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【二年の日常】第19話:『わたしのバイク』 

『わたしのバイク』 

https://youtu.be/_QdwCSnvyqQ

※こちらで視聴可能です

夏の気配がまだ色濃く残る、放課後の帰り道。ミオとルナは、コンビニで買ったアイスを食べながら、とりとめのない話をしていた。


「あー、今日の練習、ちょっと走りすぎたかも。腕パンパンだわ」

「ミオはいつも全力だからね。でも、あの新曲、ライブでやったら絶対盛り上がるよ」

そんな会話をしていた時、二人の横を軽快なエンジン音とともに、一台のスクーターが通り過ぎていった。

それは、白を基調としたボディに、鮮やかなピンクのラインが入った、少しレトロなデザインの可愛らしいスクーターだった。


「うわ、今のバイク、めっちゃ可愛くない?」

ルナが思わず声を上げる。

「ほんとだ。なんか、ちょっと懐かしい感じのデザインだね」

ミオも感心したように見送る。スクーターは角を曲がり、すぐにその姿は見えなくなった。

「ん…?」

ミオはふと、何かに気づいたように眉をひそめた。


「どうしたの、ミオ?」

「いや…今の運転してた子、ヘルメットかぶってたけど、なんか…あおいっぽくなかった?」

「え? 葵がバイク? さすがにないでしょ。あいつ、雨嫌いだし、めんどくさがりだし」

ルナは笑い飛ばしたが、ミオの頭の中には、黒髪のロングヘアーをヘルメットに収めた葵の姿が、妙なリアリティを持って浮かんでいた。


翌日、いつもの練習スタジオ。ミオは、到着するなりギターの準備をしていた葵に詰め寄った。

「ねぇ、葵! 昨日、放課後にピンクのスクーター乗ってなかった!?」

その言葉に、スタジオにいたユメカ、ルナ、凛の視線が一斉に葵に集まる。

葵は、一瞬だけ動きを止めたが、すぐにポーカーフェイスに戻り、静かに頷いた。


「…うん。乗ってた」


そのあっさりとした肯定に、今度はメンバー全員が絶句した。

「「「「えええええええええ!?」」」」

スタジオ中に、四人の驚きの声がこだまする。

葵は、そんなメンバーの反応を意にも介さず、衝撃的な事実を告げた。


「実はね、内緒で免許とったんだ」


「ま、まじで!?」「いつの間に!?」「葵ちゃんがバイク!?」

メンバーたちが口々に叫ぶ中、葵は淡々と続けた。

「試験場、めっちゃ緊張したけどね。なんとか」


「てか、あのバイク! めっちゃ可愛かった! あれ、葵のなの?」

ユメカがキラキラした目で尋ねる。

「うん。白いボディにピンクのラインのやつ。中古で貰ったんだけど、見た瞬間に運命だって思った」

葵の口から「運命」という言葉が出たことに、ミオとルナは顔を見合わせた。


「へー、あのレトロな感じ、なんていうバイクなの?」

ルナが興味津々で尋ねると、葵の目が、ほんの少しだけ輝いたように見えた。

「クレージュタクト。聞いたことある? クレージュって名前はフランスのデザイナーからきてて、ミニスカートの生みの親なんだって。その人がデザインした…」


「…って、まあ難しいことはいいか!」

葵が専門的な話を続けようとした瞬間、ミオがその言葉を遮った。

「あ、ごめん!でも、とにかくすごいってことはわかった!」

葵は少し不満そうだったが、「まあ、いいけど」と話を続けた。


「古いし、タイヤも小さいけど。エンジンかけたら、もう気分は全開!」

「エンジンって、どうやってかけるの?」

凛が尋ねると、葵は少し得意げに答えた。

「セルモーターもあるけど、基本キック。メットイン?ないよ?でも、いいの」

その言葉には、普段の葵からは想像もつかないほどの、熱い愛情がこもっていた。


「わー!葵ちゃん、カッコいいー!今度乗るとこ見せてほしいなー!」

ユメカが葵に駆け寄ってお願いする。

「葵のバイク愛、ハンパないね! でも、教室じゃ学べない風の温度とか街の匂いとか、バイク乗ってると感じられそうだよね!」

ミオが言うと、葵はこくりと頷いた。

「うん。アクセルの先で、わたし、ちゃんと生きてるって感じがする」


その言葉に、ミオは雷に打たれたような衝撃を受けた。

「それだ! 葵! その気持ち、曲にするしかないっしょ!」

ミオは叫んだ。

「『私のバイク!クレージュタクト!』みたいなさ!キュートでパンクで唯一無二の相棒!って感じの曲!」

「いいね!『ピンクの流星、今日も街を駆ける』とか、超カッコいい!」

ルナもノリノリだ。


ユメカも続ける。

「カワイイって、最強だよね」

葵が、ふと、確信に満ちた声でつぶやいた。

「古くても最高。わたしのバイクは大事な、、、もうひとりの私」

その言葉に、メンバー全員が息をのんだ。いつもはクールな葵の、内に秘めた熱い魂に触れた気がした。


こうして、また一つ、「東京たんこぶ」に新しいナンバーが追加されることになった。

葵の自由な魂と、”カワイイ”へのこだわりが詰まった、ピンクの流星のようなナンバー。

この曲がライブで披露される時、きっと誰もが見たことのない、新しい葵の姿を目撃することになるだろう。


【歌詞】

実はね、内緒で免許とったんだ

試験場、めっちゃ緊張したけど!

白いボディにピンクのライン

中古で貰った、でも運命だった


聞いたことある?クレージュって名前

フランスの人で、すごいデザイナー

ミニスカートの生みの親って

……って、まあ難しいことはいいか!


古くたって、タイヤが小さくたって

エンジンかけたら、気分はフルスロットル!

メットイン?ないよ?

でも、わたしにはこれが最高!


私のバイク! クレージュタクト!

キュートでパンクで唯一無二の相棒

スカートがひらり、風と一緒に走れ!

今日もどこかへ、自由の旅だ!


レトロなデザイン、ちょっと気難しいけど

アクセルひとつで世界が変わる

ピンクのボディに夢を乗せて

ブゥゥンと駆け出せ、私の未来!


坂道もガタガタ道も

一緒に走るたび好きになってく

コンビニの前で停めたら

ちょっと視線、集まっちゃったかも?


スマホナビよりアナログ地図

気まぐれに曲がっても、それも楽しい!

誰かと比べなくていい

このバイクと、わたしの道を行く


私のバイク! クレージュタクト!

昭和の空気を連れてきたプリンセス

ボックスないけど、心はフルメット!

大人になっても忘れたくない


メンテはちょっと苦手だけど

ガソリン満タンなら勇気出る

キックで始まるこの毎日が

誰よりも可愛い、わたしの証!


教室じゃ学べない

風の温度や街の匂い

アクセルの先で

わたし、ちゃんと生きてる!


私のバイク! クレージュタクト!

ピンクの流星、今日も街を駆ける

誰かのためじゃなく、私のために

このエンジンを鳴らしていくの


カワイイって、最強だよね

古くたって、最高なんだよ

クレージュタクト、これがわたしの

大事な、大事な、もうひとりの私!

『わたしのバイク』 

https://youtu.be/_QdwCSnvyqQ

※こちらで視聴可能です

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