第二十七話 あすか、大人になる?
コード進行とやらを解析し始めて数日が経過した。
「嗚呼、退屈じゃ! レックス、休憩して遊ばぬか?」
「休憩ならさっきもしただろう!」
「我は退屈なんじゃ!」
「もう、わかったから! 雷魔法の実験するから外に出るぞ!」
それを聞いてパァッと笑顔になったあすかはギターを手にした俺の後を喜んでついてきた。
「何処まで行くのじゃ?」
「川のほとりだ」
「何故じゃ?」
「雷魔法が成功して雷が川に落ちたら気絶した魚が浮かんで来て夕食のおかずになるだろ」
「なるほど、いい考えじゃな!」
俺はギターを手にして竹笛の音色を自分なりに考察し、分析した音色を奏でた。
「サンダーボルト」
そして俺は勢い良く叫んだ。すると天空で雷の音がすると落雷が凄まじい勢いで落ちて来た。
「成功だ!」
そう思った瞬間、落雷はあすかを直撃した。
「ぐばばばばぁぁっ~!」
電気ショックであすかは声にならない声を出すとしばらく痙攣していた。
「おい、あすか! 大丈夫か!」
俺はあすかに必死に声をかけた。屋敷の方からティナが駆け付けた。
「旦那さま、ご実家で病気を癒やした音色をお聞かせになったらよろしいのでは?」
気が動転していた俺はティナの言葉にハッとして慌てて治癒魔法の演奏をした。
少しするとあすかは目を覚ました。
「おいレックス! これはどういう事じゃ!」
「少々、失敗したようだ」
「失敗じゃと!」
「まぁ、まだ実験段階だったから仕方がなかったな」
「我は実験動物か! 死ぬ所じゃったんだぞ!」
「実験に失敗は付きものだろ、無事で良かったじゃないか」
「レックス、お主いいかげんにしろ!」
怒りが爆発したあすかにティナが声をかけた。
「ヌシ様、少し大人になられましたか?」
俺はあすかの方を見ると三、四歳ほど成長したかのように見えた。
「ホントだ! 少し大きくなってるな」
「そうか、我も見てみたいのう」
あすかはそう言って立ち上がると川の水面を覗き込んだ。
「ぎょええぇぇ~! 我が成長しておる!」
「何をそんなにビックリしてるんだよ」
大袈裟に驚くあすかに俺は尋ねた。
「だって、我が人間の見た目で一歳分、成長するのに最低でもエルフの十歳は必要とするのじゃぞ!」
「そうなのか、ティナは人間の何年分で一つ歳をとるんだ?」
「女性に年齢にかかわる質問をするなんて失礼ですわ!」
ティナはそう答えると俺の頬をぶった。
「おい! 何するんだ! あすかの年齢を知りたかっただけなのに」
俺は頬を抑えながらティナに文句を言うとあすかが応えた。
「まじりのないエルフは人間の十年で一つ、歳を取る感じじゃな」
「すると、あすかは今、軽く千年超える程は生きているのか」
「そうじゃな」
「そう考えると確かにいきなり三、四歳成長したら驚くよな。三、四百年経過した様なものだしな」
「そこじゃよ、レックス! 何故、我が突然、年を取ったのかじゃ?」
「そんなもん、雷のせいだろ! あすかの成長を促進する効果でもあったんだろ、俺に感謝だな!」
「我は被害者じゃ! 感謝する事などないわ!」
「そうか、それは残念だ」
「残念がるでない、我はどうやら交配出来る年頃になった様じゃ! レックス、お主試してみぬか?」
「寝言は寝ていえ! それはそうと良かったな、交配して子孫を残せるようになるという変化を経験して…… その経験は大人に一歩近付いた事に値するな」
「そうじゃろ!」
「それではお祝いにごちそうにしましょう」
「わ〜い!」
「やっぱり、まだまだ子どもだな、今日は色々あって疲れたよ」
喜ぶあすかを横目に俺は呟いた。




