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特殊世界攻略

 最初の基地が、自走榴弾砲の射程内に入った。陸自の偵察ドローンが基地を空撮しようとして、すぐに荒野に身を隠した。

「対空砲があります」

「顔を出した一瞬の映像から対空砲の位置を予測、弾着観測の瞬間だけドローンを再び空中に出せ」

「了解」


「弾着まで、9、8、7…」

「ドローン上昇」

 砲弾が回転しながら基地のミサイル搭載トラックや、機関砲に迫る。

「弾着、今!」

 爆発は基地を包み込む。ミサイルや、軽装甲の機関砲は吹き飛んでしまった。


「煙が晴れる……。残存自走対空砲はない。敵戦車部隊だ。地下基地から出てきている。第三世代と推定。20、25、まだまだ出てくるぞ。再度の砲撃を要請する」


「撃て!」


 再び砲弾の雨が降り注ぎ、天板に砲弾が直撃した戦車は吹き飛び、すぐ近くに落下しただけでも車外の機関砲や、軽装甲の補助車両は吹っ飛んだ。


「このまま陣地転換しながら砲撃したのち、戦車、兵員輸送車、ヘリ部隊により敵基地を確保する。陸上戦力は日本陸軍、ヘリは日本機でなくていい、アパッチだ。緊急時に援護できる進路を通り、次の敵基地攻略へ向かう」



 10式戦車改の三小隊に、特殊作戦群48名を乗せた96式装輪装甲車が台湾陸軍の戦闘ヘリアパッチとともに基地へ迫る。


「敵のドローン攻撃はあるのか? 先制砲撃がよほど効いたらしいな」

 陸自部隊が基地へ到着し、特殊作戦群が基地内へと侵入した。


「基地内には人員がいない。無人兵器のみ」

 真っ黒い人型兵器トフェルの首関節を狙って破壊し、無力化しながら進む。


「敵機を破壊……。首が弱点で間違いないな。地下から不明な駆動音がしている。魔法主機に似た音だ。こちらから超獣を送り込んでいた装置かもしれない」


 

「なあメイキング。基地の設計要綱にいろいろ盛り込んだな私は」

「まあ、ターニング・ハンドサマが必要と言われちゃあね」

「魔法両用艦の設計の流用でいいと言ったな?」

「楽で良かったよ」

「パワーダウンするが、戦闘可能だろう?」

「……どうなっても知らないぞ。キリングのいる基地もな」


 地響きを上げながら、五つの基地が赤い空へ浮かび上がる。土中から現れる土にまみれたカバーが外れ、片舷四基の主砲が露出する。


 最初に動いたのはアパッチ隊だ。

「全機、ロケットを右にある砲にぶつけて高度を下げろ」

 ハイドラ70ロケットが主砲に浴びせられ、それらを破壊する。

「着地して我々も基地に侵入する。このまま飛んでいては他の敵基地からの砲撃を受けるぞ」


「敵基地、緩やかに上昇中。このままでは突入部隊の回収および人質解放は不可能」 


「メイキング。楽しい戦いの予感だ。行って来る」

「気を付けろよ」



「魔法少女達を出せるか?」「本人に訊いてみなければ……」

 日柚知はその会話を聞いていた。そして、装甲車から飛び出した。


「私、行きます!」


 魔法少女ウトトが、赤い空へ飛び立とうとする。彼女の手に、スパイダーとピース(6)が魔獣を伴い飛び乗った。彼女らを追うように、魔法少女ファルコン、プファイル、テンライが戦闘機に乗って飛び出す。


 最も奥にある、浮かびつつある収容所をウトトは目で捉えた。

「私があれを地面に留めるから、二人はその間に動力系を壊すか、捕まってる人を助けるかして!」

 スパイダーとピース(6)が甲板に着地し、中に侵入する。そして、ウトトは強く浮き上がる船を押して、地面に叩きつける。

「ベボル……二人を助けに行って」

「分かった」


 スパイダーとピース(6)そしてベボルの前に、見覚えのある魔法少女が立ちはだかった。魔法少女ドミナと、その魔獣である。


「結局、あんたらに頼っても無駄だった!」

 二人は口から出す言葉を思いつけなかった。


「そのくせ、最後の居場所まで!」

 ドミナの生む怒りの魔法の力が、空気をピリピリと割った。

「消えろーっ!」

 ドミナの叫び声と共に彼女の周りの地面や壁にひびが入り、ウトトの元へ二人の魔法少女と三匹の魔獣が吹っ飛ばされていった。

 

「クソ! キリングは一体どこで何をやってるんだ!」

 ドミナは叫び、ウトトの元へと飛び出した。



「空を飛んでいる……」

 数人分の房の前でキリングは困惑していた。少し迷い、彼は魔法少女と魔獣を捕えていた檻付近の部屋のブレーカーをまとめて落とした。

 捕まっていた魔法少女たちが戸を開け、艦内になだれ出た。


「この基地を止めりゃあいいな」

 基地がさらに浮き上がるのを感じたホッパーは、基地の主電源を目指して走り出した。

 


 ピース(6)がイリューシンの変身した弓を携え、甲板を蹴り破って艦の中へ侵入した。


「待て!」

 そう言い追おうとしたドミナが、足を糸に取られる。

「僕が相手だ。やるぞフンメル!」

 スパイダーに空母が装備される。

「相棒との合体……。こっちもだ。とっとと終わらせるぞ、ネロ」

 ドミナの背から骨だけの翼が無数に生え、両脚の間に牙が生える。


「さあ来い!」

 そう叫んでスパイダーは盛大に後ろへ飛んだ。

「逃げるのか!」

 ドミナはスパイダーを追おうとしたところで、高速接近する魔法の力に勘づく。

「戦闘機!」


 三機の戦闘機が、ドミナに向けて機銃掃射を行った。そのまま戦闘機は制空のために上空へ移動する。

「くっ」

 

「発艦完了」

 プラモデルの戦闘機がスパイダーから放たれた。ドミナがスパイダーをめがけて走り出す。


「馬鹿め」

 戦闘機がドミナの周りをぐるぐると周り、彼女に糸を巻き付けた。


「じゃあな!」

 動けなくなって地面に倒れたドミナをスパイダーが蹴り上げ、ムーンサルトで追撃して艦から突き落とした。


「特選群により第一基地は制圧。砲撃が効いて第二、第三、第四基地も高度を落としています。人質の救出は可能です」



 艦がゆっくりと高度を落としていく。ホッパーが主機を破壊したのだ。

「戦闘によって人質の捕縛システムが故障し、魔法少女が主機を破壊した。キリング・ホッパーは超獣実験基地の保護のため、そちらへ向かう」



「一番実験艦がやられたか。キリングは撤退……。まあウトトが向かっていたらしいしな」

 飛行中のターニング・ハンドが急降下する。


 次の瞬間、第一基地の直上に第二基地が現れた。

「なんだあれは! 総員脱出!」

 アパッチの搭乗員が真上で燃え落ちる巨大な基地に気が付き、まだ生き残れそうな足元の基地の中へ駆け込んだ。10式戦車がその後から基地の中へ侵入した。


 基地の指揮室内で、特撰群の隊員達が右往左往する。

「艦を下降させろ。操縦系統はあるか!」

「主機の操作盤らしきもの発見!」


 下降しつつある第一基地に、第二基地が衝突する。構造物がひしゃげ、甲板に残されたアパッチは無残な瓦礫の一部になる。


「魔法の衝突……?」

 ウトトがその様子を感知し、文字通り飛んでいった。


 基地の上に乗っかっているもう一つの基地、ウトトはそれを両手で押し始めた。

「うおお……!」


 彼女が力を込めると、ガリガリと不快感を与える金属音と共に上の基地が横へ滑り始めた。

「圧壊が止まったぞ!」


 身軽になった基地が、衝撃と共に制御された墜落を起こした。


 基地は砲撃によって次々に沈み、ホッパーの裏切りで墜落した実験艦の元へ装甲車の部隊が到着した。


「人類の部隊が捕虜を奪い返したようだな。両用艦の設計はまあゴミではないらしい。しかし面白い相手がいるじゃないか」


 ターニング・ハンドが、脱出したばかりの陸自、台湾陸軍の部隊の前に落下する。


「ハロー! 私はターニング・ハンド。以後お見知り置きを」


 ターニングが、匕首のような短剣を取り出す。


「着剣!」


 ターニングと、軍人たちの近接戦闘は始まらなかった。僅かな隙にウトトがターニングを掴んで全力で投げたのだ。



「突入した部隊の撤退を始めろ。今すぐにだ。哨戒機が大型の潜水艦を捉えた。帰れんかもしれん」


 戦車や装甲車が慌てるようにその場を離れ、通常世界へと突っ走る。


 スパイダーとウトトは、相棒の魔獣と共にそれとは逆の方向へ動き出した。ピース(6)もそれに釣られてイリューシンに飛び乗った。


 自分のよく知る者を感じたのだ。

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