繋がり出した点と点
正直ここまででひと段落です。
ここからラブコメが多くなります!!!
そして、僕とシルヴァは再びアルラの街へと戻ってきた。
「へぇ、ここがアルラかぁ」
「ん? シルヴァ、アルラ知ってるの?」
「知ってるも何も、“住みたい街ランキング”常に上位だぜ? まあ家賃が高すぎて、一般人じゃまず住めねぇけどな」
彼の肩をすくめた表情を見て、僕は小さく笑った。
――なるほど。じゃあ、ここに家を借りられた僕は、けっこう運が良かったってことか。
そのまま、僕たちは街角に佇む喫茶店に入った。
中はどこか幻想的な空間だった。壁には海底のような装飾が施され、柱にはマーメイドの彫刻。メルヘンとレトロの中間を突く、独特な世界観の店だ。
テーブルにつくと、僕は静かに尋ねた。
「ねぇ、シルヴァ。どうして未開の地の探検者になろうと思ったの?」
彼は少し黙ってから、低く問い返した。
「……逆に聞くけどよ、未開の地には何があるって教わった?」
「うーん、古代の遺跡とか……この世界のものじゃない物質とか?」
僕が答えると、シルヴァは鼻で笑った。
「ふっ、まあ、間違っちゃいねぇ。けど、それは“表面上”の話だ」
「……どういうこと?」
彼はポケットから一枚の古びた写真を取り出して、テーブルに滑らせた。
「昔な、とある探検者が“エンドライン”のさらに北の未踏の地を写真に収めて帰ってきたんだよ。そいつが……これだ」
僕は目を疑った。
そこに写っていたのは……灰色の金属に包まれた、あの形。プロペラの先に日章旗のマーク。
「……これは……ゼロ戦……?」
喉の奥がひゅっと鳴った。まさか、こっちの世界でこんな物を見るとは。
「これ、知ってんのか?」
「うん……とある事情で見たことがある。戦争で使われた物だよ」
「そうなのか。……でもおかしいだろ? こっちの世界の技術じゃねえ。明らかに別世界の産物だ」
シルヴァの声は低く熱を帯びていた。
「俺は思った。この先には、別の世界とつながる“何か”がある。そう信じた。もしそこに行ければ、もっと強力な何かを手に入れられるってな」
僕は少し黙ってから尋ねた。
「……何か事情があるの? 話してもらってもいい?」
彼は少しだけ目を伏せてから、静かに頷いた。
「……いいさ。話すよ。友情ってのは時間じゃねぇからな」
彼はゆっくりと語り始めた。
「俺には……家族がいた。元々、地方の小さな貴族の家系だったんだ。父さんがいて、母さんがいて、妹もいた。静かだけど、平和で暖かい家庭だった」
そこで、彼の表情が少しだけ曇る。
「だけど、ある日、その平和は一瞬で消えたんだ。“オルド・ラグナ〃って組織を聞いたことあるか?」
「……いや、ない」
「そいつらが俺の住んでた街でやったのは、“異世界の魔王”を召喚する儀式だった」
「…………!!!」
「……本当の話だ。だけどな、その儀式には“万を超える生贄”が必要だったらしい」
「まさか……」
「俺が別の街に行ってる隙に、そいつらは儀式を決行した。帰ってきた俺が目にしたのは――魂を抜かれ、恐怖の表情のまま死んでいた家族だった」
言葉を失った僕に、シルヴァは静かに言う。
「……俺は誓った。そいつらを、この世から消し去るって。だが……奴らの組織はでかい。しかも、戦った奴らの証言では、“この世界のものとは思えねえ兵器”を使ってたって言うんだ」
「……だから、未開の地に?」
「そうだ。そっちの世界の技術――“文明”を手に入れるために、俺は突き進む。それが俺の……復讐だ」
彼はふっと笑う。
「……すまねぇな、こんな暗い話。人に話すのは初めてだ。でも、ちょっとスッキリした」
「……ありがとう。全部話してくれて」
僕はグッと胸を張り、目を見て言った。
「それなら、僕も全部話すよ」
そして僕は、異世界から来たこと、自分の過去と目的をすべて打ち明けた。
「……マジかよ。異世界から……そんなことが……」
シルヴァは言葉を探すようにうなった。
「じゃあ、お前もある意味呼ばれたってことか?」
「……わからない。でも、今は少しずつ繋がってきた気がする。僕がこの世界に来た理由。そして、君の目的と僕の目的――重なる部分があるって」
「確かにな……俺は組織を潰したい。お前はその組織の秘密を暴きたい。なら……」
僕は手を差し出した。
「協力しないか? 目的は違えど、目指す場所は同じだ」
「――よし! お前なら信用できる。ぜひ一緒にやろうぜ!」
でも――
「……ただ、俺たち二人だけじゃ限界もあるよな?」
「うん……それは、そうかもしれないね」
「実はな。俺が単独で暴れてた時に、ある連中が声をかけてきた」
僕の脳裏に、ひとつの名前がよぎった。
「まさか……シルヴァ、その組織って“ノヴァリア”じゃない?」
シルヴァの目が驚きに大きく開く。
「お前……なんでその名を……」
「僕、もうノヴァリアに所属してるんだ」
「……っはっはっはっはっ!!」
シルヴァは声を上げて笑った。店内に響くほど大きく。
「すげぇな! 話が早すぎて逆にこえぇわ! ……やっぱり、俺たちは出会うべくして出会ったんだな!」
彼は力強く頷く。
「決めた、俺もノヴァリアに入る」
「よし!でも今日は疲れたね…今日泊まる場所ある?」
「いや……今夜は野宿の予定だったが?」
「だったら、僕の家に来なよ。紹介したい人がいるんだ」
そう言って、僕たちは立ち上がる。
そして――
僕たちは、まゆが働いている商会へと向かった。