【三年の眺望】第35話:『ふゆやすみ☆グルーヴ』
『ふゆやすみ☆グルーヴ』
https://youtu.be/SFNrvozxWbE
※こちらで視聴可能です
高校三年生、最後の冬休み。街はキラキラとイルミネーションで輝き、どこか浮かれた空気が漂っている。
その日の練習スタジオは、いつもの楽器の音ではなく、賑やかな笑い声と美味しそうな匂いで満ちていた。今日は「東京たんこぶ」の、少し早めのクリスマスパーティーだ。
「メリークリスマース!みんな、準備はいいかー!?」
サンタ帽をかぶったミオが、ジュースの入った紙コップを高く掲げ、高らかに乾杯の音頭をとった。
「「「かんぱーい!」」」
ルナ、ユメカ、葵、凛の声が重なり、パーティーが始まった。テーブルの上には、チキンやピザ、凛が焼いてきてくれたジンジャークッキーが並んでいる。
「うーん、おいしい!凛ちゃんのクッキー、天才的!」
ユメカが頬をいっぱいに膨らませながら、幸せそうに言う。
「よかった。たくさん作ったので、皆さんでどうぞ」
凛がにこやかに微笑む。
「チキンもうめぇ!やっぱクリスマスはこれだよな!」
ミオは骨付きチキンにかぶりつき、ご満悦だ。
「はぁ〜、おなかいっぱい〜。もう何も食べられないかも〜」
ピザを3枚たいらげたユメカが、お腹をさすりながら言う。
「お、珍しいな。ユメカがギブアップなんて」
ルナが面白そうに言うと、ユメカはにぱーっと満面の笑みを浮かべた。
「でも、ケーキはベツバラ☆ミオちゃん、ケーキまだー?」
「出たよ、ユメカの別腹理論」
ルナが呆れたようにツッコむと、ミオが「お待ちかねのケーキ様、登場だぜ!」と大きな箱を持ってきた。
「うわー!すごい!街のケーキ屋さん、めっちゃ行列できてたでしょ?」
「並んだのは主にミオだけどな。私は無理」
「……人混み、嫌い」
ルナと葵が口を揃えて言う。
「いいじゃんか!甘い香りに誘われて、ちょっと並んじゃうのも冬の醍醐味だろ!」
ミオは、そんな二人の文句も気にせず、ロウソクに火を灯した。
ケーキを食べ終え、一息ついた頃、話題はお正月のことになった。
「クリスマスが終わったら、すぐハッピーニューイヤーだね!初詣、みんなで行かない?」
ミオが目を輝かせて提案する。
「行く行くー!おもちいっぱい食べるんだー!おせちも楽しみ!」
ユメカは、もう次の食べ物のことで頭がいっぱいだ。
「えー、初詣の人混み、ヤバくない?私は家でゴロゴロしながら、お雑煮食べてたい派なんだけど」
ルナが、こたつを恋しがるように言う。
「……同感。ヒーターの前が定位置」
葵も、珍しくルナに強く同意した。
「何言ってんだよ!一年の始まりだぞ!運試しのおみくじ引いて、みんなで大吉目指すんだよ!」
ミオが熱弁すると、凛が優しく助け舟を出した。
「ふふ、じゃあ、比較的空いてそうな時間帯を調べてみましょうか。早朝とか、意外と狙い目かもしれませんよ」
その言葉に、ミオは「さすが凛!」と尊敬の眼差しを送った。
「そういえばこの前、雪が積もった日あったじゃん?ルナ、靴びしょぬれになってキレてたよな」
「あれはマジで最悪だった。素直にドクターマーチンのブーツ履いてけば良かった。でも、ソール減ってきてたから…」
「転んで"たんこぶ"できてたかもね♪」
「たしかに(笑)」
「その後、ユメカが始めた雪合戦はちょっと楽しかったけど」
「楽しかったよねー!葵ちゃんが投げた雪玉、ミオちゃんの顔面にクリーンヒットしてたもんね!」
「あれはマジで冷たかった…!てか葵、お前、あのコントロールの良さはなんなんだよ!」
ミオに睨まれた葵は、ポーカーフェイスのまま、静かに一言。
「……たまたま」
その場の全員が、「絶対わざとだ」と思ったが、口には出さなかった。
高校生活最後の冬休み。一年の終わり、そして始まり。
「受験が終わったらさ、また来年も、こうやってみんなで集まってバカ笑いしようぜ」
ミオが、少しだけ真剣な表情で言う。
「まあ、気が向いたらな」
ぶっきらぼうに返すルナ。
「うん!約束だよ!」
満面の笑みで頷くユメカ。
「……」
静かに、でも確かに頷く葵。
「はい、約束です」
優しく微笑む凛。
「よーし!決めた!」
ミオは、みんなの顔を見渡し、最高の笑顔で叫んだ。
「この、あったかくてポカポカな冬休みの気持ち、曲にするぞー!タイトルは『ふゆやすみ☆グルーヴ』だ!」
「はいはい、出ましたミオの口癖」
ルナは呆れながらも、その口元は確かに笑っていた。
この特別な冬が、また一つ、彼女たちの忘れられない思い出の曲になる。そんな予感が、スタジオ中に満ちていた。
『ふゆやすみ☆グルーヴ』
https://youtu.be/SFNrvozxWbE
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