。駆除のほう、どうかよろしくお願いします」
村長はそう言うと、抱えきれない程のこの辺りの特産のヤム芋を置いて戻っていった。ティナはマジックバッグにヤム芋を詰め込んだ。
「コボルトは鼻が効く。気づかれないために川の向こう側で野営だ」
俺達は近くの川の向こう岸にテントを張った。ティナはたき火をすると芋をのせた。
「旦那さま、焼けましたわ」
ティナは焼けたヤム芋を俺達に手渡した。
「この芋、美味しいですわ!」
「異様に甘いっスね」
「甘過ぎるな」
焼いたヤム芋はティナが食べ尽くした。俺とバズはティナから干し肉と酒を用意して貰って、一夜を明かした。
翌日、廃村に向かい、コボルトの頭数を確認する。バズは勝手に飛び出すという愚行をする事なく大人しくしていた。
俺達は作戦をたて実行に移した。
「バズ、ギターに刻印魔法を施してある。廃村だから思いっきりやっていいぞ」
「はい、師匠」
バズの顔は輝いた。
「バズ、一回、曲作って見ないか?」
「わかったっス」
俺は思い付きで言ってみた。
作戦は着々と進んでいった。最終局面になると俺の支援魔法でバズの火魔法を強化した。
「ファイヤーボルト」
バズが叫ぶと威力を増した炎がコボルト共々、廃村を焼き尽くした。
「気持ちえぇ~」
バズはすがすがしい顔をした。
「ふう、討伐終了だな、ところでバズ、魔法に無駄がなくなったな」
「そうっスか」
バズの指さばきに無駄がなくなったのか火魔法が効率的に展開されるようになった様だった。
仕事を終えた達成感に俺とティナが浸っているとバズがあわてた様子で駆け込んで来た。
「変な洞くつ見つけたっス! ダンジョンかもしれないっス」
「ダンジョンだと!」
俺のシケた冒険者魂に火が灯った。
「よし、行こう!」
俺達はバズの案内でその場所に向かった。




