第二十一話 勇者一行に同行した祖父
「何だか懐かしい匂いがするな」
「ここが旦那さまの故郷なのですね!」
そこは実家からやや離れた、子供の頃に秘密基地をつくってよく遊んだ森の中だった。
「相変わらず少し離れた場所に転移するんだな」
「人目につくと不味いじゃろ」
「そうだな」
「ところでレックスの祖父は転生者と言うたな」
「ああ」
「話してみよ」
「いいぞ」
「私も興味ありますわ!」
「この国の連中が召喚魔法で異世界から召喚したらしいんだが祖父に魔法の適性は無かったそうだ」
「ふむ」
「他の召喚者達は王国の魔道士を遥かに上回る能力があって勇者と持て囃されたそうだ」
「そうじゃろのう、勇者とやらを召喚する為じゃからな」
「そんな祖父も召喚者と言う事で勇者一行に加わって魔王軍討伐に参加したと言ってたな」
「ほう」
「勇者一行について回るも足手まといだったが、手に持つギターを戦闘後や旅の途中に弾いたそうだ」
俺は空を見上げた。
「勇者達も異世界から連れて来られ、寂しい思いをしていたようで、戻れなくなった故郷への思いを祖父のギターによって紛らわせていたようだ。」
「成る程のう」
「祖父が元の世界では音楽を志す者としては吹けば飛ぶような存在だったが、この世界ではギターで勇者達を感動させられた事が嬉しかったて言ってたな」
あすかを見て続けた。
「こうした事もあって、他の勇者達の勧めもあって、貴族階級に取り立てられ、小さいながらも家や土地を授かったらしい」
「旦那さま、異世界とはどのような世界なのでしようか」
「祖父が言うには異世界にはこの国の王城よりも大きな建物がいっぱいあって金属の塊が空を飛んでいたそうだ」
「あんまりピンと来ませんわ」
「そうじゃな」
「当時の俺には王城がどの程度のものかわからなかったが、実際に王城を見たら、祖父の言ってた事が嘘くさく感じたな」
「見たことないものを説明されても自分の想像を超えるものはよく分からぬからのう」
「そうですわね」
「それと車輪の付いた人を乗せて走る金属が行き交う路上で、ギターを弾いていたら突然景色が歪んで王城の中に居たんだと」
「私、馬車なら見たことありますわ」
ティナはキラめく瞳で俺の方を見た。
「俺は乗った事があるぞ」
「それは凄いですわ」
色々話をしているうちに実家の前まで来た。
「我は人間とあまり関わりとうない」
そう言うとあすかは顕現していた幼女の姿を解いて近くのリスに憑依した。それから暫く歩くと実家が見えた。
「ここが俺の実家だ」
「まあ! ここが旦那さまのご実家なのですね! 放し飼いのニワトリ、その周りに畑に家畜小屋もあるのですね」
ティナがそう口にした時、妹と使用人のサンバーが通りかかった。
「お兄ちゃん?」
「ジャスミン?」
「何してるの? こんな所で」
「レオーネ兄さんの形見のギターが壊れたので戻って来た」
俺は妹のジャスミンにギターを見せた。
「壊れていないじゃない、それどころか新品みたいだわ!」
「あっ、直してもらったの忘れてた」
「ところで、お兄ちゃん、この人誰?」
「あぁ、こいつは俺の連れのティナだ」
「はじめまして、婚約者のティナです! お見知りおきを」
「お兄ちゃん、いつの間に婚約したの!?」
妹は驚いた。
「坊ちゃま、おめでとうございます!」
使用人のサンバーが目頭を抑えた。
俺達が、家の中に入ると妹は俺の部屋へ案内した。
「お兄ちゃんの部屋そのままになっているからそこを使ってね」
「出て行って以来、何も変わっていないな」
「そうね、昔のままよ。じゃあ私、用事があるから行くわね」
そう言って部屋から出ていく妹に俺は尋ねた。
「ティナの部屋は用意していないのか?」
「なに言ってるの、婚約者でしょ!」
妹はそう言ってその場を去ってしばらくたったその時だった。
ティナは、ニチャーッとした笑みを浮かべ俺にしなだれかかってきた。
「俺は離れた所で寝るから」
ティナの不気味な笑みに恐怖した俺はティナを突き放した。
「一緒に寝ましょうよ!」
「いい加減にしろ! 放っといてくれ」
俺がそう言うとティナは、ひざから崩れ落ちた。
「私の事、嫌いになったのですね」
その時、妹が戻って来た。




