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005「鬼の子ロリの子鬼ごっこ」

 巧切(こぎり)さんに目的地まで連れ来てもらい、カバンから出してもらいました。

 場所は普通の住宅街のようです。

 といっても私は全く知らない場所なので少しだけ、不安です。

 もちろん巧切さんを怪しんだり、疑ったりしているわけではないのです。

 ただ、もう完全に日が落ちてしまったこともあってなんだか妙な不気味さがあります。

 こんなときは会話をして気を紛らわしましょう。

「そういえば、巧切さんは一体どこに向かっているんでしょうか」

「ああ、言ってなかったっけ?俺の家だよ。そこにこういうのに詳しいやつがいるんだよ」

「家ということは親とかですか?」

 私はただ疑問に思ったことを何気なく聞きました。

「いや、違う。血もつながっていない。だが…とても頼りになる人だ」

「同居しているのですか?」

「ああ、俺はかなり前から親がいなくてな。それで、その人や他の愉快な奴らと暮らしてるよ」

「す、すみません。迂闊に質問してしまって」

 なんだかとても申し訳ないです。

「ほら、もう着いたぞ。ここが俺の家だ」

 そう言って巧切さんは立ち止まりました。

 巧切さんの家は想像していたよりも大きくて二階建てでした。

 巧切さんが鍵を使って扉を開けるとそれなりに広い玄関が待っていました。

 と、──そんな、広い玄関を眺めているうちにドタバタと足音が聞こえてきました。

 その足音は段々玄関の正面の扉からこちらへと近づいてきて───

「ヒ〜ビ〜キッ!」

 そのまますごい勢いで巧切さんの頭に飛びかかり顔を覆ってしまいました。

「やめろっ!離せ!」

 巧切さんが必死に引き剥がそうとしますが一切離れる気配がありません。

 やっとのことで巧切さんがそれ、いや、その子を引き剥がすとその子の顔がはっきりと見えました。

 薄紫のような淡い色の髪とそれ以上に濃い紫色をしたくりくりのお目々がついたとても可愛らしい幼女でした。

 えへへ、かわいい〜。

「おい(つくも)、そのよだれは何だ?」

「えっ、いえいえ、よだれなど垂らしていません!」

「お前まさか…」

「断じて違います!私にはそのような趣味はありません!」

 危うく、勘違いをされるところでした。

 というか、その子の一番目を引くところはそのようなカラフルでかわいい容姿ではなく、……

 なんと頭に()がついていることでした。

 などと、驚いているとその幼…少女が

「なんじゃ、こやつは?妾への供物か?」

 と私の体を掴んで引き延ばしてきました。

「イタタタタタタタタ!痛いです!」

「お、おい、紫閻(しらん)やめろ!」

 出会い頭に酷い仕打ち!

 巧切さんが呼びかけるとようやく離してくれました。

「元気だな君たちは」

 急に登場人物が増えすぎですっ!

 扉からもう一人の人、黒目黒髪のイケメンのお兄さんが出てきました。

「おっと。ヒビキくんのお客さんかい?珍しいね。でも見たところ何かの()()のようだね」

 そのお兄さんは私のことを覗き込んでそう言いました。

「ああ、その通りだ。見ての通り姿が蛇に変えられてるだろ」

「そうなんです。どうか助けてください」

 誠意を込めてお願いしました。

「そんなにお固くならなくても私は君の悩みを解決してあげるよ」

「本当ですか。ありがとうございます」

「さあさ、上がって。細かいことは寛ぎながらでも話そう」

 そう言って私を快く招き入れてくれました。



「先ずは自己紹介から。私は輝鬼(かがやき)灯灼(ともや)だ。人外が関係している事件の解決を専門としている霊能術師(れいのうじゅつし)だ」

 リビングにあるローテーブルの上にいる私にお兄さんは名乗りました。

「私は、白愛巴(いとは)です。見ての通り姿がヘビに変えられてしまい困っているんです。どうか、助けてください。お願いします」

「なるほど、あんまり遅くなると親御さんが心配するだろう。完全に取り払うのはまた今度の土日にでもするとして、今日はとりあえず応急処置だけするのが良さそうだね」

「ありがとうございます」

 このお兄さん相手の気持を察して早速本題に入ってくれた。顔だけではなく心までイケメンのようです。

「ところで、そちらの女の子は?」

 今丁度、ソファから巧切さんの頭の上へと飛び乗った少女を指して私は尋ねました。

「ああ、この子は訳あって一緒に暮らしているんだよ。まあ、見ての通り()だ」

「鬼…ですか」

 なるほど………

 とはならないんですよっ!

 なんですか。鬼!?どういうことですか?私が蛇になっていることと同じくらい不思議なんですが。

「白、急いでいるんだろ。そんなことは放っておいてとりあえずカガさんの言う応急処置でもしてもらえよ」

 巧切さん、輝鬼さんのことカガさんって呼ぶんだ。

「はい、そうですね。ではカガさん、よろしくお願いします」

「極自然な流れで私のことをそうやって呼ぶんだね。それじゃ、私は準備をするんだが…そうだな紫閻ちゃんとでも遊んでおいてくれ」

 じゃ、とだけ言い残して輝鬼さんはそのまま二階へと登っていってしまいました。

「おい、うぬよ」

 階段から目を逸らし、前方に目をやるとローテーブルの上から幼女が胸を張りながら私を見下ろしていました。

 大人ぶっているようでとてつもなくかわいいです。

「聞いておるのか、おい、返事をせんか」

「は、はい。聞いていますよ。何をして遊びましょうか」

「妾と鬼ごっこで勝負せよ」

 何かと思えばただの鬼ごっこじゃないですか。

 先ほどは千切られそうだったので驚きましたがどうやら普通の女の子のようです。

「はい、分かり───」

「おい待て白。そいつの力を舐めてるのか?鬼だぞ。俺でも単純な走力だったら負ける」

 巧切さんはそれにと続けて

「負けたらお前のことを従僕として扱おうとするぞ」

 何を言っているのでしょうか?この子がそんなことするわけないじゃないですか。だってこんなにかわいいんですよ。

「白やっぱりお前……」

「うむ、そうじゃ。妾はこの世で一番かわいいのじゃ」

 あれ、心の声が漏れてました?

 というか紫閻ちゃん、更にえっへんと胸を張っていてさっきよりもかわいいです。

 この子の従僕なら全然なってもいいです。というかなりたいです!

「とりあえず、鬼ごっこしましょうか」

「おい、何故そうなる」

「よいではないか。この娘は承認したのじゃし。うぬの仕事も減るであろう」

「よかねぇよ!こうなったら力ずくでも止めてやる!」

 そうして、この場は物凄い騒ぎになりました。

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