【初めてのライブ】第7話:『転んだら…笑え!!』
『転んだら…笑え!!』
https://youtu.be/f3B6IGq9JXg
※こちらで視聴可能です
『透明じゃいられない』の熱のこもった演奏が終わり、ライブハウスは再び大きな拍手と歓声に包まれた。ステージの熱気はそのままに、次の曲への期待感が募る。
ミオがマイクを握り、会場を見渡した。
「続いての曲は、私たちのバンド名の由来にもなった、転んでも立ち上がるっていうメッセージを、一番ストレートに表現している曲です!」
ミオの言葉に、ユメカが元気よく手を振った。
「この曲の作詞は、私、ユメカが担当しました! みんなも、転んだら……笑ってねー!」
ユメカの明るい声が響き渡ると、観客からも温かい笑いが起こる。
「聞いてください、『転んだら…笑え!!』」
ミオの合図で、ユメカのベースが明るく跳ねるようなイントロを奏で始めた。続いて葵の軽快なギターリフ、ルナのテンポの良いドラム、そして凛の爽やかなキーボードが重なる。
一曲目とは違う、軽やかで、しかし芯の通ったポップなロックサウンドがライブハウスを満たしていく。
『転んだら…笑え!!』
https://youtu.be/f3B6IGq9JXg
※こちらで視聴可能です
(演奏しながら、ユメカの脳裏には、この曲が生まれた時の情景が鮮やかに蘇っていた――)
『透明じゃいられない』の完成後、バンドは順調にレパートリーを増やしつつあった。
「次の曲、どうする? また葵と私で書く?」
ミオが練習スタジオでメンバーに問いかける。
すると、ユメカがパッと手を挙げた。
「あのね! 私、また歌詞書きたい!」
その元気いっぱいの声に、ミオは目を丸くした。
「お! ユメカ、ノリノリじゃん! 今度はどんな感じ?」
「えっとね、私、よく転んじゃうでしょ? 下駄箱でつまづいたり、教室のドアにおでこぶつけたり…」
ユメカは困ったように笑いながらも、その表情はどこか楽しそうだ。
「でも、転んだ時って、痛いんだけど、なんだか笑えちゃうんだよね。みんなが『大丈夫?』って笑ってくれるから。だから、転んでも、笑って立ち上がろう!って歌にしたいなあって!」
ユメカの言葉に、ミオは目を輝かせた。
「それ、最高じゃん! まさに『東京たんこぶ』のテーマそのものじゃんか!」
葵は静かにユメカの言葉を聞き、ルナは腕を組んで面白そうに頷いている。
ユメカは、すぐにペンとノートを取り出し、ひたすら歌詞を書き始めた。彼女の周りで実際に起こった、ちょっとおっちょこちょいなエピソードが、そのまま温かい言葉になっていく。
「下駄箱でつまづいた朝」
「教室のドアにおでこゴチン」
そんなユメカらしいフレーズが並ぶ。そして、その根底には、彼女が持つポジティブな「たんこぶ哲学」が流れている。
書き上がった歌詞を、ユメカはメンバーに読み上げた。
「転んだら…笑え!!
涙がこぼれてもバレたらはずかしいし
でもそれって最高の青春ってことじゃん!」
ユメカが読み上げるたびに、ミオの目がキラキラと輝きを増していく。
「ユメカ! これ、私に作曲させて! 私の作曲家魂がうずうずする!」
ミオは熱く宣言した。ユメカの飾らない言葉の数々が、ミオの情熱に火をつけたのだ。
「うん! ミオちゃんにお願いしたい!」
ユメカも嬉しそうに頷いた。
そこから、ミオとユメカの共同作業が始まった。
ミオは、ユメカの歌詞が持つ明るさと、その奥に隠されたちょっぴり切ない、でも前向きな気持ちをメロディにしようと、何度も試行錯誤を繰り返した。ユメカの言葉一つ一つに、ぴったりの音を当てはめていく。
「『制服のそで ちょっとどろんこでも』ってところは、ベースが軽快に入ってきて、ちょっとユーモラスな感じがいいかな?」
「『泣きながら笑える日がくる』ってところは、一回メロディを落ち着かせて、そこからまた力強く駆け上がっていく感じがいいんじゃない?」
ミオがアイデアを出すと、ユメカは「うんうん!」と目を輝かせて頷いた。
そして、最終的なアレンジは、メンバー全員で練り上げた。
葵は、ユメカの明るさを引き出すような、軽やかでポップなギターリフを考案。
ルナは、ユメカの言葉のテンポに合わせ、聴いている人が思わず体が動き出すような、明るく力強いドラムパターンを叩き出す。
凛は、ユメカの天然で癒し系の雰囲気を損なわないよう、清涼感のあるキーボードサウンドで全体を包み込んだ。
ユメカ自身のベースは、他のメンバーの音と絡み合い、彼女のキャラクターのように軽やかで温かいグルーヴを生み出した。
(回想終わり。ライブのステージへと戻る――)
『転んだら…笑え!!』の演奏が、ライブハウスいっぱいに響き渡る。
ミオの歌声は、ユメカのストレートな歌詞に、力強く、そして希望に満ちたメロディを与えていた。
『転んだら…笑え!!』
『立ち上がるたび強くなるし』
ユメカはベースを弾きながら、満面の笑顔で客席を見渡した。ステージ上で時折つまづきそうになるのもご愛敬だ。その度に、観客からも、他のメンバーからも、温かい視線と笑いが向けられる。
観客は、彼女たちのポジティブなメッセージに、自然と笑顔になっていた。腕を振り上げ、一緒に歌う人もいる。
『たんこぶ増えても 笑顔でいこう!』
最後のユメカの歌詞が、ミオの力強いシャウトと共に会場に響き渡り、バンドの演奏が止んだ瞬間、大きな拍手と歓声が再びライブハウスを揺らした。
ユメカは、はにかんだように笑いながら、深々と頭を下げた。葵は、静かにその様子を見守り、ルナはスティックを回しながらニヤリと笑う。ミオは、汗をぬぐいながらも、満足げな表情で観客に手を振っていた。
「転んでもまた立ち上がる」、そのバンドの信念は、ユメカの言葉とミオのメロディ、そしてメンバー全員の演奏を通して、確かにライブハウスに集まった人々の心に届いたのだった。
ライブは続く。次は5曲目。
『転んだら…笑え!!』
https://youtu.be/f3B6IGq9JXg
※こちらで視聴可能です






