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アメリカに出発!

「一番から八番。全管魚雷発射」

 潜水艦じんげいから、八発の18式魚雷が放たれる。ソ連崩壊時に起きた北方領土事件で重航空巡洋艦二隻を海の藻屑にした89式魚雷の後継で、自衛隊の持つ最大火力の魚雷だ。

「命中すれば沈まない船はない威力だが……」

 魚雷が怪獣の背で炸裂し、爆発とそれによって生じた真空が海中に小さな音を立てる。 

「魚雷、命中しました。超獣、転進こちらへ向かってきます」

「一番に音響魚雷を装填」

 超獣がじんげいにむけて海の底を歩く。

「魚雷発射」

 ソナーマンがヘッドホンを外した。音響魚雷が炸裂し、海中に大きな音が響く。超獣はその音に苦しみ、浮上した。


「こちらイ、二号。敵巨大生物を目視で確認。放射光線を誘発させる」

 オスプレイがダイエットしたような姿のヘリ、V-280-Jが二つの巨大なプロペラで巨大なワニの背を飛び、目にポインターを打つ。それを追うように対戦車ミサイルが発射され、ワニの顔に命中した。爆発と共に目を瞑ったワニは、それでも苦しい様子で頭を振る。

 ワニの背が青く光る。口を開きながら体を持ち上げてヘリの方を向こうと体を振り回す。

「放射光線の予兆を確認。総員、対ショック対閃光防御」

 V-280-Jの二つのプロペラが前を向き、高速で移動する。それを追おうとするワニの超獣の口の中が輝く。

 超獣の口から強烈な光線が放たれ、V-280-Jの付近を通過して空に消える。

「計器に故障あり。イ、二号。只今帰投する」

 V-280-Jが護衛艦あかぎに着艦する。そして、立ち上がった超獣の背後に護衛艦ながとが現れた。


「撃ち方始め」

 護衛艦ながとの主砲が超獣に向く。護衛艦ながとは第二次大戦を乗り越えた戦艦長門が近代化改修された姿。三基六門の41cm主砲は世界三位の威力を持つ。


「撃て!」

 41cm砲が火を吹き、徹甲弾を飛ばす。それは超獣の背に突き刺さった。

「敵予想心臓部を割り出せ! 装弾筒付翼安定徹甲弾装填」

 本来戦車砲で使用される特殊な弾丸が装弾筒付翼安定徹甲弾だ。冷戦時のソ連が最初に実用化に成功し、ほとんどの戦車がこれを撃つのに合った砲身を採用している。

 しかし、大砲の弾を入れ替えるには時間がかかる。

「間に合いません体当たりされます!」

 怪獣は立ったまま既に方向転換しており、長門の方へと歩んでいた。

「試作レールガンで時間を稼げ!」

 203mmレールガンが超獣の方へと向けられ、連射される。レールガンは超獣の右腕周りをハチの巣にして落とし、弾切れで沈黙した。

「だめです。実験用の僅かな弾丸も打ち切りました」

「装填まで二十秒。時間が足りません」

「問題はない。間に合ったようだ」


 一人の少女が巨大な魔法少女に変身して飛び上がり、超獣に踵落としをくらわせた。その上空を通ってF-14-Jがミサイルを超獣の腹に打ち込む。

「でりゃあ!」

 少女は超獣の尻尾を掴んで振り回し、船舶の逃げ出した東京湾の横須賀の方へ投げる。超獣は横須賀を背にし、艦砲射撃を無視して魔法少女のほうへ泳ぎ、立ち上がって放射光線を貯める。

 少女は海を走り、放射光線を放つ寸前の超獣の顎に全力のアッパーを決めた。アッパーのダメージと不発で終わった行き場のない放射光線を頭にくらい、怪獣は体が一瞬硬直してしまった。少女はバックステップで怪獣から離れる。

「撃て!」

 掛け声とともに、装填を終えた長門の主砲の一門が超獣の心臓を貫いた。



「会議に出席できないな」

 日本の生物魔法学者川崎(かわさき)(しょう)は日柚知と同じように会議に呼ばれ、待ちぼうけをくらう羽目になっていた。

 戦闘で飛んだ超獣の鱗が滑走路を襲い、大規模な安全確認が必要となっているからだ。

「空港内にいらっしゃる国際超獣会議に出席する方にお知らせです。滑走路に止まる赤い航空機の元へお集まりください」


 滑走路には、深紅の飛行機と魔法少女マジカルファルコンが待っていた。集まったのは若白髪に丸メガネの研究者川崎と少女日柚知、魔獣の蛇ベボルだ。

「魔獣と融合すれば、私の力で無理やり飛ばせる」

「なるほど、興味深いですね」

「君の後ろの巨大な魔法少女は興味ないのか?」

「勿論あります。ただ、今詳しく調べることは出来なさそうなもんで」

「そうかい。ほら、乗った乗った」

 輸送機の中は広く、元が110人乗りなので凄まじく余裕がある。すぐにフライトが始まった。


「川崎翔です。よろしくお願いします」

「瀬戸日柚知です。よろしくお願いします。こっちは契約した魔獣のベボルです」


「魔法少女としての名前は何と言うのでしょうか。瀬戸さん」

「えっとマジカルウトト。ウントリトリウムから取りました」

「成程、面白い由来ですね。元素番号133番とは。アメリカで会う彼らは興味がないかもしれませんが」

 機内のマイクがノイズと共に起動する。

「そうとは限らないな。もし本当に133に関係する魔法があれば量子力学的に素晴らしいことだ。それに、四体の超獣によって二人の魔法少女の命が失われた。正確には捕食され怪獣を解剖しても出てこなかったという話だが、マジカルヴェーダとマジカルブルタバの二人。世界から失われてはいけない逸材だったらしい。会ったことはないけど」

「どんな人だったの?」

「ブルタバは友達だが、ヴェーダは私も詳しくは知らない」

「ヴェーダという言葉には知識という意味があります。彼女は名の通り知識や記憶を操作することが可能でした、さらに知識を利用した疑似的な未来予知までして見せたようです。自身の持つ知識を他人に渡したり、他人の恐ろしい記憶を和らげたりすることで便利屋のような立場であったそうです。私も一度会ったことがありますが、優しくはあれど自身をヒトの中に捉えていないようでしたね」

「なるほど、ヴェーダというのはヒンドゥー教とバラモン教の宗教文書でもある。それを名乗れるだけの人徳のある人だったんだろうな。魔法少女でそこまでになった奴はそれこそフッドかブルタバくらいだろうな。ブルタバはまだ高校生だった……」

「まだ、彼女らが死亡したとは限りません。一切彼女らの要素が見つかっていませんから」

「ああ、そうだな。人類は超獣を理解できていない」

「そして、魔法少女や魔獣もまた……」



 輸送機がアメリカに着き、会議の場へと移動しようとするが日柚知だけは次の飛行機ではなく自動車に乗せられてどうも別の場所へと移動することになった。

「ネバダ州のエリア51って宇宙人がいるって噂のところだったっけ。英語苦手だけど通訳の人とかいるのかな……」

 エリア51に巨大な無菌室のような空間が出来ていた。日柚知はその中で魔法少女に変身し、髪の毛を一本抜いて研究者達に渡す。

「できるだけ長い時間魔法少女でいてくれ」

「はい」

 そうは言いつつも三分ほどで魔法少女からただの少女へと戻った。そして研究者達は満足そうに彼女を送り出した。


 数日後に日本に帰ってきた彼女は、アメリカであったことを年内で最悪だと言うはめになる。

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