第十六話 レックスの邸宅
「広過ぎて何か落ち着かないな」
「そうですわね」
「これでも加減して創ったつもりじゃが」
「外から見ても何処ぞの貴族の邸宅の様相を示してるのに、中に入るとその数倍はでかい。どうなっているんだ?」
「それはな、空間魔法で中の空間を広げたからじゃ」
「何か狙いがあるのか?」
「あるわけなかろう」
「何もないのか」
「広い方がインパクトあるじゃろ」
「そんな事で無駄に広い空間を……」
「レックス、お主は何もわかっておらぬな」
あすかは真剣な顔でレックスを見て続けた。
「無駄な事に己の資源を費やしその無駄を他の連中に見せつけ、己の力を誇示する。それが主たる者の使命じゃ!!」
くわっ!! と一喝した。
「いや、俺、主でもなんでもないし、どーでもいいよ! どうせ、俺達以外、誰も来ないだろ!」
「そんな事ありませんわ、旦那さま」
ティナは強い口調で俺を見た。
「ティナ」
「はい!」
ティナはレックスが言う言葉に期待して目を輝かせた。
「旦那さまというのはヤメてくれないか? それに、さっきもあなたとか呼んでただろ!」
「ハイ?」
ティナは困惑した。
「俺にはレックスという名前があるんだ。それに主というのも今の俺にはおこがましい」
「わ、私は、あなたの事をお慕いしています! それにこの邸宅にふさわしい主人の呼び名は旦那さましかありませんわ! だから軽々しく名前を呼ぶなんて出来ませんの!」
めげずにティナは訴えた。
「そうか、勝手にしろ」
俺がそういうと、パァッ! と目を見開き笑顔になった。それ以降、旦那さまとしか呼ばなくなった。
暫くして、
「レックス、ギターとか言う楽器を奏でてみよ」
「そうだな、演奏してみるか」
「竹笛の演奏が素晴らしかったのでその楽器の演奏も楽しみですわ!」
ギターを手に取り、遠い昔、兄が良く弾いてくれた曲を演奏した。
「ふむ、それがギターの音色か、昔、聴いた事のあるような無いような、どこか懐かしい音色に似ていたのう」
「知っているのか?」
「あまり良く憶えておらぬ」
「そうか」
一瞬、俺は何処かでギターが広まっているのを期待したが、違ったようだ。
「決めたぞ! 我はお主の実家にともに参るぞ」
「私もあなたのご両親に結婚のご挨拶したいですわ」
ティナはどさくさ紛れに意味不明な言葉をしのばせた。
こうして、一緒に行くことになったので旅のしたくをはじめた。
「旅の食料の準備できたか?」
ティナに尋ねた。
「クマの燻製に塩漬け、どんぐりの粉をかためクマの油で揚げたモノ、最低でも一月は持ちますわ」
「それだけ食料があれば充分だな、でも荷物が少し多いな」
「我に任せておけ」
あすかはそう言って目の前の空間をいじって捏ねくりまわすとアイテムボックスが出現した。
「それにしても、こんなにも簡単にアイテムボックスが出来るものなのか? ティナ」
「私、存じませんわ」
「そうだよな」
俺は目の前で起きたことに、現実味がわかなかった。
「レックス、お主が管理するとよい、遠慮せず受け取っておけ」
「いいのか?」
「今までの礼じゃ、気にするな」
俺は遠慮なく受け取った。
第二章終了です。




