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 神々しい人型の怪物となり果てたショファーをドミナはうっとりと眺めた。彼女の背後からブラックが近づき、ドミナを蹴り上げた。


 ブラックは飛びあがり、空中のドミナをさらに蹴り飛ばして地面に叩きつけた。ドミナの魔法少女としての体は崩れ去るが、彼女はコンクリートの破片を握ってブラックに投げつけた。

 ブラックはそれを軽く弾き、海の上のショファーの元へと向かった。


 ウトトが高速で降下し、爆音と共にショファーに掴みかかる。両者の一挙手一投足のたびに海原が波打つ。

 ショファーに対峙しているのはウトトだけではなく、海からも陸からも無数の火砲がショファーへと向いていた。

「私だけに攻撃が当たるはずない。お前も巻き添えにして撃たれるぞ」

 

 ショファーはウトトへそう囁いた。

「そうはさせない」

 ウトトは右手でショファーの首を掴み、海の中に押し倒した。そして、彼女の右のポンポンが熱と光を放ち、海水が泡立つ。

 

 ショファーはその中でしばらくもがき、動かなくなってから魔法少女としての体は崩れ去った。

「終わった。終わったんだ」

 

 気を失ったショファーはお湯の中に浮かび上がった。それは、どこにでもいるような普通の少女だった。



 ウトトは飛びあがり、岸に降り立って変身を解いた。ブラックはそれを見て、歩みを止める。ピースはフクロウから飛び降り、ウトトに抱き着いた。


「おかえり。日柚知ちゃん」

 そう言われた日柚知は、強く抱き返す。

「ただいま。遊久音」


 二人は、笑顔だった。ブラックもそれを見てほほ笑み、変身を解いて随分笑い合った。

 

 太陽が水平線へと沈み、海はやがて凪いでいった。海に浮かぶショファーを捉えるためのヘリの音が絶えず鳴り響いていた。



「この戦いで、東アジアの緊張は僅かに緩和されました。しかし……」

 日柚知はハワイに来ていた。功労者に与えられたのは、世界のどこへでも行けるほどの金と名誉だった。


 彼女は美しいサンゴ礁の海を眺め、ぼったくられたことに気づきもせずにココナツジュースを飲む。

 一人の老人が彼女に声をかけた。

「あんた、魔法少女だろ。テレビで見た」

「ありがとう。何か困りごと?」

 にこやかな彼女に、老人はスマホの画面を見せる。

「友達の乗ってる船がな、ここ一時間動いてないんだ。座礁しているかもしない。ちょっと見てきてくれないか?」


「いいよ」

 日柚知は笑顔でそう答え、泳いでいる友人にジェスチャーで魔法少女になることを伝える。

「安請け合いし過ぎだよ」

 遊久音はそう言って笑った。

 

 そして日柚知は潮風を浴びながら魔法少女ウトトに変身し、風を切って空へと飛び出した。


 彼女は、海原を眺めながら真っすぐに飛んだ。水平線を越えて暫らく飛んだところで、巨大な海に土砂の染みがあるのに気が付く。


 ウトトはすぐさまその赤い船体目掛けて急降下し、水面に立つ。海底火山の噴火によって押し上げられた地盤の上に立っていたのだ。


 彼女はその引っかかったタンカーを海底火山の外へと押し出した。

「マジカル・テープ!」

 両手から出た光の帯がタンカーのへこみをふさぎ、硬化した。


「動けますか~?」

 ウトトは船に向けてそう囁く。彼女にとっては囁きでも、拡声器で話しているような大音量だ。

「動かせる!」

 船員がそう叫び返した。ウトトは微笑み、空へ飛び出した。

 

「ありがと~」「助かったー!」

 船員達は口々にそう言う。


「暇にならないなあ」

 ウトトは青空の中で、そう呟いた。そして、笑顔で友達の元へと舞い戻って行った。

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