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第2話『神聖女、自由を手に入れ馬を救う』

 ――間に合ったようね。


 今、木の裏から様子を確認しているのだけど、お馬さんが狼系のモンスターに襲われている。

 正確には退路を断立たれ、数本が密集している木の壁を背に追い詰められている状況。

 綺麗な白い毛並みには、攻撃を受けたであろう傷を自身の地に染められてしまっている。


 いけない、助けてあげないと。


「女神様の願いを体現するため、どうぞお力を授けてください――【ヒールリターンアーマー】」


 よし、準備はできた。


「そこのモンスター! 私が相手よ!」

『――ガウガウ!』

『ヴァウ!』

「さあ、かかってきなさい」


 今の私は女神様のお力をお借りして、つよつよモード。

 オートヒールに、ヒールで回復をした分のダメージを力に変えることができる。

 そして魔法が発動した時点で、攻撃力と防御力のバフがかかって身体強化されて――つまり、最初から強い!


『ンガッ!』

「たぁああああああああああっ!」


 こちらからも走り出し、狼系モンスターの顔面に拳を叩きつける。


『ガウッ!』

「次次次ぃ!」


 大胆に蹴って、振りかぶって殴って、鷲掴みにして投げ飛ばして。


 次々に討伐し、モンスターは次々に消滅して魔石をポロポロと落ちていく。


「ふんっ、私にかかればあっという間に全滅ね」


 私は【神聖女】と呼ばれ、ダンジョンの封印をするために女神様から授かった力を使い、神聖やら魔法やらを行使して封印の仕事をやっていた。

 ダンジョンの入り口で祈る作業があるのだけど……実は、見張りが居なくなるからダンジョンに入ってモンスターを倒していた!


 だから、これぐらいの雑魚モンスター相手なら余裕の余裕!


「いけない。ねえあなた、大丈夫ではないわよね」


 お馬さんは緊張から解放されたからなのか、ドサッと地面に倒れ込んでしまった。

 痛々しく目を背けたくなるような傷が複数あるのだから、もっと静かにお座りしてほしかったけど……それほど疲弊しているということ。


「神聖女の腕が鳴るというものよ」


 純白でもふもふな体に手を触れさせてもらい、回復を試みる。


「大丈夫、大丈夫だからね。【スウェルヒール】」


 出血量が酷いし、顔を背けてしまうほど肉が裂けている個所もある。

 普通のヒールでも回復はできるけど、時間がかかるし、傷口は塞ぐだけになってしまう。


 でもこれなら――!


『ヒヒィン』

「あら、お目覚めが早いのね。よく頑張ったわね」


 気を失ったかと思っていたけど、目を閉じて痛みに耐え続けていたのかしら。

 純白な体毛で、まるでお姫様みたいな美しさだけど、思っている以上に我慢強く意志が強いのかしらね。


「あらあら、感謝してくれているのね」


 体は起こしていないけど、顔をすりすりとしてくれている。

 もふもふというよりサラサラ、と言った方が正しかったようね。


「凄い。傷が治っていることもわかるのね」


 人間の言葉を理解できているとは思えないけど、痛みが引いたからなのか、すぐに立ち上がってしまった。

 私も立ち上がり、膝についた土を払い終えて顔を上げると。


「あなたはお好きなところに行きなさい」

『ブルブルゥ』

「私も今日から自由を手に入れたの。ぜひ先輩にいろいろと教えてもらえたら嬉しかったのだけれど。ん?」


 頭を撫でてあげようとしたら、数歩前に出たと思ったら横腹を押し付けてきた。


「え、もしかして乗れってこと?」

『ヒヒーンッ!』

「あなたって不思議なお馬さんね。まるで私の言葉がわかっているみたい。えっ」


 突然、背後からフワッと何かで撫でられた気がして振り返ると、撫でた正体である尻尾が左右に動いていた。

 もしかしてだけど。

 人間と同じ基準で考えていたから返事は声で、と思っていたけど、このお馬さんは尻尾でも返事をするみたい。


 そこにも驚いたけど、それよりも本当に私の言葉を理解しているようね。


「直接乗ったことがないから大丈夫かしら」

『フンッ』

「えっ」


 まさかの、お馬さんが地面に膝をついて姿勢を低くしてくれた。


「ふふっ、ご親切にどうもありがとう――おおっ!?」


 跨がせてもらったと思ったら、一気に目線が高くなったものだから驚いてしまう。


 凄い、本当に凄い。

 こちらの世界で生を受けてからは経験がないけど、転生前は小さい頃に肩車をお父さんにしてもらったっけ。

 たぶんそれ以上の高さはあるだろうけど、感覚的には同じだと思う。


 それにしても、さっきも思ったけどふわふわさらさらな体毛はとても気持ちがいいわ。


「私、街に行きたいのだけど。行き方はわかるかしら」

『ヒヒィーンッ!』

「うわぁっ!?」


 返事をしてくれたのだと思うけど、急に前足を上げて姿勢が斜めになるものだから、驚くと同時に、落っこちないようにしがみついた。


「え、もしかして――」


 このまま凄い勢いで走り続けたら手綱はないし、衝撃で振り落ちちゃううううううううううう!


「あれ?」


 激しい揺れを感じない……?


「もしかして、あなた精霊さん?」

『ヒヒィーンッ!』

「えぇ!?」


 なるほど。

 たしかに精霊さんだったら、人間の言葉は理解できる。

 そして、精霊特有である主だけに発動することができる精霊魔法。

 今は宙に浮いているかのような精霊魔法が発動していて、そのおかげで乗っているのに浮いているような感じになっている。


「すごーい! あっはは~!」


 いろいろと条件は違うけど、車に乗りながら窓を開けて風を感じているアレを全身で味わっているような感覚。

 車を運転したことはないから助手席か後部座席からの感想だけど。

 でも、もしかしたらバイクとかの感覚――ああそうだ! ジェットコースターに乗っているのと同じ感じだ!


「うっひょ~っ!」


 ちなみに今、時速どれぐらいで走っているのかな。

 高速度道路とかジェットコースターの感覚なら、70キロぐらい?

 ん~、わかんない!


 そして、精霊のお馬さんなら普通とは違い、自身も精霊魔法で補助しているから速度も距離も段違い。


「このまま街へレッツラゴー! ゴーゴーゴー!」


 ここ十数年、転生前の世界で使っていた言葉を封印していたから、解放された気持ちよさにについ出てしまう。

 でも、今すっごく楽しい! 楽しくて仕方がない!


「きゃぁ~~~~~最高ぅうううううっ!」

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