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第二十九話 魔力測定とギルド形骸化の要因

「実家には戻っています。こちらを見て下さい、実家に置いてあった新しいギターです」


「う〜む! 本当のようですね」


 代表はしげしげと真新しいギターを見つめた。それからはこれまであった出来事の経過説明をした。


 あすかの魔法のおかげで(ろく)に旅をしたとも言えず、薄っぺらい事実に最もらしく話をする為にクマの魔石や毛皮等をティナのマジックバックから提出した。


「ほう、これは素晴らしいですねブラッドグリズリーですか」


 代表は提出した品をながめた。


「ところでこの大きさのグリズリーを貴方達二人で仕留めたのですか?」


「はい」


「レックス君はDランクですよね」


 俺は答えに(きゅう)した。


「旦那さまに強化魔法を掛けて頂き、ワタクシが攻撃を一手に引き受けて仕留めました」


「この毛皮のグリズリーを? ティナさんとおっしゃいましたか? その話が本当ならば当クランに所属しませんか? もちろんレックス君も一緒です」


「旦那さまも一緒に、それはよろしいことですわね!」


 ティナは前向きに考えているように見えた。


「代表、ゴブリンもあるのですが?」


「ゴブリンもですか」


「十五体分の耳があります」


「どの辺りにいたのですか?」


「一日ほど歩いた森の外れです」


「ケツァーナ村の近くのようですね。わかりました。調べて置きます」


 俺の野営地にある邸宅はケツァーナ村にある事が判明した。


「それから代表、俺達は知り合いなだけでやましい事は何一つありませんから」


「わかっています、冒険者に酒と女は付き物ですから仕事に影響のない範囲でお願いします」


 俺は代表が誤解している事を言いたかったが、グッと(こら)えた。


「レックス君は無事戻って来ましたので本採用となりますから正規カードにする手続きを明日にでもして下さい。ティナさんはギルドで魔力測定をお願いします」


「わかりましたわ! 旦那さま、行きましょう」


「明日な」


 ティナは代表に挨拶をすると俺の前を颯爽(さっそう)と歩いた。その後をついて行く俺は尻に敷かれているのではないだろうかと思いながら、その場を後にしてクランの宿舎へ向かった。


 翌日、ギルドに到着して受付でギルドカードの手続きを終えると魔力測定のため試験会場に移動した。


「相変わらず冒険者も居ないのに無駄に職員の数が多いな」


「どうしてそうなったのですか?」


「数年前の魔族との戦争でギルドが存亡の危機を迎えた時、王国の有力貴族三人が資金を提供して立て直したのだが、ギルド運営の主導権争いで分裂し、それぞれクランをつくり、冒険者を引き抜いたりしたせいでギルドが形骸化したんだよ」


「そうなんですね」


「その分裂した原因が王国の後継者争いというどうでもいい事が理由なんだよ」


「なんか新鮮ですわね」


「普通そこは幻滅しただろ」


「そうですわね、でもワタシは人間の世界で生活するのが初めてですので全てが新鮮でワクワクしますの」


「俺には当たり前の事、何だけどな」


「いいえ、旦那さま、隣にはワタクシがいますわ! 旦那さまには当たり前の事もワタクシと歩む事で、きっと、ありきたりな出来事でさえ違うものになりますわ!」


「そうかな」


 俺には全くピンと来ないが当たり前の事も分かち合う相手がいるとありふれた日常も違ったものになるのかなと考えてみたりした。


「それじゃ、行って来ますわ!」


 ティナは張り切って試験会場に向かった。俺はそれを見送るとイスに腰かけて戻って来るのを待った。


 しばらくするとティナが戻ってきたので試験結果の控えを受け取りギルドからクランに戻った。

ギルドから戻ると俺達はクランの受付で手続きを済ませた。帰ろうとすると受付に代表の執務室に案内された。


「素晴らしい結果ですね」


「素晴らしいのですの」


「中々、高ランクで即戦力の有望な新人は現れませんからね。ところでギルドの担当の職員からクランの紹介をされませんでしたか?」


「そう言えば、されましたわ」


「やはりそうでしたか、彼らはそうやってクランに紹介する事によって紹介料を貰ったりするのですが、レックス君が居たので諦めましたかね」


 資料を見つめながら代表が語った。


「ここまでの能力があるのでしたら即ギルドの正規カードの手続きをしたいのですが、実務経験が必要となりますのでしばらく何処かのパーティに所属してもらう必要がありますね」


「ワタシは旦那さまと離れたくはありません」


「それでは新たなパーティを組むというのはどうでしょうか? ギルドカード保持者最低二人が必要となりますが」


 俺は代表からティナの方へ顔を向けた。


「ちゃんとしたカードを取得すれば一緒に活動出来るんだから、しばらく何処かで実務経験を積んだらどうだ」


「絶対イヤです! そんな事言ってワタシが居ない間、浮気する気でしょう!」


 ティナがテーブルをドンと叩くとテーブルは真っ二つになった。


「仕方ありませんね、レックス君と一緒に活動出来るパーティをいくつか見繕って置きます。


「よかったですわね、旦那さま!」


 ティナの顔は輝いたが、俺は落ち込んでいた。ティナの束縛から解放されて束の間の自由を満喫出来ると思ったのに出来なくなったからだ。


 宿舎に帰り着くとティナはご機嫌だった。


「旦那さま、冒険楽しみですね」


「知らない奴らも一緒だぞ」


「知らない人間達と力を合わせ助け合いながらいろんな場所を巡って依頼をこなすなんて、今から楽しみですわ」


 俺はそんなティナを見ながら酒を呑む。


「理想と現実がわかってないな」


 俺は過去のセドックのパーティ『いちごみるく』の悪夢を思い出していた。


「俺は行かないからお前一人で行って来い」


 俺は酒の力を借りてティナに吠えた。


「なんですって、ワタシと一緒に居たくないって言うの!」


「ああそうだ、他のパーティなんてまっぴら御免だよ!」


 ティナは台所にあった包丁を振り上げた。


「殺される」


 俺は死を覚悟したその時だった。


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