道中に散る、火花
西京に住む青年ユウは、はじめて出かけた森の中で、精霊「イロハモミジ」や「エノキ」たちと出会う。
数々の試練をくぐり抜けて、ユウは自身が伝説の「杜人」の末裔だという自覚を深めていく。
旅の疲れを癒すために訪れた昴宿「よこぐら」に突如、怪異が襲ってきた。
ユウたち一行は、たまたま来客をしていた「ヒノキ」の力を借りながら、敵の急襲を退けるも、「エノキ」は深手を負ってしまう。
ユウ、イロハモミジ、そしてエノキの3名は、エノキを助けるため闇医者「シキミ」を探すために、宿を後にした・・・。
ユウたち一行は、エノキと、謎の黒き少女を助けるために、闇医者シキミのもとへ歩みを進めていた。
「にしてもさぁ、アンタ。本当にこの道であってるわけ?」
「アンタ?アンタとは妾のことか?」
「そうよ!アンタ以外に誰がいるのよ!」
「ずいぶんとごあいさつじゃなぁぁぁぁあ?この赤髪が!このふとどきものめ!妾は、最高神ヒノキじゃぞ。妾のことが信じられないと申すのか?」
「はぁ、はいはい。サイコウシンサマー。もしアンタが全知全能のお力を持っているなら、エノキさんをすぐに治せたんじゃないですかー?」
「なにをーーーーー!?そんなに言うなら、決闘じゃあ!妾の力に恐れ慄くがいい!!」
「受けて立つわ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。ヒノキン・・・ヒノキ様とイロハ先生!」
「ちょっと待つのは、ユウ!あなたの方よ。なんで、あんななやつより後なのよ!私が先、それで、3つくらい空けて、ようやくアイツよ」
「わかった、わかったよ。イロハ先生。イロハ先生と・・・ヒノキ様だね」
「おいおい!ユウよ。そなたは、この赤髪不良女の肩を持つというのか」
「だぁぁぁあれぇぇぇが、赤髪不良女よ!!」
「やはり、妾の業火で根絶やしにしてくれようぞ」
「望むところよ!」
「ちょ、ちょっと、だから、ちょっと待ってよ!!こんなところでケンカなんかしている場合じゃないんだって!ぼくたちが先を急がないと、エノキさんたちが危ないんだって!」
「・・・・。それそもそうね」「・・・・。それもそうじゃな」
「ちょっと真似をしないでくれる?!」「真似をするなど、やはり不届なヤツじゃ」
おいおい。勘弁してくれよ。
これからの旅が思いやられる。
イロハ先生は、よっぽど昴宿「よこぐら」での温泉の一件がよっぽど気に食わなかったんだろうなぁ。
ヒノキ様にやけにつっかかる。
話題を変えなきゃ。
「あ、そうだ。ヒノキ様!ひとつうかがってもよいですか?」
「なんじゃ?」
「ヒノキ様は、エノキさんと古くからのお付き合いなんですか?」
「ああ、エノキか。そうじゃ、そうじゃ。ヤツとは古い仲じゃの」
「エノキさんと私だって、古い仲よ!!」
「あぁ、もう!イロハ先生は、ちょっと静かにしていてください。ヒノキ様、どこで知り合ったのですか?」
イロハ先生は、むすーっとしてる。
あぁ、怒らせちゃったかなぁ。
「エノキはな、この最高神である妾が唯一認めた終生のライバルじゃ」
思いがけない関係だ。エノキさんとヒノキ様が・・・。




