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絶禊ノ剣  作者: ハム大福
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第十三話:漆黒の夢、遠い日の記憶


温泉での休息を終え、心身ともに回復したシンたちは、本部からの連絡を待つため温泉宿でもう一泊することになった。


その夜、シンは、羅睺との戦いとは違う、奇妙な夢を見ていた。

それは、幼い頃の記憶だった。

まだ羅禍や虚淵、羅睺といった言葉を全く知らない、平和な日常。両親と三人で過ごした、温かい時間。


夢の中のシンは、五歳ほどの小さな子供だった。

「シン、お父さんとお母さんの宝物は、シンなんだよ」

優しそうな笑顔の父親が、シンの頭を撫でる。

「そうよ、シン。だから、この宝物を守るために、私たちは頑張らなくちゃね」

温かい笑顔の母親が、シンを優しく抱きしめる。


しかし、その穏やかな時間は長くは続かなかった。

そしてある日、突然終わりを告げた。

あの日、あたりは禍々しい瘴気に包まれ、無数の羅睺が現れた。


羅睺たちは、シンたちを襲い、両親はシンを守るために、羅睺と戦い始めた。

「シン!いいかい、お父さんの言うことを聞くんだ!」

父親は、羅睺の群れを前に、シンに叫んだ。


「お母さんが、シンを守ってあげるから!」

母親は、シンを庇い、羅睺の群れへと向かっていく。


両親は、羅睺との戦いに、苦戦していた。

羅睺の数が多すぎて、二人の力では、羅睺を滅ぼすことができない。羅睺の瘴気が、シンたちを蝕んでいく。


「シン!羅睺の瘴気に、飲み込まれるな!」

父親が、シンに叫ぶ。

羅睺の瘴気は、シンを蝕み、シンの霊核を、禍々しい光で包んでいく。


その時、父親は、羅睺の群れを前に、シンをまっすぐに見つめた。


「シン、いいかい。お前には羅睺を滅ぼすための力がある。その力は、お前の中に眠っている。その力を使い、羅睺を滅ぼすんだ!」


父親は、そう言って、シンに、羅睺の霊核を滅ぼすための、特別な呪文を教えた。

シンは、呪文を唱え、羅睺の霊核を滅ぼすための力を、羅睺の霊核へと放った。


羅睺の霊核は、シンの一撃によって、光の粒子となって砕け散っていく。

その光景は、あたかも漆黒の宇宙に星々が弾け飛ぶようだった。


羅睺が完全に消滅し、あたりに静寂が戻った。

しかし、両親は、羅睺との戦いで、瀕死の重傷を負っていた。


「シン……よく、やったわ……」

母親は、シンの頭を優しく撫で、そう呟いた。

「シン、お前は私達の希望だ。この私たちの分の未来をお前に託す……」


父親は、シンをまっすぐに見つめ、そう呟いた。

そして、二人は、シンに、ある“もの”を託した。それは、羅睺の霊核を滅ぼすための、特別な御守りだった。


「この御守りを、大切にするんだよ。そして、いつか……羅睺を、羅禍を……虚淵を……すべてを滅ぼすんだ……いずれかは結婚して子供もできて幸せになるのも良いな...」


父親は、そう言って、息を引き取った。

シンは、両親の死に、ただただ、泣き叫ぶばかりだった。



シンは、激しい頭痛と共に、夢から覚めた。全身から汗が噴き出し、心臓が激しく鼓動している。

隣で眠る鈴、トワ、サキの姿が、シンの心を、現実へと引き戻した。


「……父さん、母さん……」


シンは、胸の奥から湧き上がる、抑えきれない感情に、ただただ、涙を流すばかりだった。


「羅禍、羅禍を滅ぼすための力……。虚淵の力……。そして、羅睺の霊核を滅ぼすための、特別な御守り……」


シンは、夢の中で、父親から託された御守りのことを思い出した。

それは、羅睺の霊核を滅ぼすための、特別な御守りだった。

シンは、自分の胸元に手をやる。

そこには、幼い頃、両親から託された御守りがあった。


「これは……。幸せは夢じゃない……。ちゃんと感覚がある……」


シンは、御守りを握りしめ、心が熱くなるのを感じていた。羅睺を滅ぼすだけでなく、誰かを守ること。

そして、誰かと共に、温かい時間を過ごすこと。それが、シンが戦う理由だった。


シンは、自分の過去、そして、両親の死の真相を振り返った。

彼は、羅睺を滅ぼすための力を、両親から託されていた。


シンは、羅禍との戦い、羅睺の幹部、劫羅睺との戦い、そして、虚淵の復活。それらが全て、自分の過去と、両親の死と、繋がっていることを悟った。


「羅睺を滅ぼす……。羅禍を滅ぼす……。虚淵を滅ぼす……。僕の使命は、羅睺を、家族を殺した存在である羅禍を、そして虚淵を、すべてを滅ぼすこと……」


シンは、御守りを握りしめ、固い決意を心に誓った。

羅睺との戦いは、まだ始まったばかりだ。

しかし、シンには、もう孤独な戦いではなかった。彼には、鈴、トワ、サキという、大切な仲間がいる。


「俺は……。皆と、羅睺を滅ぼす。虚淵を、羅禍を……すべてを、滅ぼす……」


シンは、窓の外から昇る朝日を浴びながら、心に誓う。

彼の瞳には、羅睺への憎悪と、羅禍を滅ぼすという、揺るぎない決意が宿っていた。


羅睺との戦いは、これから、さらに激しくなっていく。

しかし、シンは、もう、一人ではない。彼には、大切な仲間がいる。

そして、彼には、両親から託された、羅睺を滅ぼすための、特別な力がある。


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