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幕末動乱ランドセル〜ペリー提督と紡ぐ、日本との架け橋〜  作者: きたみ詩亜


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第1話 ランドセルの少女と黒船

 あたし──嘉永よしながももか。高校二年生、17歳。

 今日はいつも通り、小学生コスプレで配信中だ。


 ミントグリーンのパーカーに、ピンクのチェックのスカート。

 そして、背中にはランドセル。


 見た目は小学生。中身は帰国子女で英語ペラペラ。

 このギャップがウケて、配信はそこそこ人気だった。


「みんなー、今日も元気にいくよー!」


 コメントが画面に流れる。

 ランドセルの中には、教科書とノートとスマホの予備バッテリー。


 いつもの午後。

 ──のはずだった。


「……え?」


 画面が、急に真っ白になった。


 光。

 耳鳴り。

 体がふわっと浮く感覚。


「ちょ、なにこれ!?」


 次の瞬間──


 どん、と地面に足がついた。


 見上げると、木造の建物。着物姿の人々。

 空気が、やたらと生々しい。


「……ここ、どこ……?」


 屋台の匂い。馬の足音。

 まるで時代劇のセット。


 そのとき。


 ──ボォォォォォン。


 低く重い音が、海の方から響いた。


 人々がどよめく。


「黒船だ……!」

「異国の船だぞ!」


 振り向いた先。

 海に浮かぶ、巨大な黒い船。白い煙。


「……うそ……」


 歴史の教科書が頭に浮かぶ。


「黒船……」


 つまり──


「幕末!?」


 足が震える。


 そこへ、数人の侍が近づいてきた。


「貴様、何者だ!」


「その奇妙な格好……どこの国の者だ!」


「え、あ、あの……」


 どう説明すればいいの!?


「も、ももかです!」


 侍たちの視線が、あたしの服とランドセルに集まる。


「その背負い物は何だ」


「ら、ランドセルです……」


 意味通じてない。


 その奥から、背の高い異国人が現れた。

 軍服。堂々とした雰囲気。


 ──教科書の顔、そのまま。


「……まさか……」


 目の前の男は、ゆっくりと英語で言った。


「私は、アメリカ合衆国提督、マシュー・ペリーだ」


「……やっぱり……」


 完全に歴史の中だ。


 ペリーはあたしをじっと見て、続けた。


「君は、日本人なのか?」


 ……ここだ。


 あたしは、英語で答えた。


「Yes. I’m Japanese. But I can speak English.

 (はい。私は日本人です。でも、英語を話すことができます)」


 その瞬間。


 ペリーの目が、見開かれた。


「……ほう」


 周囲の侍たちがざわつく。


「異国語を話したぞ……」

「子どもなのに……」


 あたしの心臓はバクバクだった。


(やばい……でも、黙ってたらもっと危ない……)


 ペリーは、少しだけ笑った。


「面白い少女だ。

 ももか君、私の通訳として働かないか?」


「……え?」


「日本と、我が国の“橋渡し”になってもらいたい」


 通訳。

 橋渡し。


 そんな言葉が、頭の中でぐるぐる回る。


(断ったら……どうなるんだろ)


 侍たちの視線は鋭い。

 逃げ道は、ない。


「……わ、わかりました」


 声が震える。


「謹んで……お引き受けします……」


 ペリーは満足そうにうなずいた。


「よろしい。では、こちらへ」


 連れていかれるあたし。

 ランドセルが、背中で揺れる。


 江戸の町。

 黒船。

 異国の軍服。

 そして、あたし。


(……あたし、歴史の中に迷い込んだんだ)


 小さなランドセルを背負ったまま。


 ──こうして、

 幕末とランドセルの物語が始まった。

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