第二十話 レックス、神器の魔導ギターを手にする
翌日、シャーマンのバジャがティナに、これから先の心構えを尋ねるのを俺は見ていた。
「覚悟は出来ておるか?」
ティナは真剣な顔をして頷く。
「人間の一生なんて一瞬だよ! お前はその後もひとり生き続けなければならないんだ」
「わかってる」
バジャはティナが無邪気に返事をするのを見ると憂いを帯びた表情になり、涙をこぼした。
「レックス出発するぞ」
あすかが号令を出したので必要な旅の準備をして出発しようとした、その時だった。
「そうじゃ!」
そう言って族長のスカリョが席を外し、暫くして何かを持って来た。
「これを開けてみろ」
俺にマジックバックの麻袋を手渡した
「代々我らに伝わっている魔導神器じゃ」
俺は渡された麻袋からギターの様な楽器を取り出した。
「 木材と金属が入り混じった匂いがするな」
楽器から漂う独特な匂いが俺の鼻腔をくすぐった。
「 バイオリンやリュートとは違って流線型で表面はやけにめらかだな、でも何か突起物があるぞ、これは何だ」
手にした楽器は鈍い光を放ち、感触はひんやりとしていた。
「 弦はガット弦や羊腸弦じゃなく、細く銀色に輝く金属か」
俺は弦の下を見た。丸い穴のある所には金属状の物体がはめてあった。
「一体、丸い穴のサウンドホールは何処にあるんだ! 何か小さい小枝くらいの穴らしきものがあるけど、これじゃ音も出ないだろ」
俺は試しに弦を弾いてみた。
「チリン」
表紙抜けするほど 微弱で頼りない 金属音 だった。
その音はアコースティックギターのように、ボディ全体が共鳴して大きな音を出すことはなく、 遠い部屋から聞こえる微かな響きのようだった。
「 これは壊れているのか?」
「ワシラも代々魔導神器を演奏しようと試してみたが無理じゃった、お主なら出来るかも知れんのう」
俺が戸惑っていたところに、スカリョが口を挟んだ。
「お主の持ってる物以外にも、まだ入っておる。祝いじゃ! その袋ごと全部持ってゆけ!」
「そんな恐れ多いもの持っていけるか!」
俺はそう言ったが、振り向きもせずスカリョは立ち去っていった。
エルフの集落のほとんどの者が見送りに参加したが、スカリョの姿は無かった。
次代の族長予定の副族長のスカリォが代わりの代表として挨拶を行った。
「ティナ元気でな」
「はい、お父さま行ってまいります」
ティナの父親だった。
ティナはにっこり微笑みながら短い挨拶をしたが、その覚悟のある瞳に父親のスカリォは黙して語らなかった。
「娘をよろしく頼む」
スカリォはレックスに頭を下げた。
「承知しました」
俺は短く返答してその場を後にした。
「ティナ本当について来るのか?」
「ええ!」
ティナはにっこり微笑んだ。
俺達はエルフの集落を後にした。
それから少し進んだ所であすかに尋ねた。
「あすか、さっきの楽器どうすりゃ弾けるんだ?」
あすかは俺を見た。
「経験値が足りないようじゃな」
「それを高めれば弾けるようになるのか?」
「それは何とも言えんのう、他にも何か別な要因があるかもしれぬし」
「経験値はどうすりゃあがるんだ?」
「魔物狩りが手っ取り早いかもしれぬが、レックスの場合、あの楽器を扱う為には、お主のギターの腕前を活用した方が良さそうじゃな」
「それもそうだな、音楽を活かさないと無意味かもしれないな。それはそうと、あすかは他人のステータスとかも解るんだな」
「そうじゃな」
そんな会話をあすかとしていると転移魔法陣がある場所まで戻って来た。
「それじゃレックスの実家に行くとするかのう」
「何の事前情報もなしに行けるものなのか?」
「大丈夫じゃ! 我に任せよ」
そう言うと転移魔法が発動した。
転移魔法が発動すると普通なら十日以上かかる距離を一瞬で俺の実家近くに移動した。




