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絶禊ノ剣  作者: ハム大福
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第十一話:氷の壁を溶かす温もり


真夏の太陽が照りつける日中、シンとトワは二人きりで羅睺の討伐任務に赴いていた。

海水浴場でのハプニング以来、鈴やサキと顔を合わせるのが少し気まずかったシンにとって、トワとの二人きりの任務は、どこか新鮮な緊張感があった。


今回の任務は、とある山間部の廃村に蔓延る羅睺の討伐。

トワのデータによると、羅禍の気配はないものの、羅睺の瘴気が異常なほど濃く、放置すれば羅禍を呼び寄せる危険性があるという。


「憑陰くん、この廃村の羅睺の瘴気の濃度は、私の予想を上回っています。なので、霊核の消耗を抑えるため、極力戦闘を避けて目標である羅睺を浄化する方向にシフトします。」


トワは、真理鏡を使い、周囲の羅睺の瘴気を解析しながら、淡々とシンに指示を出した。彼女の口調は、いつもの冷静なものだったが、シンには、どこか緊張しているように感じられた。


二人は、慎重に廃村の奥へと進んでいく。しかし、廃村の中心部に近づくにつれて、羅睺の数が徐々に増えていく。

緊張からか二人は、羅睺の大群に囲まれてしまている事に気づくのが遅れてしまった。


「羅睺の、大群……!一体どうして、こんな場所に……!」


シンが、驚きの声を上げる。

彼の周りには、無数の羅睺が、禍々しい光を放ちながら、シンとトワを包囲していた。

羅睺の瘴気が、シンとトワの霊核を蝕んでいく。


「い、いけません!羅睺の数が多すぎます!このままでは、霊核が羅睺の瘴気に蝕まれてしまいます!」


トワは、顔を青ざめさせながら、真理鏡を使い、羅睺の霊力を解析し撤退ルートを探そうとする。

しかし、羅睺の数が多すぎて、解析が追いつかない。


羅睺の大群が、シンとトワに襲いかかってきた。

シンは、漆黒の刀を構え、羅睺の群れを薙ぎ払うが、羅睺の数は減らない。

それどころか、羅睺の数が、さらに増えていく。


「くっ……!きりがない!」


シンが、歯を食いしばりながら、羅睺の群れを薙ぎ払う。

しかし、彼の霊核は、羅睺の瘴気に蝕まれ、徐々に消耗していく。


トワも、真理鏡を使い、結界を張り、羅睺の動きを封じようとするが、羅睺の数が多すぎて、結界がすぐに破られてしまう。


「いけません……!このままでは……!」


トワは、絶望的な表情で、シンをまっすぐに見つめた。

彼女の瞳には、羅睺への恐怖と、シンを守りたいという、強い決意が宿っていた。


その時、トワの真理鏡が光を放ち始めた。

実は、トワの禊具である真理鏡は数々の羅睺を倒していったことでより、その力を研ぎ澄ましていたのだ。


トワの真理鏡は、羅睺の霊力を解析し、羅睺の弱点を見つけ出した。

そして、そのデータは、トワの霊核へと、直接、送られていく。


「……私の、霊核が……。羅睺の霊力を、吸収しています……!」


トワが、驚きの声を上げる。彼女の霊核は、羅睺の霊力を吸収し、禍々しい光を放ち始めた。


「と、トワ!?大丈夫か!?」


シンが、トワを心配そうに見つめる。

トワは、シンをまっすぐに見つめ、優しく微笑んだ。


「大丈夫です、憑陰くん。この力は……羅睺を滅ぼすための、希望の光です。」


トワは、そう言って、真理鏡を天に掲げる。すると、真理鏡が、空へと光を放ち、空に、巨大な魔法陣が描かれた。

その魔法陣は、羅睺の瘴気を浄化し、羅睺の動きを封じていく。


そして、トワは、魔法陣の中から、光の剣を召喚した。その剣は、羅睺の霊力を吸収し、禍々しい光を放っている。


「これが、私の……新しい力。『真理ノ剣』です!」


トワは、光の剣を構え、羅睺の大群へと向かっていく。

トワの剣技は、シンの無明一閃の剣速には届かないが、その速さはサキの剣技を上回る圧倒的なものだった。

彼女の剣技が、羅睺の群れを次々と浄化し、羅睺の大群を、一瞬にして消滅させていく。


羅睺の大群が消滅し、廃村には静寂が戻った。羅睺の瘴気が晴れる中で、トワは、光の剣を消滅させ、その場に膝をついた。

全身から力が抜け、激しい疲労が彼女を襲う。


「と、トワ!大丈夫か!?」


シンが、トワに駆け寄る。

トワは、シンをまっすぐに見つめ、優しく微笑んだ。


「大丈夫です、憑陰くん。やりました...羅睺を羅睺の大群を……私一人で、浄化しました。」


トワの言葉に、シンは、驚きを隠せない。

いつも冷静沈着で、知性で羅禍を分析していたトワが、羅睺の大群を一人で戦って浄化した。それは、シンにとって衝撃的なことだった。


シンは、トワを抱きかかえ、廃村を後にした。

彼の心には、トワの新しい力への驚きと、そして、彼女を守りたいという、強い決意が宿っていた。


羅睺との戦い、虚淵の力、そして孤独。それらが全て、この温かい日常の中で、癒されていくようだった。

羅睺を滅ぼすだけでなく、誰かを守ること。

そして、誰かと共に温かい時間を過ごすこと。それが、シンが戦う理由だった。

だが、今はこの幸せが大切にしていくものになっていていた。


シンは、トワを抱きかかえたまま、彼女の顔を優しく見つめた。

トワは、シンの腕の中で、安らかな寝息を立てている。

二人の間には、羅睺との戦いとは違う、温かくて、特別な空気が流れていた。



トワとの任務から数日後、シンとサキは、二人きりで羅睺の討伐任務に赴いていた。

トワと鈴は、別の任務で街の反対側へと向かっている。

今回の任務は、羅睺の瘴気が異常なほど濃い、廃れたビルの討伐。


シンは、サキとの二人きりの任務に、どこか緊張していた。

彼女は、羅禍を滅ぼすという使命感しか感じられず、まるで氷のように冷たい。

シンは、そんな彼女とどう接すればいいのか、わからずにいた。


「憑陰、何を突っ立ってる。さっさと行くぞ。」


サキは、淡々とシンに指示を出す。

彼女の言葉は、いつもの鋭い口調だったが、シンには、どこか寂しそうに聞こえた。


二人は、廃れたビルの奥へと進んでいく。

しかし、ビルの中心部に近づくにつれて、羅睺の数が徐々に増えていく。

やがて、二人は、羅睺の大群に囲まれてしまった。


「また、羅睺の大群……!一体どうして、こんな場所に……!」


シンが、驚きの声を上げる。

彼の周りには、無数の羅睺が、禍々しい光を放ちながらシンとサキを包囲していた。

羅睺の瘴気が、シンとサキの霊核を蝕んでいく。


「だ、ダメだ!羅睺の数が多すぎる!このままだと霊核が羅睺の瘴気に蝕まれてしまう!一時撤退しよう!」


シンは、羅睺の大群に、絶望的な表情を浮かべる。

しかし、サキは、無表情に羅睺の大群を見つめていた。

彼女の瞳には、羅睺への憎悪と、羅禍を滅ぼすという、揺るぎない決意が宿っていた。


羅睺の大群が、シンとサキに襲いかかってきた。

シンは、漆黒の刀を構え、羅睺の群れを薙ぎ払うが、羅睺の数は減らない。

それどころか、羅睺の数が、さらに増えていく。


「くっ……!きりがない!」


シンが、歯を食いしばりながら、羅睺の群れを薙ぎ払う。

しかし、彼の霊核は、羅睺の瘴気に蝕まれ、徐々に消耗していく。

サキは、シンをまっすぐに見つめ、優しく微笑んだ。


「シン、あんたは、虚淵の力に頼りすぎだ。羅禍は、羅睺を操る知能を持っている。あんたが一人で戦えば、いつか足を掬われる。羅禍は、あんたの弱点を見つけ出しあんたを追い詰める。羅禍との戦いは羅睺との戦いとは違い、一人で戦うものじゃない。皆で戦うものだ。」


サキの言葉に、シンは何も反論できなかった。

羅睺との戦いで、彼は虚淵の力に頼ってばかりいた。

自分の力ではない、溟禍の力に。

そのことを、彼は誰よりも深く理解していたからだ。


「……わかりました。サキ、僕、頑張ります。」


シンがそう言うと、サキは、シンをまっすぐに見つめ、何も言わなかった。

そして前とは違い、その瞳には、シンへの期待と、シンを傷つけようとする羅睺への憎悪が混じっていた。


羅睺の大群が、シンとサキに襲いかかってきた。

シンは、羅睺の群れを薙ぎ払うが、羅睺の数は減らない。その時、サキは、シンを庇い、羅睺の群れへと向かっていく。


「さ、サキ!?」


シンが、驚きの声を上げる。

サキは、羅睺の群れを、圧倒的な剣技で薙ぎ払っていく。

彼女の剣技は、シンを上回る、圧倒的なものだった。

彼女の豪快な剣技が、羅睺の群れを次々と薙ぎ払い、羅睺の大群を、一瞬にして消滅させていく。


羅睺の大群が消滅し、廃れたビルには静寂が戻った。

羅睺の瘴気が晴れる中で、サキは、その場に膝をついた。

全身から力が抜け、激しい疲労が彼女を襲う。


「さ、サキ!大丈夫!?」


シンが、サキに駆け寄る。

サキは、シンをまっすぐに見つめ、優しく微笑んだ。


「大丈夫だ。コレぐらいそれに、羅睺の大群を……一人で倒した。コレぐらい出来ないと認めてもらえない。」


サキの言葉に、シンは、驚きを隠せない。

いつも、羅睺との戦闘経験から身についた冷静沈着や知性で羅禍を観察して倒していったサキが、突然の羅睺の大群を一人で浄化した。

その驚きの出来事やサキが抱える使命もシンにとって、衝撃的なことだった。


「...流石に少し力を消費しすぎた。後のことは頼む...」


シンは、疲れからか倒れるように寝てしまったサキを抱きかかえ、廃れたビルを後にした。


彼の心には、サキの新しい力への驚きと、そして、彼女を守りたいという、強い決意が宿っていた。


羅睺との戦い、虚淵の力、そして孤独。それらが全て、この温かい日常の中で、癒されていくようだった。

羅睺を滅ぼすだけでなく、誰かを守ること。そして、誰かと共に、温かい時間を過ごすこと。その戦う理由がサキとシンは似ていたから、幸せになって欲しいと思った。


シンは、サキを抱きかかえたまま、彼女の顔を優しく見つめた。

サキは、シンの腕の中で、安らかな寝息を立てている。

二人の間には、羅睺との戦いとは違う、温かくて、特別な空気が流れていた。


シンは、任務を終え、サキを抱きかかえたまま、廃れたビルの外へと出た。

外は、真夏の太陽が照りつけており、いつの間にか起きていたサキの顔には、汗が滲んでいた。


「サキ、汗すごいな。大丈夫か?」


シンは、心配そうにサキに話しかける。

サキは、シンをまっすぐに見つめ、何も言わなかった。

シンは、自分のリュックから、ペットボトルを取り出した。彼は、ペットボトルの蓋を開け、サキに差し出す。


「これ、よかったら飲んで。冷たいから、少しは楽になると思う。」


シンがそう言うと、サキは、驚きを隠せない。

彼女は、シンをまっすぐに見つめ、何も言えなくなってしまった。


「別に、気にしなくていいよ。僕、サキに何かしてあげたくて。」


シンが、優しくそう言うと、サキは、シンからペットボトルを受け取った。彼女は、ペットボトルを両手で持ち、じっと見つめていた。


「……ありがとうな。私、誰かに何かを貰ったのは、初めてだ。」


サキは、小さな声でそう言った。その言葉に、シンは驚きを隠せない。


「え、初めてって……。サキ、今まで、親とかに何か貰ったことないのか?」


シンが、サキに尋ねる。

サキは、シンをまっすぐに見つめ、優しく微笑んだ。


「……ああ。私、羅睺を滅ぼすためだけに生きてきた。羅睺との戦いに、情はいらない。羅睺との戦いに、優しさはいらない。羅睺との戦いは、孤独な戦いだ。そう、思ってた。」


サキの言葉に、シンは、心が締め付けられるような、痛いような、そんな感情を抱いていた。羅禍を滅ぼすためだけに生きてきたサキ。彼女の人生は、羅禍との戦いしかなかった。


「……でも、シンと出会って、鈴やトワと出会って、私は、少しだけ変わったかもしれないな。」


サキは、そう言って、シンに優しく微笑んだ。その笑顔は、いつもの冷たい笑顔とは違う、温かい笑顔だった。

シンは、サキの言葉に、心が温かくなるのを感じていた。

羅睺を滅ぼすだけでなく、誰かを守ること。そして、誰かと共に、温かい時間を過ごすこと。

それが、シンが戦う理由なのだと、彼は改めて心に誓った。


二人は、夕日が沈む中、ゆっくりと歩き出した。

シンは、サキの隣にいることが、とても心地よかった。


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