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第二十三話 奇跡を起こす幼女

「ところで母さんの様子はどうなんだ?」


「天気がいいから調子が良いと思うわ」


「天気が良いから? 普段はあまり体調良くないんだな」


「兄さんの顔を見ればきっと元気になるわ」


「でも俺は母さんと父さんには迷惑かけてるしな」


「そんな事気にして、二度と会えなくなったらどうするのよ」


 ジャスミンが口にした。


「後悔しないために行って話をした方が良いわ!」


 ティナが横から口を挟んだ。


「やっぱり、踏ん切りがつかないや」


「お母様の部屋に入り、横にすわって手を握るだけでもいいの! お母様に会う事が、これから先の、旦那さまの人生を生き抜く大切な支えになるわ!」


「そうだなティナ、そのままにしていれば、俺は残りの人生を後悔して、自分自身を責め続けるかもな」


「そうですわ! お母様にお会いして後悔ではなく、少しでも暖かい思い出にしましょう!」


 ティナは強く俺の背中を押した。


「お兄ちゃん行くわよ!」


 ジャスミンは勢いよく母親の部屋のドアを開けた。


 そこにはやつれて苦しそうにベッドに横たわる母親がいた。(かたわ)らには父が付き添っている。


 俺は逃げ出したくなったが、母の体調への心配がまさり、声をかけた。


「母さん、大丈夫?」


 ふりしぼって出て来た言葉がそれだった。何やら気まずい雰囲気になった。


「お母様、ワタクシこのたび旦那さまにプロポーズされた婚約者のティナと申します。どうかお見知り置きを」


 そこへ唐突に割り込み、口をはさんだティナが格調高く述べた。


「お前、婚約したのか?」


 父が驚くとともに気まずい雰囲気は跡形もなく消えた。


「いや、俺は婚約した認識は無いが、婚約した事になった」


 父に説明していると母が身体を起こした。


「こちらこそ息子の事よろしくお願いするわ」


「ありがとうございます! お父様お母様、よろしくお願いします」


 そう言ってお互いに頭を下げた。ティナは顔を上げるとこの状況に酔ったのかウットリとした表情をしていた。


「俺はこのまま結婚してしまうのか」


「そういう事になりそうだな」


 そう言って、父はため息をついた。


 そんな時、母が突然苦しみ出した。


「ジャスミン! 俺のギターを持って来い!」


「わかった!」


そう言って、妹は部屋を駆け出して行った。


 ジャスミンがギターを持って母の部屋へ戻って来ると俺はギターを受け取って、弾き始めた。


「おい、母さんが苦しんでるんだぞ! 演奏を止めろ!」


 父がそう言うが、構わず演奏を続けると苦しみが和らいだように見えた。


「ステラ、大丈夫か?」


 父が母に声をかける。


「デックス、ありがとう、身体の調子が少し良くなったみたいだわ」


 母はそう言うと苦しさから解放されたのか、そのまま眠ってしまった。


「今のは何だ? どうして少し良くなったんだ?」


 父は驚いたように俺に聞いた。


「俺は治癒魔法を多少使える。王立魔法アカデミーの試験で合格する為には聖属性由来の治癒魔法の適性が必要な条件だったんだ」


「音楽の成績だけじゃなかったのか?」


「幸運な事に治癒魔法に適性があった。そうでなければ俺は音楽だけでは合格出来なかった」


「そうなのか? だったらもっと演奏を聞かせれば完全に治るんじゃないか?」


「そう出来ればいいが、そんな事出来るのは膨大な魔力を持つ聖女くらいじゃないか」


「そういうものなのか」


 そう答えると父はションボリとしていた。


「俺、まだもう暫くここにいるから何かあったら呼んでくれ」


「わかった」


 父はそう答えた。


 翌日、母の様子を見るため部屋へ行くと昨日より調子は良さそうだった。


「体調が維持されるだけで根本的な解決にはならないな」


「ふむ、ワシもポーション等も取り寄せて与えてみたが一時的な効果しかなかったな」


 父と話をしていると、陽の射し込む窓辺にいたリスが突如、無数の光の粒子を纏った。


「リスが光ってるぞ!」


 父が言うと、その光は互いの輝きを重ねていくと光の糸が織りなすように柔らかな曲線を描く。


「まぁ! キレイ」


 一瞬の静寂の後、まばゆい光の中から幼女が現れた。


「だれ!」


 妹が驚いて声をあげたが、父と母は声が出なかった。


「このまま回復魔法を掛けても回復せぬぞ! 我がなんとかしてやろう」


「ああ、頼む」


 幼女姿のあすかは手のひらから光の粒子を放出した。緑を帯びた光が母の身体をつつむと強烈な光が放たれた。


「まぶしい」


 反射的に目をつむるが、しばらくして目を開けると光は消え、母の姿が見えた。


「ステラ、なんだか顔色良いな。調子はどうだ」


 父が言うと母は手足を慎重に動かし調子を確かめる。


「何か若い頃に戻ったみたいに身体が軽いわ!」


「お母さん」


 涙を浮かべたジャスミンが呼びかけるとベッドから降りようとした。慌てて父が手を添えようとするも補助なしで立ち上がった。


「自分の身体じゃないみたい!」


「お母さん、良かった!」


 妹は母に抱きつくとうつむいて涙を流した。それを見て家族で喜びあった。


「レオーネ兄さんのおかげだよ! 兄さんの残してくれたギターが母さんの命を救ったんだ!」


 兄さんのギターを母に見せた。


「レオーネ、ありがとう」


 そう言うと受け取ったギターを抱きしめて涙をこぼした。それを見て俺はあすかにお礼を述べた。


「あすか、ありがとう」


「そのギターもようやく次の曲を奏で始めたようじゃな」


 あすかは得意げな顔をした。そこへ父が俺に尋ねてきた。


「ところでその子供はお前の隠し子なのか?」


「はあ!」


 何か不穏な空気が漂い始めた。





 


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