第三十三話 リュートの威力
翌日、寝ていたバズを叩き起こした。
「おいバズ、起きろ! お前のためにリュートを簡単に弾く事が出来る道具を作ってやったぞ!」
「そんな物あるんスか? そんな簡単に弾ける道具なんかあるわけないっしょッ!」
バズはそう言い残して、また、眠りについた。
「おい、ふざけるな! 自分が寝たいからって、この野郎! 起きろテメェ!」
俺はバズの胸ぐらを掴んで激しく揺さぶった。
「うるせぇな! 起きればいいんだろ、起きれば!」
寝起きを邪魔されたのか、バズは不機嫌だった。
「おい! 何様のつもりだ! ここから出て行け!」
俺がそう叫ぶとバズは完全に目が覚めたようだった。
「ス、スンマセン! 師匠、許して下さい!」
バズは頭を地面にこすりつけた。
俺は内心、コイツに今、辞められたら困る事に気付いてしまった。知らない奴等の冒険者パーティにティナと一緒に参加せねばならいからだ。『いちごみるく』の悪夢が頭をよぎった。
「今度からは気をつけろよ」
バズが出て行かない事に安堵した俺は、腫れ物にさわる様な気持ちで注意をうながした。そこへ騒ぎを耳にしたティナも駆けつけた。
俺は刻印を施した道具をバズに与えた。
「これを使うとイキナリ弾けるようになるんスか?」
「出来る! 多分」
「多分って不安しか無いっスよ」
「いいから弾いてみろ」
俺の実験のために……
「わかりましたよ」
そう言うとバズは道具を装着した後、リュートを手に取り弦に手を伸ばした。
「そうそう、台所のたね火が消えそうなのよ」
ティナが何やら言い出した。
「そういう時はこう言えばいっスよ」
バズはそう言って、ティナにたね火の詠唱を教えた、その時だった。空間から複数の魔法陣が現れ、そこから火の玉が出現し、発射された。
火の玉は宿舎の部屋を破壊し壁を突き破って虚空に消えた。火事にはならなかったが、辺り一面焦げ臭かった。
皆、あ然とした。
「何だよ、これ」
「火魔法が発動したんじゃないかしら」
「そんなもん、見りゃわかるよ」
「もしかして、リュートの演奏中に詠唱が反応してこんな事になったとか…… そんな事あるわけ無いっスよね、師匠」
「おそらく、それが原因だな、俺がギターで雷魔法を使えるのと同じ理屈だろう」
「スゲェや! 何か俺、凄くなった気がするッス!」
「そんな事が起きるものなのですか旦那さま」
「ああ、おそらく魔法を施した刻印が何かしらの影響を及ぼし、発動したんだろう」
「師匠! 俺、これを実戦で試してみたいっス!」
「ふざけるな! 道具に頼るんじゃねぇ! あくまでお前がリュートを弾けるようになるための補助だ!」
俺がそう言うとバズはうなだれた。
「建物の修復にお金がかかりますわね」
ティナが呟いた。
「ニートリアの儲けがあるだろ」
「それだけでは足らないと思いますわ」
「そうか、仕方ない、ニートリアの買い取りの報酬を貰いに行ったついでに依頼を受けるか」
「やったーっ! 実戦だ」
喜ぶバズだった。
俺達は翌日クランの買取り所で報酬を受け取った後、受付で依頼を受けた。
「この前の所でゴブリン討伐だ」
「またゴブリン達ですの」
「あの場所に住み着いているらしい」
「あの場所って何処っスか」
「気にするな、行くぞ」
俺達は宿舎の修繕費のためにゴブリン討伐に出発した。




