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第二十五話 あすかという名



 翌日、俺達は玄関の前にいた。家族と使用人達が見送りに来た。


「坊っちゃん、寂しくなりますな」


 使用人のサンバーは手で涙を(ぬぐ)った。


「レックス、ありがとう病気を治してくれて! 何かあったらいつでも戻って来て良いのよ」


「母さんこそ身体に気をつけて」


「お兄ちゃんありがとう」


 母と泣きじゃくる妹を抱き寄せて別れの挨拶をすました。


「なあ、レックス、そのギター置いていってもらえるか?」


 申し訳なさそうに父が聞いてきた。


「親父の部屋にお前用のギターがあったので持って来たからそれを代わりに持って行って欲しい。」


「ああ、もちろんだよ! 俺がここに戻って来たのも母さんの病気を治す事が出来たのも亡きレオーネ兄さんの導きによるものだと思うからここに置いていくよ!」


「ありがとうレックス」


 父はそう言うとひとすじの涙を流した。


「兄さん今までありがとう、これからはこの家でみんなを見守ってくれ」


 俺は兄さんに別れの挨拶をした。


「じゃあ、行って来るよ!」


 俺が手を振ると家族皆が手を振って姿が見えなくなるまで、見送ってくれた。その後、俺達は魔法陣の場所まで戻って来た。


「レックス良かったのか? 兄とともに歩まなくて」


「今の俺は一人じゃない、あすかもティナもいるしな」


 あすかの問い掛けに俺は答えた。


「そうか、でもレックスには悪い事したのう」


「何が?」


「我のワガママで楽器を新品にした事じゃ」


「何だ、そんな事か」


 バツの悪そうなあすかを片手で抱き寄せ頭を撫でた。


「そう言えばレックスよ、お主、気になる事を言っておったな」


「気になる事?」


「我に仮の名を名付けたであろう」


「ああ、ペスとかジョンとかの事か」


「違う!あすかと言う名じゃ!」


「いい名前じゃないか」


「ふざけるでない! レックスの妹によれば馬の名というではないか!」


「気に入ってそれで良いと言ったのは誰だ?」


「ぐぬぬ、我じゃ! しかし事前に説明が必要だったと思うぞ!」


「まあ、確かにそれは悪かったが、以前も言ったように、異世界の古都の名で、祖父が参加した魔王討伐の功績により王から賜わった馬に名付けたんだから悪くないだろ」


「旦那さま、馬は長生きですの?」


「俺の家では祖父の功績を代々伝える為に馬の名前にあすかと名付けているんだ。さっきの馬で三代目かな」


「そうでしたの」


 ティナが納得した所であすかが呟いた。


「う〜む、馬の名と言うのは納得いかぬが、仕方あるまいか」


「俺はあすかという名前好きだぞ! お前にこそ相応しい名前だよ」


「そ、そうか」


 あすかを見てそう言うと満更でもない表情をした。


「転移魔法陣が見えて来ましたわ!」


 ティナが指を指した。


「とりあえず、最初のところに戻るのはどうじゃ?」


「あの野営地か、それは良いな」


「良いですわね!」


 明るい表情のティナとともに転移魔法陣の上にのると視界は歪み(しばら)くすると見慣れた光景が現れた。


「帰って来たわね!」


「そうじゃの」


「そんなに時間も経っていないから代わり映えしないだろうな」


 そんな事を言いながら魔法陣から暫く歩くと何か様子が変だった。


「何かいるぞ」


「様子を見に行ってきますわ」


 ティナは姿をけした。



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