アステリオに抱かれて
そのあとに出てきた、料理もデザートも格別だった。
とくに驚いたのは、「流星小麦」のパスタだった。
なんでも、例の流星に小麦と呼ばれる食材の種がくっついていたそうで、
いつの間にか収穫ができるようになったんだとか。
普段、ぼくが作っているザックスパスタとは全く違う。
麺の中の甘さは、ザックスよりも控えめだったけれど、
奥ゆかしさを感じてソースとの相性が抜群だった。
あの、パスタはレストランでも絶対に出したい。
きっとアミは喜んで食べてくれると思う。
「お風呂もいただいたし、お食事もいただいたし、そろそろおやすみしましょっか。アステリオーーーー!」
イロハ先生・・・元気だなぁ。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうになりました」
「ごちそうだったっす!」
「はい、お粗末様でございました。では、ユウ様。明日は食事の支度の際はよろしくお願いいたします。また、お迎えにあがりますね」
「はい!ヨコグラ師匠、よろしくお願いします!」
「おやすみなさいませ」
そう言って、ヨコグラ伯爵はまた、光の粒となって姿を消していった。
さあて、ベッドはどこかな・・・・
ベッド。
あれ?ベッドが・・・ない!
「おいおいおい!ここは、宿だろ?布団やベッドはどこにあるんだ??」
「はっはっは、ユウ殿。なにを言ってるっすか?」
「いやいや、常識的に考えて、どこに眠るかっていうのは、疲れをとるのに大切なことだろ。布団もベッドもないところで眠れるわけがないじゃないか。ただでさえぼくは、枕が変わるだけで、寝つきが悪くなるんだから」
「あぁ、ユウ。あのね、森っていうのは、どこでも自分の好きなところで寝ていいものよ。本来そういうものじゃない?っていうか、その日その時、寝たい場所で寝る。それがどんなに贅沢なことか。ベッドとか布団とか、眠る場所を人間は決めているみたいだけど、そんなの窮屈じゃない。この地球のどこでも眠ることはできるのよ。星がきれいなときは、外で眠ったらいいわ。雨や風が強かったら、洞窟の中とかで眠ったらいいののよ」
「なんて野蛮なんだ。外で眠るだって?考えられないよ。まあ、じゃあ、100歩譲って、自分の好きな場所に眠るとしてさ、寒さはどうしのぐんだい?」
「ふふ。そんなの当たり前よ。その変にある草とか藁をクッション代わりにして眠るのよ。あと、獣と眠る夜なんていうのは、最近ではめっきり減ったけども、もふもふでいいのよ。今日なんかは、アステリオの羽毛の中で眠るんだから!」
「え、あの星ふくろうと眠る?」
「そうよ!動物と一緒に眠るって、あったかくて気持ちいいんだから!ねー、アステリオ」
ホーホー。
アステリオが笑った気がした。
「あーぁ」
イロハモミジが大きなあくびをした。
「じゃあ、私、先に眠るわね。おやすみ、2人とも」
イロハモミジは、左の翼の中へ入っていった。
「おやすみっす、イロハ殿!」
それにしても、この巨大ふくろう・・・どこで寝てもいいっていうのか?
「ユウ殿。自分は右の翼で眠るっす。ユウ殿もよかったらアステリオ殿の中で眠るといいっすよ」
「あぁ」
どこで眠ってもいいのなら、できればこのふくろうの中は避けたいが、こればっかりは。
星ふくろうに食べられる心配はないのか?どこか別の場所で休んだ方がいいのではないか。
けれど、今日初めて出会った星フクロウとともに眠るなんて・・・
「アステリオ・・・。背中にのぼってもいいのか?」
ぼくは、アステリオの背中で眠ることにした。
よじのぼってみると、あたたかくて、ふわふわしていて。
なるほど、こりゃあいい。
今日、大変な目にあったなぁ・・・。
まさか、ぼくが森へ出かけることになるなんて。
今日一日の出来事とき思えないほどの、たくさんの冒険・・・
「ふわあーぁ」
あくびが出る。そういえば家を出てからここまで、ほとんど休んでなかったからな。
もうなんだか、すぐに眠れそうな、ここち・・・よ・・・さ。
いつのまにか、吸い込まれるように眠ってしまった。




