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絶禊ノ剣  作者: ハム大福
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第十二話:閉ざされた集落の悲劇、そして運命の邂逅


サキとの任務を終え、束の間の平和な日常に戻ったシンは、鈴、トワ、サキの四人で本部からの新たな命令を受けていた。

今回の任務は、羅睺が侵入出来ないようにする結界が張られた山間の集落の様子を確認してくるという、比較的簡単なものだった。


「ったく、こんな簡単な任務に、なんで私たち四人揃ってなんだ。本部の奴ら、頭でもおかしくなったのか。」


サキは、不満そうに呟く。

彼女の言葉は、いつもの鋭い口調だったが、シンには、どこか期待しているようにも聞こえた。


「まあまあ、サキ。これも任務だからさ。それに、みんな一緒なら、どんな羅睺がいても、大丈夫だよ。」


シンがそう言うと、サキは、シンを冷たい瞳で見つめた。

しかし、その瞳の奥には、シンへの信頼が宿っていた。


四人は、結界が張られた集落へと向かう。

集落は、山奥にひっそりとたたずんでおり、静かで、穏やかな雰囲気が漂っていた。


しかし、集落に近づくにつれて、四人は、違和感を覚える。集落には、人っ子一人いないのだ。


「おかしいな。こんなに天気がいいのに、誰も外に出てないなんて。」


シンが、不安そうに呟く。

サキは、警戒しながら、周囲の気配を探る。トワは、真理鏡を使い、周囲のデータを解析する。


「羅睺の霊圧は、一切感じられません。しかし、結界の霊圧が、僅かに乱れています。これは、結界が何らかの力によって侵食されている証拠だと。」


トワの言葉に、シンたちは、警戒を強める。四人は、集落の中心部へと進んでいく。

集落は、まるで時間が止まったかのように、静まり返っていた。

しかし、その静けさの中に、四人は、微かな霊圧を感じ取る。それは、封禍師の霊圧だった。


四人は、霊圧の元へと向かう。そこには、集落の古びた蔵の前に、血を流して倒れている封禍師と複数の力尽きた遺体があった。彼の霊核は、羅睺の瘴気に蝕まれ、禍々しい光を放っている。


「封禍師!?どうして、こんな場所に……!」


シンが、驚きの声を上げる。

サキは、すぐに封禍師の霊核を安定させるため、霊力を込めた手で彼の体に触れる。

しかし、彼の霊核は、羅睺の瘴気に蝕まれすぎて、霊力を安定させることができない。


「だめだ……!羅睺の瘴気が、霊核を蝕みすぎている……!」


サキが、絶望的な表情を浮かべる。その時、封禍師は、かすれた声で、四人に話しかけてきた。


「逃げろ……!この村には、羅睺の幹部が……。羅睺の瘴気が、異常なほど濃い。羅禍が、羅禍の瘴気を吸収し、虚淵を、虚淵を復活させようとしている……!」


封禍師の言葉に、四人は驚きを隠せない。

結界が張られているはずの集落に、羅睺がいる。

それはあり得ないことだった、100年前も400年前も羅睺の侵入を許さなかった村に羅睺が侵入してくるなんて。

そして、その目的が、虚淵の復活。それは、ありえないことだった。


「羅禍が、羅禍の瘴気を吸収し、虚淵を復活させようとしている……?」


シンは、封禍師の言葉を反芻する。

その時、シンは、封禍師の霊核から、禍々しい霊圧を感じ取る。


「こ、これは……羅睺の霊圧じゃない!羅禍の霊圧だ!」


シンが、驚きの声を上げる。

サキも、羅禍の霊圧に、絶望的な表情を浮かべる。


「まさか……!封禍師に、羅禍が憑いているのか……!?」


サキは、そう言って、封禍師の霊核から、禍々しい光を放つ羅禍を視認する。

羅禍は、羅睺の瘴気を吸収し、羅禍を強化している。


「ちっ……!羅禍の、罠か……!」


サキが、舌打ちをしながら、封禍師へと向かっていく。

しかし、羅禍に操られた封禍師は、シンとサキの攻撃を、羅睺の群れで防ぎ、姿を消してしまう。


「逃がしたか……!」


サキは、悔しそうな表情で、羅禍が消えた場所を見つめる。

シンは、サキの肩に手を置き、優しく話しかける。


「サキ、大丈夫だよ。僕たちは、この村をこの村の人たちを守る力を持っているから。」


シンがそう言うと、サキは、シンをまっすぐに見つめ、何も言わなかった。

しかし、その瞳には、シンへの信頼が宿っていた。


四人は、羅禍が憑いていた封禍師の隣にあった仲間と思われる遺体を弔う為に服に触ろうとする。


「...あれ、この紙ってなんだ?」

「...それは式神を召喚する為に必要な御札ですね。」


シンは遺体に手を合わせて、彼の懐にあった式神の御札を受け取る。

これは、羅睺の気配を悟られないようにする式神を一時的に使える御札だった。


「これは……羅睺の気配を消す、式神の御札です。これで、羅睺に気づかれずに、この村の様子を探ることができます。」


トワが、御札のデータを解析し、そう告げる。

シンは、御札を握りしめ、羅睺の気配を消す式神を使う。

「ワンッ」

もらった式神は犬の式神だった。

犬とシンは、羅睺の幹部を探すため行動を開始した。


シンは、トワ達と離れ一人で羅睺の幹部を探し始める。

式神によって羅睺の気配を消したシンは、羅睺の群れに気づかれることなく、集落の奥へと進んでいく。

その時、シンは、羅禍の気配とは違う、異常な霊圧を感じ取る。


「この霊圧……羅禍の霊圧じゃない。これは……もっと、禍々しい別の霊圧?」


シンが、驚きの声を上げる。

シンは、霊圧の元へと向かう。

そこには、集落の古びた神社の鳥居の前に、一体の羅睺がいた。

羅睺は、人型をしており禍々しい霊圧を放っている。

しかし、その霊圧は、羅禍とは比べ物にならないほど禍々しいものだった。

シンは、羅睺に気づかれないように、身を隠し、式神の力で、羅睺の姿を視認する。

羅睺は、シンに気づかず、ただ空を見上げていた。


シンは、羅睺の姿を、トワに報告するため、式神の力で、トワに情報を送ろうとする。

しかし、その時、羅睺がシンの方へと顔を向けた。


「ふむ、そこか。報告にあった通りの人間だな、ようやく見つけたぞ憑陰シン。」


羅睺は、シンをまっすぐに見つめ、そう呟いた。

シンは、全身の血が凍りつくような感覚に陥った。

羅睺は、気配を消しているはずのシンを視認しただけでなく、彼の名前を知っている。

そして、その口元には、不気味な笑みが浮かんでいた。


「気配を消しているのに何故見つかったのか分からないようだな、私は劫羅睺である。そんな小細工程度じゃ姿は隠せないコレが答え合わせだ。そういえば、まだ名乗っていなかったな。私の名は劫波。そして、私はお前を探していた。今回はお前を一目見ようと会いに来ただけだ。」


劫羅睺は、シンにそう告げる。

シンは、劫羅睺の言葉に、何も反論できなかった。

彼と羅睺の幹部、劫羅睺との運命的な出会いは、今、始まったばかりだった。



集落の神社で劫羅睺と出会ったシンは、彼が自分を探していたという言葉に、ただただ戸惑うばかりだった。


その場から無事に撤退し、仲間たちと合流できたもののシンはトワ、鈴、サキにその出来事を伝える。


「僕に会いに来たと……。どうして、羅睺の幹部が僕を?」


シンが不安そうに問いかけると、トワはすぐに真理鏡で羅睺のデータを解析し始める。


「羅睺の幹部、劫波……私のデータベースに彼の情報はありません。しかし、彼の発言とこの集落の羅睺の瘴気の関連性を分析した結果、一つの仮説が導き出されました」


トワは、淡々と話し始める。


「羅睺の幹部、劫波の目的は、羅睺を滅ぼすことではありません。虚淵を復活させ、その力を利用して世界に崩壊を引き起こすこと。虚淵の力は、羅睺にとって本来は脅威ですが、劫波はそれを制御し、羅睺の進化に利用しようとしているようです」


その言葉に、鈴は「羅睺が、さらに強くなるってこと?」と声を震わせた。

サキは無言で剣の柄を握りしめている。


「しかし、そのためには虚淵の力そのものが鍵となる。そしてその力を持つのが憑陰シンお前だ。だからこそ奴は、お前に会いに来たのだ」


サキは冷たい瞳でシンを見据え、言い放った。


「劫羅睺は虚淵の力を使い、虚淵をこの世界の新たな支配者として君臨させようとしている。それが奴の最終的な目的だろう」


「虚淵の力を……使って新しい世界の支配者になる……」


シンは、自身の虚淵の力が、羅禍に利用される可能性に身震いした。


「そんなこと、絶対にさせない。僕の力は、羅禍を滅ぼすためにある」


シンが固い決意を口にすると、その場に劫羅睺の霊圧が再び現れた。


「ふむ、お前の答えは理解した。だが、私を止めることはできない。私には、まだやらねばならないことがある。この集落の羅睺は、お前たちに任せよう」


声だけが響き渡り、劫羅睺の姿はどこにもない。

しかし、彼の言葉が消え去った後、神社の鳥居の前に、一体の災羅睺が現れた。

それは、集落の瘴気をすべて吸収したかのように、禍々しい霊圧を放っていた。

その姿は、まるで禍々しい鎧を身につけた武士のようだ。


「羅禍だ!しかも、今までにない霊圧……!」


鈴が弓を構え、警戒する。

トワも真理鏡を起動し、即座に羅禍の解析を始める。


「羅禍の霊核は、羅睺の瘴気を吸収し、異常なほどに強化されています。終末の波動を浴びた羅禍……まるで、劫羅睺の意志が憑依しているかのようです」


トワの言葉に、サキは迷うことなく剣を抜く。


「シン、あんたは霊核を狙え。この羅禍は厄介だ。私が道を切り開く」


サキはそう言うと、羅禍に向かって走り出した。

彼女の剣は、羅禍の動きに合わせて素早く、そして鋭く、羅禍の体を切り裂いていく。

しかし、羅禍の霊核は固く、剣は霊核を破壊できない。


「くっ……羅禍の霊核が固すぎる……!」


サキが苦戦していると、羅禍がサキに向かって禍々しい光を放つ。


「サキ、危ない!」


シンが叫ぶが、羅禍の光はサキを直撃する。サキは、光を浴びながらも、剣を振りかぶる。


「『轟雷斬滅(ゴウライザンメツ)』!」

サキが叫ぶと、彼女の剣から、禍々しい光が放たれた。

それは、羅禍の霊核を破壊するサキの新技だった。

サキの剣技が、羅禍の霊核を貫き、羅禍は絶叫と共に、光の粒子となって砕け散っていく。その光景は、あたかも漆黒の宇宙に星々が弾け飛ぶようだった。


羅禍が完全に消滅し、集落には静寂が戻った。

羅禍の瘴気が晴れる中で、サキは、その場に膝をついた。

全身から力が抜け、激しい疲労が彼女を襲う。


「サキ、大丈夫か!?」


シンが、サキに駆け寄る。サキは、シンをまっすぐに見つめ、優しく微笑んだ。


「大丈夫だ。羅禍を、劫羅睺の意志の災羅睺……浄化したぞ。」


シンは、サキを抱きかかえ、トワ達と共に集落を後にした。彼の心には、サキの剣技の凄さへの驚きと、そして、劫羅睺を倒すという強い決意が宿っていた。



サキの剣技によって災羅睺が浄化され、集落に静寂が戻った。

四人は、疲労困憊のサキを抱きかかえ、集落を後にする。

すぐに本部へと連絡を取り、集落の結界が侵食されていることを報告した。


「ここは、四番隊隊長、鳴神 迅雷(なるかみ じんらい)に、集落の結界の修復と羅睺の残滓の浄化を任せます。羅禍の霊核は完全に消滅していますが、羅睺の瘴気が残っています。羅禍の霊核は、羅睺の瘴気を吸収し羅禍を強化します。だから、羅睺の瘴気を浄化しなければ羅禍が再び現れてしまいますので、よろしくお願いします。」


トワが、真理鏡で本部と通信しながら、淡々と状況を伝える。

シンは、サキを背負いながら、疲労困憊のサキを気遣う。


「サキ、大丈夫か?無理しすぎだぞ。」


シンがそう言うと、サキは、シンをまっすぐに見つめ、優しく微笑んだ。


「大丈夫だ。このぐらいで疲れるようじゃ自分を許せない。だが、心配はありがとうな。」


サキの言葉に、シンは、心が温かくなるのを感じていた。

サキが羅睺を滅ぼすだけでなく、自分を大切にしてくれる事が嬉しかった。


そして、誰かと共に、温かい時間を過ごすこと。それが、シンが戦う理由だったがそれをサキが理解して一人で行動して、怪我をしないようにしてくれている事に心が暖かくなった。


四人は、集落の近くにある、小さな温泉宿へとたどり着いた。

ここは、結界が張られているため、安全な場所だった。

しかし、シンたちは、そこで、一つ問題に直面する。


「えっ……混浴しか、やってないんですか〜?」


鈴が、驚きの声を上げる。温泉宿の女将は、申し訳なさそうに、頭を下げた。


「はい、申し訳ございません。当館は、小さな温泉宿でございまして……。今の時間帯は混浴しかやっておりませんでして……。」


女将の言葉に、鈴は、顔を真っ赤にして、言葉を詰まらせる。

トワも、顔を真っ赤にして、真理鏡で、混浴に関するデータを解析し始める。


「混浴……。私のデータには、混浴に関するデータは、ありません。しかし、混浴は、男女が、一緒にお風呂に入るという、非常に恥ずかしい行為なはずです。」


トワは、淡々と混浴のデータをシンたちに伝える。

サキは、無言でシンを睨みつけていた。その瞳には、怒りの炎が燃え上がっている。


「……見たら殺す。」


サキは、無言でシンを睨みつけていた。シンは、三人の反応に、ただただ戸惑うばかりだった。


「まあ、みんな。僕たちが急に来たし、仕方がないよ。でも羅禍との戦いで疲れた体を癒すためにも、混浴に入った方が良いよね。どうしよう。」


シンがそう言うと、鈴は、顔を真っ赤にして、シンに懇願する。


「シンくん、私は無理だよ〜流石に恥ずかしすぎるよ〜」


鈴の言葉に、シンは、何も反論できなかった。しかし、サキは、無言でシンを睨みつけながら、シンを連れて温泉へと向かっていった。


「ちょっ、さ、サキ!?待ってよ!俺、男、せめて違う場所で着替えてきて無理だよ!」


シンが叫ぶが、サキは、シンを連れて、温泉の更衣室へと入っていく。

シンは、サキの腕力に、ただただ驚くばかりだった。


「...はぁ、女将さんが助けてくれたおかげで助かった。」


シンは更衣室に入る直前に女将さんが見つけてくださり助けてくれたのだ。


温泉に入ると、湯気が立ち込め、シンは、三人のタオル一枚の姿に、顔が熱くなるのを感じていた。

鈴は、恥ずかしそうに顔を隠し、トワは、真理鏡で混浴に関するデータを解析し続ける。サキは、無言で湯に浸かっていた。


「わあ……。気持ちいい……。」


鈴が、恥ずかしそうに、湯に浸かりながら、そう呟く。

トワも、湯に浸かりながら、リラックスしている。


「羅睺の瘴気が、霊核を蝕むのですが、水や瘴気を上回るほどの霊力を使えば霊核は回復します。そして、紹介して貰ったこの温泉は霊核の疲労を回復させる効果があることが分かりました。」


トワは、淡々と温泉の効果をシンたちに伝える。シンは、三人のタオル一枚の姿にただただ、見惚れるばかりだった。


「……シンくん〜」


鈴が、小さな声でシンを呼ぶ。

シンは、鈴をまっすぐに見つめる。

鈴は、恥ずかしそうに、シンに話しかけてきた。


「あの……。シンくん、サキちゃん、トワちゃん……。皆、羅禍と戦って疲れているから〜。皆、この温泉でゆっくり休んでね〜。」


いつも通り気だるげながらも鈴の言葉に、シンは、仲間を思っていると確信して心が温かくなるのを感じていた。


アクション増した方が良いですかね?

一応在庫が切れた後のことは、まだ決まっていないんですけど。

皆さんはアクション増やして欲しいですか?

ちょっと自分は分からないので、リアクションでいいねだったら増やしてで、泣く表情の奴は増やさなくて良いで、アンケート取りたいです。

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