表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/37

第十九話 プロポーズ?

「ティナお願いがあるんだけど、手に持っている楽器、貸してくれないか?」


 ティナの前に立つとティナは少し戸惑った表情をした。


 俺が片膝をついてティナに視線を合わせるとティナの瞳は次第に大きく見開かれ、瞳の奥に光が宿った。


「どうぞ」


 ティナが差し出したその手は(かす)かに(ふる)え、楽器を落としそうになったが、俺はなんとか受け取り礼を言った。


「ありがとう」


 ティナが少し(うつむ)くと頬に赤みがさし、同時に少しはにかんだ。


 俺は楽器を手に取ると触り心地を確かめた。ネックとしての木の棒に弦が一本、ボディの共鳴胴には頭骨が装着され、それを弓で引くようだ。


 針葉樹のヤニを弦に擦り付け、音を鳴らすと澄んだ音を出したので色々試した。


 弦を指で押さえ鳴らすと、その音は素朴でありながら複雑な響きを奏でた。


 今まで聞いたことのない音色にエルフたちは戸惑うも物音をたてずに聞いていた。


 静けさの中にレックスの演奏だけが鳴り響いた。


 弾き終わると歓声がわいた。俺は演奏の評価以上の歓声が沸いた事に違和感があった。


 ティナを見ると(うつむ)いて目の焦点が合わないまま、何故(なぜ)かニヤついていた。


「おめでとう!」


 隣にいた族長が俺に声をかけた。


「今日はめでたい日だ!! 大いに楽しもう!!」


 族長はあたりみんなに声をかけ、それを合図に馬鹿騒ぎが始まった。


 意味がわからない俺は族長に聞いた。


「聖なる火が灯る時、祖霊と一つになった演奏者の楽器が、異性によって演奏されるとき婚約の成立である」


「はああっ! 嘘だろ! 俺はティナにプロポーズした事になったのか?」


「その通りじゃ! それともわしの孫が気に食わんとでも言うのか」


 スカリョは怒気を込めていった。


「俺はそもそもそんな事は知らないし無効だ!」


「知らなかったとはいえ演奏した事実は変わるまい、ほれ見てみよ! 皆の衆の喜ばしい事! これを見て断れるのかね」


 俺は何も言えなかった。


「旦那さま、これからよろしくお願い致します」


 先程まで(ふさ)ぎ込んでいたティナは(うつむ)いた顔を上げると輝く瞳で俺を見つめた。


「そんな目で俺を見るんじゃねぇ!」


「そんなに照れないで下さい」


 ティナは明るく微笑んだ。


「あすか! 俺はコイツ等に()められたんだ! どうにかしてくれよ」


 冷めた目で、その様子を(なが)めていたあすかに俺は助言を求めた。


「レックスはティナにプロポーズしたんじゃろ」


「そういう事になってるみたいだな」


「ならば、責任取らねばならんな」


「俺は()められたんだ!」


「レックスが、確認もせず軽率な行ないをした結果じゃ、責任を取らねば、嘘つきになってしまうぞ!」


「嘘は良くありませんわ!」


 ティナはここぞとばかり、口をはさんだ。


 そもそも、こんな俺で良いのか? これから先、本当にやって行けるのか? そう考えると俺はだんだん恐ろしくなって来た。


「助けてくれ! あすか! お願いだ!」


「我は知らぬ、レックスが()いた種じゃ! オノレで解決するがよい」


 あすかに見放された俺に、ティナが弾んだ声で話し掛けた。


「これからはずっと一緒よ! 生涯離れませんわ! あ、な、た」


「よかったのう! レックス おめでとう」


 あすかは食べ物を(むさぼ)りながら、気持ちのこもっていない祝辞を述べた。


 俺の希望に()ちたはずの人生に暗雲が垂れ込み始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ